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第一節 夢の価値・ネフダトラブル
Ep.22 不安ばかり
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桃助くんが今度は疑問を返していく。
「な、何でボクが……いや、他の人が犯人とかって言うのはないと思うけど……どうして、ボクが自白なんて……」
そんな彼に近寄って、静かに告げていく。古戸くんやナノカに届かない声で。
「自分の犯行を否定しながらも仲間を庇うんだね。そういう君のいいところが、自白してしまった理由なんだろうけど」
「いや、何で!? 何が!?」
ここからは皆に聞こえるよう、ナノカにも認められるようなハキハキした声で話していく。
「桃助くん。君は保健室で僕と話をした際、この部屋にあった値札のことを説明する時に『値札が落ちてた』って言葉を使ったよね」
「だから、それが、何が……情真っちに分かるんだよ……」
「情真っち……まぁ、そこはいっか。三葉さんが値札を持って言ってたんだよ。貼ってあったってね。値札を持っていたってことは確実にその貼っていた状態をはがしたから、だと思う。だよね? 三葉さん?」
三葉さんは力なくもこくりと頷いていた。信じていた人が犯人だったこと。何だか可哀そうな気もするが、これ以上の真実を知らないままだと誤解を生んでしまう。
推理を進めることこそ、幸せの近道だ。
「はがしたって……あっ!」
どうやら桃助くんも自分のミスに気が付いたらしい。そこをしっかり古戸くんやナノカにも分かるよう説明していく。
「そっ、桃助くんはきっと見ていなかったんだ。その値札を。自分の持っていた鞄から落ちていたことに僕の発言で気付いたんだ。で、それを僕が三葉さんがいちゃもんでも付けるために値札を用意したせいかもしれないと疑うかもと考えたんだよね、君は」
「あ……あ……」
何故そんなことまで把握しているのか。そんな疑問が彼の頭の中でぐるぐると回っているに違いない。
僕も自分でここまで推理が行くとは思っていなかった。予想外にも頭に降りて来た推測の続きを言葉にして紡いでいく。
「だから、その優しさで三葉さんが犯人にされないように、犯人である君が何故か落ちてたってことにしたんだ。本当は、落ちた時に何処かにくっついちゃったのを知らずにね。それか何か別の理由で知ってたの?」
「あ……いや、それは……その……?」
相当焦っている桃助くん。ナノカが少しイラっとしたのか、足で床を叩き始めるも文句は言わない。きっと、僕が全てを明かすと信じてくれているからだと思っている。そういうところも好きなんだ。
彼女の前で活躍するためにも張り切らなければ。
そこで古戸くんから異議が入る。
「い、意味が分かんないよ。待てよ。何で、そんなことをする必要があるの? 値札なんてばらまいて、何の意味があんの?」
ちょうど良い質問だ。こちらも今から解説しようと思っていた。
正直、この動機が解けたのは偶然の連続があったからだ。僕は全く名探偵に向いていない。合っているかどうかも分からないが、このドキドキも少々スパイスだと考えれば、悪くはない。
「さっき、そのまま物の値段を表すものを出していたって説明したよね? たぶん、クラスメイトのことをそれで知りたかったんだと思うよ」
「えっ、クラスメイト……この事件のターゲットは12HRだから、おれと桃助のクラスメイトに何があるってんだよ……? 何だよ……?」
ナノカが肩に手を置いて、無言で「頑張りなさいよ」との気持ちを伝えてくれている。
「そっ、言った通りのことだよ。クラスメイトがその値札を見て、たぶんおふざけで人に値段をつけ始めるかどうかを見ていたんだと思うよ」
「何だよ……それ?」
困惑するのも無理はない。桃助くんには桃助くんにしか理解できない事情が存在しているのだから。ただ、彼の心境についても察しは付いている。
「以前、古戸くんが言ったよね? 空想の物語なんてって言われて、三葉さんの素晴らしいイラストが否定されたって」
「言ったけどさ……それが……?」
三葉さんはムッとしていた。過去のことを詮索したみたいで悪いが、今からの話を分かりやすくするためには必要な発言だったのだ。お許し願いたい。
「ゲームだよ。桃助くんはゲーム実況者になるって夢を叶えるために頑張っていたはずだ。でも、ゲームってイラストよりも理解されにくいものだと思う。僕は優劣なんか付ける気は全くないけどさ。一般の人から見たら、ゲームよりもっといい趣味があるだろうとかって言われるだろう。それが不安だったんじゃないのかな?」
「で、それがクラスメイトに……?」
桃助くんは机に手を当てて、酷く憔悴していた。いたたまれない姿に一瞬、言葉を失いそうになるも声を出していく。
「たぶん。クラスメイトにもそれで馬鹿にされるんじゃないか。笑われてるんじゃないかって不安になったんだと思う」
三葉さんは別の方向を見て溜息だ。救われない雰囲気の部屋で、動いたのは古戸くん。彼が桃助くんの肩を揺らしていく。
「何で……何で、こんな回りくどいことしてんだよ……何で、何で……困っていたのを言わなかったんだよ! 仲間だろ? 仲間だったら、相談してくれよ! 何でこんな分かりにくいことして……!」
「うう……!」
「桃助! 答えてくれ! お願いだから! 答えてくれ!」
何故、彼が何も言葉を話さないのか。
三葉さんも「普通、やるか? 不安になったからってやってる人見たことねぇぞ……?」と疑問に思っている様子。
二つの謎を一気に解ける証拠を、僕はもう知っている。
これが刑事事件だったら、犯人を指し示す証拠となるだろう。しかし、今回役に立つのは物的証拠などではない。もう桃助くんの態度は犯行を認めているも同然だ。警察に突き出す訳でもないから、そんなものがあったとしても必要ない。
今から示すは桃助くんがこの状況でどうすれば、明るくなるかの方法だ。
僕はもう知っている。
持っているのは古戸くん。
「ねぇ、朝スマホを見せてもらったよね?」
「あ、ああ……露雪くん……? それに何かあるってのか? さっきも覗いたと思ったら、変な顔してたけど」
「うん。その通り! 間違いなく、あるんだよ! とんでもない証拠が、ね!」
「えっ? いきなり、おれが犯人って言うんじゃないだろうな……!?」
「いやいや、違うって……。とにかく、そこではたぶん、普通にあり得ないことがあると思うんだ。桃助くんが苦しんだきっかけが、この中で起きてるんだと思う!」
「な、何でボクが……いや、他の人が犯人とかって言うのはないと思うけど……どうして、ボクが自白なんて……」
そんな彼に近寄って、静かに告げていく。古戸くんやナノカに届かない声で。
「自分の犯行を否定しながらも仲間を庇うんだね。そういう君のいいところが、自白してしまった理由なんだろうけど」
「いや、何で!? 何が!?」
ここからは皆に聞こえるよう、ナノカにも認められるようなハキハキした声で話していく。
「桃助くん。君は保健室で僕と話をした際、この部屋にあった値札のことを説明する時に『値札が落ちてた』って言葉を使ったよね」
「だから、それが、何が……情真っちに分かるんだよ……」
「情真っち……まぁ、そこはいっか。三葉さんが値札を持って言ってたんだよ。貼ってあったってね。値札を持っていたってことは確実にその貼っていた状態をはがしたから、だと思う。だよね? 三葉さん?」
三葉さんは力なくもこくりと頷いていた。信じていた人が犯人だったこと。何だか可哀そうな気もするが、これ以上の真実を知らないままだと誤解を生んでしまう。
推理を進めることこそ、幸せの近道だ。
「はがしたって……あっ!」
どうやら桃助くんも自分のミスに気が付いたらしい。そこをしっかり古戸くんやナノカにも分かるよう説明していく。
「そっ、桃助くんはきっと見ていなかったんだ。その値札を。自分の持っていた鞄から落ちていたことに僕の発言で気付いたんだ。で、それを僕が三葉さんがいちゃもんでも付けるために値札を用意したせいかもしれないと疑うかもと考えたんだよね、君は」
「あ……あ……」
何故そんなことまで把握しているのか。そんな疑問が彼の頭の中でぐるぐると回っているに違いない。
僕も自分でここまで推理が行くとは思っていなかった。予想外にも頭に降りて来た推測の続きを言葉にして紡いでいく。
「だから、その優しさで三葉さんが犯人にされないように、犯人である君が何故か落ちてたってことにしたんだ。本当は、落ちた時に何処かにくっついちゃったのを知らずにね。それか何か別の理由で知ってたの?」
「あ……いや、それは……その……?」
相当焦っている桃助くん。ナノカが少しイラっとしたのか、足で床を叩き始めるも文句は言わない。きっと、僕が全てを明かすと信じてくれているからだと思っている。そういうところも好きなんだ。
彼女の前で活躍するためにも張り切らなければ。
そこで古戸くんから異議が入る。
「い、意味が分かんないよ。待てよ。何で、そんなことをする必要があるの? 値札なんてばらまいて、何の意味があんの?」
ちょうど良い質問だ。こちらも今から解説しようと思っていた。
正直、この動機が解けたのは偶然の連続があったからだ。僕は全く名探偵に向いていない。合っているかどうかも分からないが、このドキドキも少々スパイスだと考えれば、悪くはない。
「さっき、そのまま物の値段を表すものを出していたって説明したよね? たぶん、クラスメイトのことをそれで知りたかったんだと思うよ」
「えっ、クラスメイト……この事件のターゲットは12HRだから、おれと桃助のクラスメイトに何があるってんだよ……? 何だよ……?」
ナノカが肩に手を置いて、無言で「頑張りなさいよ」との気持ちを伝えてくれている。
「そっ、言った通りのことだよ。クラスメイトがその値札を見て、たぶんおふざけで人に値段をつけ始めるかどうかを見ていたんだと思うよ」
「何だよ……それ?」
困惑するのも無理はない。桃助くんには桃助くんにしか理解できない事情が存在しているのだから。ただ、彼の心境についても察しは付いている。
「以前、古戸くんが言ったよね? 空想の物語なんてって言われて、三葉さんの素晴らしいイラストが否定されたって」
「言ったけどさ……それが……?」
三葉さんはムッとしていた。過去のことを詮索したみたいで悪いが、今からの話を分かりやすくするためには必要な発言だったのだ。お許し願いたい。
「ゲームだよ。桃助くんはゲーム実況者になるって夢を叶えるために頑張っていたはずだ。でも、ゲームってイラストよりも理解されにくいものだと思う。僕は優劣なんか付ける気は全くないけどさ。一般の人から見たら、ゲームよりもっといい趣味があるだろうとかって言われるだろう。それが不安だったんじゃないのかな?」
「で、それがクラスメイトに……?」
桃助くんは机に手を当てて、酷く憔悴していた。いたたまれない姿に一瞬、言葉を失いそうになるも声を出していく。
「たぶん。クラスメイトにもそれで馬鹿にされるんじゃないか。笑われてるんじゃないかって不安になったんだと思う」
三葉さんは別の方向を見て溜息だ。救われない雰囲気の部屋で、動いたのは古戸くん。彼が桃助くんの肩を揺らしていく。
「何で……何で、こんな回りくどいことしてんだよ……何で、何で……困っていたのを言わなかったんだよ! 仲間だろ? 仲間だったら、相談してくれよ! 何でこんな分かりにくいことして……!」
「うう……!」
「桃助! 答えてくれ! お願いだから! 答えてくれ!」
何故、彼が何も言葉を話さないのか。
三葉さんも「普通、やるか? 不安になったからってやってる人見たことねぇぞ……?」と疑問に思っている様子。
二つの謎を一気に解ける証拠を、僕はもう知っている。
これが刑事事件だったら、犯人を指し示す証拠となるだろう。しかし、今回役に立つのは物的証拠などではない。もう桃助くんの態度は犯行を認めているも同然だ。警察に突き出す訳でもないから、そんなものがあったとしても必要ない。
今から示すは桃助くんがこの状況でどうすれば、明るくなるかの方法だ。
僕はもう知っている。
持っているのは古戸くん。
「ねぇ、朝スマホを見せてもらったよね?」
「あ、ああ……露雪くん……? それに何かあるってのか? さっきも覗いたと思ったら、変な顔してたけど」
「うん。その通り! 間違いなく、あるんだよ! とんでもない証拠が、ね!」
「えっ? いきなり、おれが犯人って言うんじゃないだろうな……!?」
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