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第二章 陰謀戦争許さぬ意向

sideアンジュ。

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「アンジュ、教えてくれてありがとう。」

 誠哉のことを全て包み隠さず話すと、ジュリーは押し黙ってしまった。その表情には疑いの念はない。逆に、何か、焦っているような…?

「ジュリアス、私まだ役に立てるわ。誠哉はギルドでのし上がる時、魔法しか使わなかった。素行も荒くてパーティを組めなかったから、わたしがタンクとアタッカーをしていたの。貴方と、貴方の卵を守らせてくれないかしら。」

 貴方の役に立ちたい。私の幸せを願ってくれる優しい貴方に報いたい。誠哉にジュリアスを傷つけさせてなるものか。私の爪はぐっと伸びて、興奮と苛立ちで尻尾が揺れる。

「アンジュ、私のことを心配してくれてありがとう、でも君はボロボロじゃないか。」

「そうです元男爵令嬢。あなたは足手纏いにしか……っ!ジュリアス、卵の様子が!」

「わわっ」

ーー

 ジュリアスが持っていた卵が光ると、中から出てきたのは、精霊サイズの神々しい何かだった。ツノが生え、ドラゴンのような皮膜が肩甲骨から伸び、滑らかな肌を守るように、群青色に光る黒い鱗が纏わっている。

 明らかに異形のものだ。しかし怖くはない。美しいその子の瞳は、ルミナス公爵とジュリアスの虹彩を混ぜたような色合いで、ああ、この二人の子ならこれほど魅力的を持っているだろうと納得した。

「この子、可愛い!」

 ジュリアスは大事そうにそっと抱き寄せ、四肢に欠損がないかくまなく見て回る。私は以前、獣の出産に立ち会ったときのことを思い出していた。ひっくり返し、目視し、舐め回して丁寧に確認していた母親猫に似ている。一通り確認を終えて、目を輝かしながらルミナスと会話して、あぁ、よかった。ジュリーは心底嬉しそうだ。

 幸せな家族を見ていると、その子と目があった。にぃっと、目を細め私に笑いかける。口を大きく開き、鋭い牙を見せつけて……。

「びびっ」「あっ痛!」

 ジュリーの指を噛み、滲んだ赤を舐めた。小さい喉が嚥下する音が聞こえた。

「ぴっびぅ。びー。ばーばば…。あーっあー…。あー。ぁ、ごほん。おかあさま、あたしをはなしてください。」

 その場にいた全員が目を見開く。ありえない。先ほどまで鳥の囀りのような音しか出さなかった赤子が、なぜ…?

「おかあさまのポケットに、ハンカチがあるはずです。あたしに、はじを、かかせないでください。」

「は、はい。どーぞ……」

 その子は私を横目で捉えながら、ジュリーに要求した。ジュリーは言われた通りにハンカチを渡す。その子はくるりとハンカチを体に巻き付け、ルミナス公爵の元へ飛んだ。

「おとうさま。あたし、がんばりましたの。竜王第二代の還り、回復の竜リリーナは、おかあさまの体から全ての毒を拐いましたわ。クスリのフラッシュバックも一切起こらぬようほどこしましたの。」

 薬のフラッシュバック……。ジュリアスの薬による幻覚作用と依存が完全に消えた、ということ?とてもありがたいけれど、この、リリーナという子は、一体何者なんだろう。

「リリーナ…。初代竜王に最も近い卵が、なぜこんなに早く孵化したんです。現竜王かつ、八代目豊穣のルディナはーー」

 難しい話に頭がふらと揺れる。ただでさえ、異形の子の孵化の立ち合いをしたのよ。頭がもう、受け取れきれないと悲鳴を上げている。私は話が終わるまで目を瞑ることにした。

「そんなの、ルディがお寝坊なだけですわ? それにおとうさまったら、あたしの魂の番を殺そうとするのですもの。#__我が半身の罪は母君の体から全て消えた。どうか許せ。__#」

 ガゥっという咆哮と共に、リリーナは何かをルミナスに伝えた。

「ええっと、ルミナス?うちの子、なんて言ってるの?」

「説明すると長くなるのですが……。」

 パタパタと羽音がこちらに近づいてくる。

「この子、リリーナはアンジュ・カトゥルヌス元男爵令嬢を娶ろうとしています。」

「は??」

 頬に柔らかなものを感じ目を見開く。ばっと頬を抑え、そちらを見ると可愛い精霊元恋人の子供が、頬を赤らめてうっとりと私を見つめていた。


ーーー

BLタグに謝れ
あと一個アンジュ書いたら誠哉の登場かけるはずです。
許してくれ…許してくれ…。




 
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