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メインストーリー
クソガキたち
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気が付くと朝日が昇っていた。清々しい朝だ。山鳥たちがちゅんちゅんと囀り、暖かな陽の光が窓から入り込む。人間界の朝は好きだな。魔界のようにジメジメしてなくて。
ゴワゴワしたシーツを蹴飛ばし、部屋を確認する。窓の外は木の葉が茂っている。下を見ると子供達が元気に駆け回っていた。教会の2階。てことは、おんぶさせて階段を登らせちまったのか。なんか悪いことしたな…。
ツノと尻尾を隠し、人間の服に着替えてから一階に降りる。
「おはよう、よく眠れたか?」
イヴァンがカソックの上にエプロンをつけてバケットを切っていた。
「ん、ああイヴァン、悪かったな。お前がベッドまで運んでくれたんだろ。」
「子供たちを運ぶのは慣れている。気にしないでいい。それより、あなたの食事はどうする」
「いや、気にしなくてい」
「悪魔め!かくごー!」
「いってぇ!何しやがる!」
どすんっと言う音と共に腰に衝撃がかかる。見ればクソガキ4人がオレにタックルしていた。女が三人にハナタレのガキが一人。
「ねーねーお兄さん、誰?村の人じゃないよね。ねー遊ぼー!ご飯まだだもん。今ね悪魔とエクソシストごっこしてるんだけどね。みんなエクソシストしたいから、お兄さんが悪魔!」
「はぁ?!なんでオレがそんなこと…。」
赤毛を三つ編みにした女のガキが捲し立ててくる。どうにかしてくれよと助けを求めてイヴァンの方を見るが、イヴァンは硬いバケットとまだ格闘していた。
「…ベティ。クロエ。ニック。ウィル。キッチンに入ってはダメ。」
「イヴァンがナイフ捌きがおぼつかないからよね。キッチンから何回ナイフを落とす音が聞こえるか…また賭けをする?」
このガキの集団の中では最年長だろう茶髪の女が、木箱を取り出し他のガキに話しかける。
「十回以上にどんぐり三つ!昨日の負けを取り返してやるぜ!ベティは?」
十回以上。じゅっかい?!!そんなにイヴァンは不器用なんだろうか、プルプルとパン切りナイフが震え、ぱらぱらとパンクズが溢れていた。
「はちかいおとす!よん、びすけっと」
ベティと呼ばれた最年少の女のガキがポケットからビスケットを取り出した。わからん、この賭け事の、通貨の基準が一切わからん。
「あら、ニック。ベティの方が強気よ。どんぐりで本当に負けを返せるのかしら。」
「ニックはほんとそう言うとこ臆病よね、おねえちゃん心配だわ!私は今日こそ大穴狙うの!0回、ニックの残りのどんぐりオールベッド!」
「おいふざけんなウィル!」
ウィルと呼ばれた赤毛の三つ編みが、臆病と弄られたニックのポケットからどんぐりを引っ張り出す。イヴァンはニックの大声を聞いて肩を揺らし、ナイフを一度取り落とした。ざらざらと賭けられたニックの五つのどんぐりが無惨にも他の人のものに変わる。
「ねぇ、おにいさんは?」
ベティがこちらを向いて聞いてくる。
「あー、13回。キャラメルとキャンディでどうだ?外れたら全員に山分けって事でよ」
「「「キャラメル!」」」
ガキ全員が、セロハンに包まれたキャラメルとキャンディを宝物を見るような目で見つめた。
「…イヴァン、13回も落とさないわよね?」
箱持ちの年長者だけが、イヴァンを心配そうに眺める。やっと一枚スライスが完成したが……成功とは言い難かった。
ーー
ナイフが何度も飛んだりするようなキッチンにガキが四人もいるのは、流石に危ねえので…オレはガキを連れて外へ出た。
ベティは離れたとこででんぐり返しを繰り返し、クロエはキッチンの近くで、ナイフの音を聞いていた。ニックとウィルはオレと鬼ごっこをして遊んでいた。
「ねぇ、お兄さん!お兄さんって結局どこの人なの?」
「…あー?ウィルだっけ?その質問の意図が読めねぇんだけど…どういう意味?」
「村にあなたみたいな人はいなかった!悪魔の子供たちと悪魔と仲良しな女を集めた教会に来る村人はいないの!でもね、悪魔の子を引き取ってどこかに売り飛ばそうとする教会の人は、よくここにくるのよー!」
「……そうなんだな。」
「ん、やっぱり兄さんは教会の人じゃないんだな。変なやつだぜ」
「目の前で賭けをしても神様がダメって言ってるのよ!って怒らないし、教会がやってる悪事に対しては怒るんだ!やっさしーねぇ!」
「っ、うっせぇな!ガキのくせになに一丁前に大人の顔色伺ってんだよ。」
「そうでもしなきゃ生きてけなかったんだもん」
さっきまでニコニコと笑ってたウィルから表情が消える。ウィルの目は虚を見つめ、恐怖や悲しみに震え始める。
「ウィル。大丈夫、大丈夫だぜ。」
ニックが震えるウィルを抱きしめ、頭を撫でる。ウィルの焦点が段々とあっていき、震えが止まる。ウィルは目を二、三度擦って、それからまた先程のような明朗快活な笑顔をみせた。
「ニック!なに?何話してたっけ?」
「この兄さんがどこの誰かって話だろ?」
「そうだよ、そうだよ!思い出した!お兄さん名前も教えてくんないんだもん!ねぇ、この教会に何しにきたの?」
「んー…あんま話せない話なんだよなぁ。」
イヴァンとセックスしにきましたなんて、話せるわけなくないか?ガキにはちと、刺激が強いって言うか…。
「えー何それ!大人の事情ってやつ?ずるいよずるい!」
「ウィルやイヴァン…この教会にいる奴らが傷つくようなこと企んでないよな。」
「……わかんねぇな。イヴァンが黙っててくれたら教会も何も言わねぇはずだけど…。」
「ねーぇー本当に言えないの?ほんとのほんとに?」
ウィルがしつこく聞いてくる。う、子供に伝えれるように、マイルドに…。
ゴワゴワしたシーツを蹴飛ばし、部屋を確認する。窓の外は木の葉が茂っている。下を見ると子供達が元気に駆け回っていた。教会の2階。てことは、おんぶさせて階段を登らせちまったのか。なんか悪いことしたな…。
ツノと尻尾を隠し、人間の服に着替えてから一階に降りる。
「おはよう、よく眠れたか?」
イヴァンがカソックの上にエプロンをつけてバケットを切っていた。
「ん、ああイヴァン、悪かったな。お前がベッドまで運んでくれたんだろ。」
「子供たちを運ぶのは慣れている。気にしないでいい。それより、あなたの食事はどうする」
「いや、気にしなくてい」
「悪魔め!かくごー!」
「いってぇ!何しやがる!」
どすんっと言う音と共に腰に衝撃がかかる。見ればクソガキ4人がオレにタックルしていた。女が三人にハナタレのガキが一人。
「ねーねーお兄さん、誰?村の人じゃないよね。ねー遊ぼー!ご飯まだだもん。今ね悪魔とエクソシストごっこしてるんだけどね。みんなエクソシストしたいから、お兄さんが悪魔!」
「はぁ?!なんでオレがそんなこと…。」
赤毛を三つ編みにした女のガキが捲し立ててくる。どうにかしてくれよと助けを求めてイヴァンの方を見るが、イヴァンは硬いバケットとまだ格闘していた。
「…ベティ。クロエ。ニック。ウィル。キッチンに入ってはダメ。」
「イヴァンがナイフ捌きがおぼつかないからよね。キッチンから何回ナイフを落とす音が聞こえるか…また賭けをする?」
このガキの集団の中では最年長だろう茶髪の女が、木箱を取り出し他のガキに話しかける。
「十回以上にどんぐり三つ!昨日の負けを取り返してやるぜ!ベティは?」
十回以上。じゅっかい?!!そんなにイヴァンは不器用なんだろうか、プルプルとパン切りナイフが震え、ぱらぱらとパンクズが溢れていた。
「はちかいおとす!よん、びすけっと」
ベティと呼ばれた最年少の女のガキがポケットからビスケットを取り出した。わからん、この賭け事の、通貨の基準が一切わからん。
「あら、ニック。ベティの方が強気よ。どんぐりで本当に負けを返せるのかしら。」
「ニックはほんとそう言うとこ臆病よね、おねえちゃん心配だわ!私は今日こそ大穴狙うの!0回、ニックの残りのどんぐりオールベッド!」
「おいふざけんなウィル!」
ウィルと呼ばれた赤毛の三つ編みが、臆病と弄られたニックのポケットからどんぐりを引っ張り出す。イヴァンはニックの大声を聞いて肩を揺らし、ナイフを一度取り落とした。ざらざらと賭けられたニックの五つのどんぐりが無惨にも他の人のものに変わる。
「ねぇ、おにいさんは?」
ベティがこちらを向いて聞いてくる。
「あー、13回。キャラメルとキャンディでどうだ?外れたら全員に山分けって事でよ」
「「「キャラメル!」」」
ガキ全員が、セロハンに包まれたキャラメルとキャンディを宝物を見るような目で見つめた。
「…イヴァン、13回も落とさないわよね?」
箱持ちの年長者だけが、イヴァンを心配そうに眺める。やっと一枚スライスが完成したが……成功とは言い難かった。
ーー
ナイフが何度も飛んだりするようなキッチンにガキが四人もいるのは、流石に危ねえので…オレはガキを連れて外へ出た。
ベティは離れたとこででんぐり返しを繰り返し、クロエはキッチンの近くで、ナイフの音を聞いていた。ニックとウィルはオレと鬼ごっこをして遊んでいた。
「ねぇ、お兄さん!お兄さんって結局どこの人なの?」
「…あー?ウィルだっけ?その質問の意図が読めねぇんだけど…どういう意味?」
「村にあなたみたいな人はいなかった!悪魔の子供たちと悪魔と仲良しな女を集めた教会に来る村人はいないの!でもね、悪魔の子を引き取ってどこかに売り飛ばそうとする教会の人は、よくここにくるのよー!」
「……そうなんだな。」
「ん、やっぱり兄さんは教会の人じゃないんだな。変なやつだぜ」
「目の前で賭けをしても神様がダメって言ってるのよ!って怒らないし、教会がやってる悪事に対しては怒るんだ!やっさしーねぇ!」
「っ、うっせぇな!ガキのくせになに一丁前に大人の顔色伺ってんだよ。」
「そうでもしなきゃ生きてけなかったんだもん」
さっきまでニコニコと笑ってたウィルから表情が消える。ウィルの目は虚を見つめ、恐怖や悲しみに震え始める。
「ウィル。大丈夫、大丈夫だぜ。」
ニックが震えるウィルを抱きしめ、頭を撫でる。ウィルの焦点が段々とあっていき、震えが止まる。ウィルは目を二、三度擦って、それからまた先程のような明朗快活な笑顔をみせた。
「ニック!なに?何話してたっけ?」
「この兄さんがどこの誰かって話だろ?」
「そうだよ、そうだよ!思い出した!お兄さん名前も教えてくんないんだもん!ねぇ、この教会に何しにきたの?」
「んー…あんま話せない話なんだよなぁ。」
イヴァンとセックスしにきましたなんて、話せるわけなくないか?ガキにはちと、刺激が強いって言うか…。
「えー何それ!大人の事情ってやつ?ずるいよずるい!」
「ウィルやイヴァン…この教会にいる奴らが傷つくようなこと企んでないよな。」
「……わかんねぇな。イヴァンが黙っててくれたら教会も何も言わねぇはずだけど…。」
「ねーぇー本当に言えないの?ほんとのほんとに?」
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