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オメガバース 無知 ギャグ 幼なじみ 執着
『男らしい〜』side先生
しおりを挟むもうすぐ下校時刻ともなって、日が傾いて校庭を照らす。あぁ、今日も何事もなく終わりそうだと、日報を書いて机を片付けていたその時、引き戸がガラガラと開いた。途端にムワリと香る、アルファにとっては嫌な臭い。ラット中の他アルファを威圧するアルファのフェロモンだ。子供のうちはラットやヒートが不定期に起こるからまぁよくあることだ。
保護者へ電話、抑制剤の投与、報告書…やることをピックアップしながら重い腰を上げ迎え入れる。入り口には息を切らした男の子が見知った男の子を背負っていた。
「先生!雄也がラットみたいで。倒れてて」
「ああ、雄也くんか。はい、よくがんばったね。」
最近アルファになって、恋愛相談でここに入り浸ってる生意気な男の子だ。
『片思いの相手に好きな人ができた。オメガと番いになるためにアルファのことを教わりにくる。前みたいに会える機会が増えて嬉しいけどどこの馬の骨とも知らぬオメガに取られたくない!相手をオメガにしたい』随分と甘くややこしい恋をこじらせていたものだから、法に触れるか触れないかギリギリの眉唾物の研究結果を教え、のらくらとかわしていたのを思い出す。最近はあんまり来なくなったっけ。よいしょっと両脇に腕を通して持ち上げ、ベッドへと移す。
「雄也くんを送ってくれてありがとうね。ラットが始まっちゃうと周りのオメガを興奮させちゃう……か、ら?」
ちょっと待てよ。この子は、アルファのラットを何故知ってるんだ?小学生のバース性教育はアルファとオメガにだけ行われる。性の多様化を売りにする女子校や、進学校ではさらにバース性教育を行っているようだから、お兄ちゃんやお姉ちゃんに教えてもらった可能性だって十分にある。あるけど……。彼はアルファ名簿オメガ名簿どちらにも載っていないにもかかわらず、雄也くんの匂いに混ざって、花の匂いがした。
ざっと血の気が引く。精液の経口摂取でバース性が転換するなんてあり得ない話だ。ただ、気休めや、応援の意味を込めて教えただけで…まさか小学生同士が本当に付き合ってないのにそんな爛れた関係になるなんて思ってなかったんだ。チンコ舐めただの、ザーメンカツアゲだのは雄也くんの妄想だとばかり思って聞き流してたんだ。まさか、マジでオメガに転移するほど、濃厚接触してた……?マジで?
俺は内心頭を抱えた。俺は前なにを雄也くんに言った?うなじを噛むって言ったな?ガタガタ震える指先で、襟足をかきあげて噛み跡がないか確認する。噛み跡は、無かったが、耳に歯形を見つけヒュッと息を飲んだ。もし、これがうなじなら……。
「ああ、よかった。いや、良くないか。君、もしかしてあきらくん?」
「えっ?あぁ、そうだけど…」
「雄也くんからよく聞いてるよ。君に離したいことがあるんだ。明日、一人でここにきてくれるかな?」
「えっ、アルファじゃないけど、いいんですか?」
「うん…大事な話だから、一人で来てね」
とりあえず校内での不純異バース性行為を辞めさせなければ……。そう思いつつアキラくんを帰すと、俺は雄也くんの保護者に電話をかけた。受話器の紐がコーヒーのマグを倒してオカルト雑誌が犠牲になる。あっと思った時には、ワンコールで雄也くんの保護者が出てしまい、机から床へ大浸水が起こった。
「お忙しいところ失礼します。柚月小学校アルファスクールカウンセラーの道永と申します。本日、雄也くんがですね。ラットを起こしてしまいまして…はい…」
元はと言えば、この胡散臭いオカルト雑誌のせいなのだ。じわじわとコーヒーを吸い茶色に変色していく表紙を恨みがましく見ていた。
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