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俺が魔王を倒します

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「魔王を倒すのに、俺の協力がいるって…そんなこと言われたって、俺普通の高校生ですよ? 」

 そう、死因が特殊なだけの高校生だ。体育も、持久走の順位は真ん中の方、球技大会のメンバーには選ばれないタイプの可もなく不可もない高校生だ。

 こんな俺が魔王討伐に参加したら、きっと足手纏いになってしまう。

「ユーキ、今のあなたは特別です。けして、普通ではありません。今の体は、ただの器。エーテルを必要としません。魔族に近いても瘴気にやられることはない。」

 ティアさんの細い指がカップをなぞる。長い銀髪が前にながれ、顔色を伺うことは叶わない。

 それに、とティアさんは言葉を続けた。

「召喚された者には、加護ギフトがあるのです。その死因に寄与する精霊からの祝福。膨大な魔力。スキルなど……。勇者にしか使えない聖剣も、シュテルンビルト教会が所持しています。」

 チート能力チート武器が揃ってるってことか。そして、チートで武装した勇者は死なない体。これで行かなきゃ男が廃るのでは。

 熟考していると、ティアさんは再度頭を下げた。

「勝手なことを言っていることは分かっています……。今ならまだ、あなたを召喚したことを知っている人間も少ない。ユーキがもし行きたくないのなら、」

「いや、いやいや。待ってくださいティアさん!別に行きたくないとか言ってないでしょう」

 頭を上げてくださいと頼み込んだ。このイケメン早とちりだなぁ……。

「正直、俺が本当に役に立てるかどうか。不安はあります。俺のいた世界では魔法もないし、聖剣も……剣術も習ってなかった。」

 けど、やるかやらないかは別だ。

「適役が俺しかいないのなら、俺がやる。着手段階で迷ってたら、何も始まらない。俺に、魔王を倒せる可能性が少しでもあるなら、やらなきゃ。できる人が、やらなきゃ。」

 もしかしたら、俺が魔王を奇跡的に倒せてしまうかもしれない。失敗したって死なないのだから何回だって挑戦したらいい。

 ティアさんが顔を上げた。期待と不安と憐憫のないまぜになった視線を俺に向ける。

「ティアさん、俺が魔王を倒します。」

「ユーキ……ありがとうございます。どうか我々を救いください。」

 あなたに神のご加護があります様に。

 俺の手の甲に額をすり寄せティアさんは祈ってくれた。

ーーー

「ティアさん、倒すと決めたはいいけど、俺まだ疑問があります。」

「勇者様、私はただの神の僕、そのような言葉遣いはおやめください。」

 なんとまぁ、ティアさんからタメで喋ろうやってお誘いがきた。それじゃあお言葉に甘えて、と口を開こうとすると、ティアさんは続け様にこう言った。

「ユーキ様は正式な勇者となられたお方です。勇者はシュテルンビルト教における神の使い。私のことは、従者……いえ、奴隷のように扱いください」

 違った!服従宣言だった!なんでだよ。ティアさん俺よりだいぶ年上のはずだろう。27ぐらいだろう!?

「さすがに十も離れた人を、こき使うのはちょっと……。」

「そうですか……。勇者様にお使えするのが、私の天命だったのですが……。仕方がありませんね」

 ティアさんはごそごそとローブの中を弄ると

 小さなナイフを取り出した。

「なっなん、ないふなんでナイフ!」

「神の命に背いた私に、もう生きている価値はございません」

「ティアさ、ティア!早まるな!ナイフを置け!」

「では、勇者様。あなたに一生使えることを許してくださいますか」

 鈍色に光るナイフは虎視眈々とティアの喉元頸動脈を狙う。
 頭の中では、流血だの、死に至る出血量の計算式だの、止血が難しい頸動脈の医療事故だの、たくさんの知識がポンポン浮かんでいく。
 ナイフの先が、ティアの、皮膚に当たって……。ぷくりと血が浮かんで、ひぃっ見てられない!目を瞑って叫ぶ。

「ゆるす!ゆるすから自決だけはやめて!」

「ありがとうございます。ユーキ」

 かちゃと音がして目を開けると、ティアは凶器を鞘にしまっていた。

「法王庁シュテルンビルト三代目法王、リスティリア・ルイ・シュテルンビルト改め、ユーキの従順なる下僕。リスティリア。今から私は、生涯あなたに使え、魔王討伐に尽力を尽くします。どうぞ、よろしくお願いします」






 
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