オメガバース全集

ひやむつおぼろ

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オメガバース 無知 ギャグ 幼なじみ 執着

「男らしい〜」side雄也

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 アルファのカウンセリングルームの机に突っ伏して、僕はひたすら嘆いていた。

「僕の幼馴染みアキラがエッチすぎて僕は、僕は…」

「うわぁ、聞かなかったことにしていい?帰って欲しい。」

「先生。先日はどうもありがとうございます。おかげでアキラくんに付き合ってないのに手コキと食ザーしていただきました。」

「うわぁ、聞いてくれないスタンスをとるのね?帰ってください。」

「うっうっ、ザーメンカツアゲなんてどこで覚えてきたんだあの子。」

「君もどこでそんな言葉を覚えてきたんだい……。」

「それもこれも僕のアキラなのに他のオメガにうつつを抜かしてるから悪いんですよ。はーぁー。早くオメガになって、その恋諦めてくれないかなぁ。」

「アキラくんかわいそうだね。君なんかに粘着されて」

 先生は僕をおいだすのを諦めたのか、マグカップにココアとお湯を注ぐ。

「ほら、コレ。頼まれてた研究書類だよ。医学雑誌に載せようとしてた論文から撮ってきたんだよ。アルファのフェロモンの指数と一回の食事に含まれていただろう基準値はここね」

「ありがとうございます。」

 ココアと共に出されたのはベータのバース性転移の論文だった。英文だが、ざっとなら読める。

「思春期前のアルファのフェロモン指数はどれほどでしょうか」

 何回あれをやらなきゃいけないんだろう。片思いの人に人チンコいじられるのは天国と地獄だ。長く続いて欲しいような、早く終わって欲しいような、複雑な気持ちにさせる。

「わからないよ。

バース性にかかわらず子供に手を出すのは犯罪だから研究できないだし、

もし古いアングラな層域の実験記録があったとしても、今の食文化や気温いろいろと違うから。信用できない数値になるだろねぇ」

 まぁ、子供はホルモンも安定しないし…たくさんしたらいいんじゃないかな。なんてオカルト雑誌をめくりながら言う。日本特別バース性教育委員会さんコレが現場の真実です。どうでもよさそうにページをめくりコーヒーをすする先生をみてため息を吐く。

 信用できないのはこのバース性転移だって一緒だ。胡散臭い実験結果を流し見て僕もココアを啜る。

「結局、アキラくんをオメガにして、その先はどうするの?番になるの?」

「アキラがオメガになった時は、俺が嘘ついてたことがバレる時だから……多分フラれると思うんです。」

「今からでも辞めて成功法で告白したら?」

「親に受験が終わるまでアキラに告るなって言われてて……。今は、出世街道走って、アキラの子供ごと養えるようにならなきゃって思ってます」

 ううっアキラはきっと勉強だけが取り柄になっちゃったつまんない僕を選んでくれない。オメガになって東京に職探しして、ゆきずりの男と子供を作って地元に帰ってくるんだ。困ってるところを家業を継いだ僕がアキラとアキラの子供ごと養うんだ。タワーマンションのワンフロア買って住まわせるんだ。不自由させず、ずっと世話して、子供が一人立ちして部屋が広くなった日の夜。一緒のソファに座って談笑してる途中に二人の、今よりシワが濃く刻まれたガサガサの手が触れ合って…アキラが色っぽく笑うんだ。僕の知らない夜を纏った姿でゆっくり僕をソファーに押し倒して…」

「声に出てるよ。」

「僕を脱がすときの手際の良さとかキスの仕方とかに過去の男の匂いを感じて苦しむんですけど、アキラは自分も裸になると後ろを慣らしながら、二十何年か……だいぶご無沙汰だから、優しくしろよって言うんです。その言葉を聞いて、あぁ子育ての間は我慢しててくれてたんだって、僕の自己満足な家族ごっこは円満に機能してたんだって仄暗い充実感を得るんですね。」

「君、小説家か脚本家になれば?」

 続くと思った?ここで終わりですよ。だって僕童貞だもの。後ろを使って性交渉するってことはわかってても見たことないし……。ベッドシーンを想像しただけで鼻血出しそう。

「結局、アキラくんが好きになったオメガを諦めさせるためだけにアキラくんをオメガにするんだね?」

「……番いになれるなら番いになりたいです」

「ふーん、あっ見てみて!バース性事件…幼い頃から従兄弟のアルファに首を噛まれ続け、オメガに転換したベータの話が載ってるよ。『オメガになると同時に番い契約。哀れな事故。』だって」

「……」

「何度も言うけど、合意の上でやるんだよ。わかった?」
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