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聖剣です2

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 馬車が止まり、大きな大聖堂にたどり着いた。
飴色に艶めく木製の扉をあけると、赤い絨毯と長椅子がたくさん。礼拝堂のような部屋をティアはツカツカと進んでいく。

「わぁ……綺麗なところだ。」

 ステンドグラスから差し込む光が天井に反射している。

「ユーキ様、こちらがシュテルンビルト教が信仰している神、女神ラウラです。」

 ティアは銅像を見上げて解説してくれた。ローブのフードを目ぶかに被り、アルカイックスマイルを浮かべている女性は、剣を胸に抱いている。

「女神ラウラが泣いたから、海ができたのです。涙を拭って睫毛が抜けて、睫毛が魚になりました。海に剣を突き立てて陸と草木を作ったラウラは、自らの腹を千切りこねて人や獣を作りました。……これが、シュテルンビルト教の神話です。」

「創生の神様だ」

 なんか、日本神話みたいな話だな。首飾りから新しい神様が生まれたりするんじゃないか?

「で、聖剣ってもしかして、この銅像の持ってる…」

「ええ、これでございます。」

「えぇー…」

 銅像の女神様は、ぎっちりと胸に剣を抱き抱えているのだ。これ、どう取るつもりなんだ?

「勇者様であれば、必ず取ることができるはずです。」

 ティアは陶酔し切った目で俺を見てくる。嘘だろ、こんなのどうやってとれっていうんだよ!俺は銅をへし折れるようなムキムキマッチョじゃないんだぞ!?

「ううん、どうしよう。どうすれば…」

 剣の鞘をそっとなぞる。つたの飾り彫
と宝石がいくつか埋め込まれていてとても綺麗だ。女神ラウラの大事な聖剣。自分のお腹を引きちぎって生命を生み出すとんでもない神様だけれど、大事な宝物を胸に抱いている様は普通の女の子と同じだ。

 「綺麗で大切なこの剣を、あなたの生んだ子供たちのためにつかわせてくれませんか。」

 そう祈ると銅像はにこりとはにかみ手を緩めた。

「あっ、わわっ」

 慌てて掴んで引っぱると、スルスルとラウラの銅の腕の中を剣が滑り抜けていく。

「あっ、えっ?取れちゃった。」

「……さすがです勇者様」

 ティアが大袈裟に拍手をした。

ーーー

「本当に、あの塔に行くの?」

「おや、行きたくないのですか?」

「だって……」

 いったら拷問にかけたり、この聖剣のさびにしたり、するつもりなんだろ!?

 もしかしたら魔王軍関係者じゃないかもしれない魔族を、捕虜以下の扱いで縛り付けている可能性があるのに……。

 これ以上悪いこと、しちゃダメだ!

 魔王を倒した後魔族全員を殺すわけにもいかないんだ。不可侵条約を制定するためにも、捕虜は人間と同じ扱いをしなきゃならない。魔族たちとの外交に根因を残すような行動は避けなきゃ。

 というか、完全悪な人以外殺したり痛めつけたくないんだよなぁ俺が。

「勝手に縛り上げてたんだろ?恨まれて襲い掛かられでもしたら大変だ。だから、先に調べたいんだよ。」

 魔族が何食べるか。なんか、イギリスで捕虜になったイタリア兵のご飯がマズいとか書いてあったし……。ご飯で釣ったらどうにかならないかなぁって思ってさと言おうとしたら、ティアがいきなり手鼓を打った。

「あぁ、召喚勇者としての力を調べていませんでしたね。なるほど、怒り狂った獣のこどき魔族畜生めを。返り討ちにしてくれようということですね?!なんて勇ましいんでしょう!さすが私のユーキ様です。」

 うーん、違うそうじゃない…。



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