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疑惑

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 きっと、距離の撮り方が悪かったんだろう。そう思った。幼い頃からの付き合いだ。自分のものだと思っていたおもちゃを取り上げられたような、そんな独占欲の延長にオレがいただけだ。

 桃矢に比べてオレはそこらに居るような顔だし。桃矢だってたくさんの女の子たちに言い寄られている。引くて数多だろう。きっといずれ運命だと思う人に巡り合って、オレはお払い箱に会うんだ。いつ終わるかわからない恋人ごっこに怯えながら、オレたちはごっこ遊びを四年も続けていた。

 桃矢は今年の春大学一年生になった。男子校から、共学の大学に通うのだ。きっとオレに飽きて、他の可愛い女の子を連れて帰ってくる。もう、ごっこ遊びも終わりだ。

ーー

 酩酊感が鍵を持つ手をゆらゆらと揺らす。がちがちと噛み合いやしないそれに苛立ちながらふと、手をドアノブに伸ばす。すんなりと開いたドアの先には、仁王立ちした桃矢がいた。

「どうしてこんな帰りが遅かったの。」

「…飲み会だったんだよ。お前には関係ないだろ。」

「…なにそれ。2人で門限作ってたじゃん」

 門限は夜遅くまでデートと称して繁華街を彷徨い、ホテルにオレを連れ込もうとするからつくったものだった。毎回スイートルームに連れてこられて、優しく押し倒されるのは、恐ろしかったから。手触りのいいリネンを汚すのは気がひける。幼馴染だからって望月の御曹司と同じ金銭感覚でいるわけではない。それにオレは桃矢の遊び相手なんだから、スイートなんて本命に使えよと思う。

「門限、やめにしないか。もう桃矢も大学生になったんだ。サークルの飲み会とか、それこそカラオケでオールとかあるだろう?」

「僕は行かないよ。恋人が悲しむような真似しない、いい大人だ。輝昭とは違ってね」

 むっと眉を下げ恋人の夜遊びを指摘する桃矢。兄さんとは決して呼ばず、オレからジャケットと鞄を取り上げ、鍵を閉める。アルコールが回ってふわふわと思考が蕩けている。今日は、あぁ、そうか、桃矢が泊まって、オレを抱く日…だったか。

「まだ、恋人ごっこするつもりなのか、よ」

 思わず溢れた言葉にハッとして口を押さえた。しかし、発言を撤回することは赦されず、首が絞まる。桃矢がオレに送ったネクタイを、ぎゅっと、握りしめていた。

 ネクタイを思い切り下に引き落とされ、オレは体を支えきれずに玄関マットに顔を埋める。

「輝昭」

 立ち上がろうとすると、桃矢がオレの後頭部を鷲掴んで押さえ付ける。

「……まだわかってないの?悪い子だね。お仕置きしなきゃ、だめだね。」

 桃矢の目は座っていた。
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