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1.5章 竜王の聖女と逆里帰り出産又はハネムーン
なぜかおばあちゃんにそうだんしています。
しおりを挟む「うっ、ぐず」
みっともなく鼻をすすって、嗚咽を飲み込む。ルミナスはオレを引き留めなかった。その事実だけが横たわる。オレ、もう、いいのかな。なんて、思って。
「かえる…」
ゆっくり、軋む体を持ち上げてベッドから降りる。
「へ、ぁ゛?」
かくりと、足から力が抜ける。散々開かれた骨盤が、腰が、悲鳴を上げている。
「ぅっ、ぐぅ…」
思わずその場にへたり込む。なんで、ルミナスがここにいないんだ……オレの体をこんなにしたのに!惨めでちっさい脳味噌が前世の記憶からヤリ捨てという単語を持ち出してくる。体目的だったのか?王族と血縁関係を深く結びたかったのか?沢山の疑惑や疑念が次から次へと湧き上がる。
悲しさが溢れて、また泣きたくなる。おかしい、こんなに、なんで?
ラグに涙が吸われていくのを止めるため、必死に拭っていく。止まらない。
「おやおや、泣き虫じゃなぁ」
俯いていたら、いつのまにか部屋に人が入って来ていた。小さくて、腰が曲がっていて、ローブにベールをつけたその人は占い師のようなミステリアスな格好をしていた。杖をついて、ゆっくりとこちらに近づく様子をみると荒んだ心が少し落ち着くのはなんでなんだろう。
「何が、あったんじゃい。坊や。なにが、不満だったんじゃい?何か、悲しいことでもあったのかい?ばぁやに言うてごらん。」
床に座ったオレの横に、同じようによっこいせと座って話しかけてくる。誰のおばあちゃんなんだろうか。
「オレは……」
おばあちゃんの目がベール越しに優しく光ってオレは思いの丈を打ち明ける。優しい嗄れた声に、なんだかこの人になら喋っていいと感じたんだ。
勝手に連れてこられたのが嫌だった。ルミナスの両親やご家族にきちんと挨拶がしたかった。これから家族になるのだから、仲良くなっておきたかった。全てが口から、嗚咽を交えながら、つっかえながらも溢れる。
「おや、坊やは王族で、ルミナスは公爵、尊大な態度でも許されるとは思わなんだか?」
「オレは王族だけど、それより前に、ルミナスの結婚相手のジュリアスだ。ルミナスとずっと一緒にいるために、ご家族にそんな態度をとってたらダメだ」
「おや……」
「でも、ルミナスはそうは思わなかったみたいで……。」
ふうむ。と感心したようにおばあちゃんは鼻息を吐く。ベールが少し揺らいだ。
「それで、坊やはそれをルミナスに伝えたか?」
「……言ってない。」
「……百点満点中八十点じゃな。今までの子らで一番いじらしく、そして礼儀を重じて、そして素直じゃ。惜しむらくは、それを相手に伝えぬ臆病なところがあることじゃ。」
おばあちゃんはまだボロボロとなくオレの背中を優しく撫でる。
「オレ、別れようって…言っちゃった…。」
「それは、本心からか?」
オレは静かに首を振る。
「坊やは、ルミナスのことをどう思っておるんじゃ。」
「…嫌いじゃない。」
「おや、捻くれておるな。坊やは気付いてるはずじゃ。ヘイストス家の者と友好な関係を作りたいと思うほどに、ルミナスのことを想っていると。」
「ルミナスにその気がないなら、意味ないよ。こんな気持ち。」
「坊や……」
涙は止まった。口に出して、心に整理がついたあと、残ったのは行き場のない愛だった。いつの間に、こんなに好きになってたんだろう。
ルミナスとずっと一緒に居たい。みんなに祝福されてなんてのは難しいことだと思うけど、それでも、彼の家族の一員になりたい。そんな未来を望んでいた。彼を産んでくれた両親に、彼の隣に立つことを認めて欲しかった。
でも、ルミナスはそれを望んでくれていない。オレは彼の実家に無断で上がり込み、彼と婚前に関係を持ったことも伝えない、高飛車で傲慢な王族になってしまった。
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