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漣華義兄弟、襲われる。
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ひとしきり義兄たちとの交流を深めた後、漣華たちはそろそろ、という事で母屋に向かう。
実際には母屋の広間ではなく、義祖父母に会いに行くのだ。
「義祖父さまたち、お元気ですか?」
漣華が少し見上げるくらいには背の高い義兄二人はそれを聞いて若干遠い目をする。
「……うん。元気だぞ」
「問題ないな」
「そうですか!久しぶりにお目に掛かるので楽しみです!」
漣華は謝家に於いては末っ子である。
郊外にある実家に戻れば妹も居るが、妹ももう婚約も決まって大人びてきているし、甘やかしてやりづらくなった気がするのは少し寂しかった。
それを埋めるかのように漣華は謝家に於いては家族に甘えるのだ。
それも、ある種の代替行動なのだろう。
謝家の皆はそれをにこにことしながら受け入れ、誰ひとりとして拒絶する者は居ない。
それを薄々わかっていながらも甘えられる環境に、漣華は感謝もしている。
下人たちの担ぐ輿を断り、三人で庭に伸びる回廊をのんびりと歩く。
これも何か月ぶりだろうか。
いつもは職場と瑯炎の邸宅との往復で実家にも謝家にも寄る時間が取れない。
それはおたがいに理解もしてはいるが、なんとなく後ろめたくもある。
回廊を抜けて、少しひらけた場所が見えた時だった。
ぷん、と強い香の匂いが鼻を襲う。
漣華は余り匂いの強いものが好きではない。
だから、貴族としては珍しく衣類に香を焚き染めたりという事はほとんどしない。
代わりに、腰から下げる玉璧と共にさりげなく小さな香袋を持つくらいの話である。
思わず顔をしかめ、袖で鼻をかばう。
義兄たちも香を上手く使うが、ここまで下品に匂いを振りまくような使い方はしない。
良い香りもきつければ臭いだけなのだ。
そこは公主として宮中で育った稜佳がきっちりと躾けてもいた。
「うっく……!」
梨華が片手で鼻をかばい、袖で辺りの空気を払う。
臭いの塊となった空気がそこに壁として辺りを包んでいるような違和感すらある。
鼻からもだが、口を開けて呼吸してもそこにも何らかの臭いの粒子が貼り付いたようで違和感が取れない。
咽喉の奥を閉めても、目から香の香りが襲うようで、目にも刺激がある気がする。
新鮮な空気は入ってこないし、既に体内に入り込んだ臭いはできれば排出したい。
そして、何よりも目がツラい。
漣華は思いっきり咳き込んだ。
ひうひう、と気管と肺が悲鳴を上げ、目をしばたたかせ、涙の分泌を促す。
身体をくの字に曲げて咳き込むと、義兄が同じように咳き込みながら使用人を呼ばった。
「誰か!誰かある!」
三人が強い香の臭いに苦悶していると、小枝をべきべきと折ってその巨体をゆっさゆっさと揺らしながら、庭木の間を無理矢理すり抜けてきた男が居た。
「これはこれは、どうなされました」
にやにやといやらしい笑みを浮かべつつ、綺麗に撫でつけて形を整えた髭をしごく。
香の臭いで鼻がおかしくなりつつあるが、口の中に貼り付く臭いの粒子はこの男から飛んでくるようで、漣華は一層呼吸が苦しくなった。
「漣華!」
ふたりの義兄は漣華を抱えるように引きずりつつ、回廊に入り込んできた目の前の巨漢から距離を取ろうとした。
「誰だ!?」
桐華が誰何すると、ふふんとその短い脚を開いて胸を張る。
「誰とはまた。お久しぶりではないですかな、謝家のご兄弟がた」
ねっとりとした視線で三人をそれぞれに値踏みするかのように見ていく。
梨華はそれに怖気が立った。
「ふむ。双子と、そこに居るのは末の弟とか言う辺境の賤民ですかな」
男は名乗りもせずに既に夏の暑さも退いた季節であると言うのに、ばっさばっさと大きく扇で顔を仰ぐ。
その肥満体は秋であっても暖房すら要らぬほどに熱を発しでもするのか顔がやや赤い。
ちょこちょこと身長のわりに短い脚で歩みより、義兄たちに支えられて息も絶え絶えになりつつある漣華の顔を覗き込んだ。
ほう、と呟きながら顔に手を伸ばそうとして、漣華はぱしん、と震える手でそれを払った。
「生きの良い事だな。この美しさであれば、妹の婿でなくとも私の妾にしてやっても良いぞ」
撥ね退けられた手をさすりつつ、漣華に息が届くまでに顔を近づけ、じっとりねっとりと検分を始めた。
「なんなら、今の妻と離縁して我が妻に据えてやってもいい。どうだ?」
どうだ、と聞かれてもお断りだ。
漣華はそう答えたいが男から漂ってくる下品なまでに強烈な香の臭いで呼吸すらままならない。
既に意識も飛びかけ、末の弟を護ろうと奮闘する義兄たちも同じように呼吸もままならず、身体を動かすにも難渋するありさまである。
「なに、すでに跡継ぎはおるからそこは気にすることはない。お前はわたしの妻として嫁いだ後は、毎夜私にその身体を開けばよいのだ。大人しくしていれば、毎晩天にも昇る心地にしてやろう」
男の目は血走り、鼻息が荒い。
香で隠しきれない口臭と体臭が混じりあい、異臭を放っている。
漣華はその異臭に耐えきれず、胃からせり上がってくるものを耐えきることはできなかった。
これが通常であれば、そのような失態を見せるわけがない。
だが、異臭で意識がほぼ飛んでしまい、いつもであれば漣華の状態を見て場を調えてくれるだろう侍従や他の使用人はその場にはいない。
唯一場を制する権限のある義兄二人も異臭で意識を保つのがやっとだ。
「なんだ、涙まで流して。おお、そこまで嬉しいのか。ならば嫁として迎えるのに先んじて、私の客室まで連れて行って介抱してやろう。体の隅々まで診てやろうぞ、私には医学の知識があるから安心するが良い」
男は舌なめずりをしながら相変わらずべらべらと勝手にしゃべり続ける。
そして義兄がかばおうとするのを払い落し、漣華に手を伸ばした。
その芋虫のごとき指のついた分厚い手と脂肪に埋まった手首が漣華を掴もうとする。
漣華の朦朧とした意識のもと、うっすらと紗が掛かったような白い視界の中に男の指に嵌められた指輪が太陽の光を反射して光った。
こいつは見かけによらずは医学を修めているのか。
なら、この異臭から脱出させてほしいと思う。
それにもし医師であるならば、自分のこの状態だとてきっと理解してくれるに違いない。
この吐き気も嘔吐も医師なら、大丈夫だろう。
いつも漣華を見てくれる医官だって、漣華が体調を崩してみっともないところを見せても顔色ひとつ変えず、きちんと薬を処方してくれるのだ。
漣華は瞬時にそう判断して、身体の反応を我慢せずに解放しよう、と決めた矢先だった。
「何をしている」
聞きなれた、張りのある低い声。
謝家の家人ではなく、いつも漣華の傍にあって常にそこに居た。
「し……しょ……」
この異臭からの刺激のせいで、呼吸もままならず、視界もなんだか歪んで白く濁って見える。
瑯炎の周りに揺らめくような金の光が立ちのぼり、いつもは綺麗な碧の瞳が金色に底光りして見える。
「これに手を出したのか?」
この異臭を意に介する様子もなく、瑯炎はすっと足を踏み出す。
それだけで停滞していた空気が動き始め、立木の先の小さな葉ですら少しも動く気配を見せなかったのがさわさわと風にそよぎ始めた。
瑯炎がすっと手をあげ、さあっと辺りを薙ぎ払うよう腕を内から外へと動かす。
すると、停滞していた異臭の塊が涼やかな風と共に吹き清められたかのように、そこから消えた。
代わりにそこには冷え冷えとした空気と、荒々しく吹き込んでくる風が運ぶ新鮮な空気が辺りを満たし、漣華たち三人はようやくまともに呼吸ができるようになった。
それでも少々の時間とは言え、まともに酸素を取り込めなかったためか、頭はガンガンと痛むし、まるで頭に心臓があるかの如くどくどくと血流が血管を走る音すらする。
三人は口を開けて思いっきり息を吸い込んだ。
空気とはこれほどに甘美なものだったのか。
常に周りにあるもので、まさかこれが断たれるとは思うはずもないものであったのだから、そう思うのも新鮮であった。
とにかく、有りがたい。
視界もどこか歪んだような、薄く白い紗が掛かっていたのが取れたかのように少しずつ鮮明になっていく。
実際には母屋の広間ではなく、義祖父母に会いに行くのだ。
「義祖父さまたち、お元気ですか?」
漣華が少し見上げるくらいには背の高い義兄二人はそれを聞いて若干遠い目をする。
「……うん。元気だぞ」
「問題ないな」
「そうですか!久しぶりにお目に掛かるので楽しみです!」
漣華は謝家に於いては末っ子である。
郊外にある実家に戻れば妹も居るが、妹ももう婚約も決まって大人びてきているし、甘やかしてやりづらくなった気がするのは少し寂しかった。
それを埋めるかのように漣華は謝家に於いては家族に甘えるのだ。
それも、ある種の代替行動なのだろう。
謝家の皆はそれをにこにことしながら受け入れ、誰ひとりとして拒絶する者は居ない。
それを薄々わかっていながらも甘えられる環境に、漣華は感謝もしている。
下人たちの担ぐ輿を断り、三人で庭に伸びる回廊をのんびりと歩く。
これも何か月ぶりだろうか。
いつもは職場と瑯炎の邸宅との往復で実家にも謝家にも寄る時間が取れない。
それはおたがいに理解もしてはいるが、なんとなく後ろめたくもある。
回廊を抜けて、少しひらけた場所が見えた時だった。
ぷん、と強い香の匂いが鼻を襲う。
漣華は余り匂いの強いものが好きではない。
だから、貴族としては珍しく衣類に香を焚き染めたりという事はほとんどしない。
代わりに、腰から下げる玉璧と共にさりげなく小さな香袋を持つくらいの話である。
思わず顔をしかめ、袖で鼻をかばう。
義兄たちも香を上手く使うが、ここまで下品に匂いを振りまくような使い方はしない。
良い香りもきつければ臭いだけなのだ。
そこは公主として宮中で育った稜佳がきっちりと躾けてもいた。
「うっく……!」
梨華が片手で鼻をかばい、袖で辺りの空気を払う。
臭いの塊となった空気がそこに壁として辺りを包んでいるような違和感すらある。
鼻からもだが、口を開けて呼吸してもそこにも何らかの臭いの粒子が貼り付いたようで違和感が取れない。
咽喉の奥を閉めても、目から香の香りが襲うようで、目にも刺激がある気がする。
新鮮な空気は入ってこないし、既に体内に入り込んだ臭いはできれば排出したい。
そして、何よりも目がツラい。
漣華は思いっきり咳き込んだ。
ひうひう、と気管と肺が悲鳴を上げ、目をしばたたかせ、涙の分泌を促す。
身体をくの字に曲げて咳き込むと、義兄が同じように咳き込みながら使用人を呼ばった。
「誰か!誰かある!」
三人が強い香の臭いに苦悶していると、小枝をべきべきと折ってその巨体をゆっさゆっさと揺らしながら、庭木の間を無理矢理すり抜けてきた男が居た。
「これはこれは、どうなされました」
にやにやといやらしい笑みを浮かべつつ、綺麗に撫でつけて形を整えた髭をしごく。
香の臭いで鼻がおかしくなりつつあるが、口の中に貼り付く臭いの粒子はこの男から飛んでくるようで、漣華は一層呼吸が苦しくなった。
「漣華!」
ふたりの義兄は漣華を抱えるように引きずりつつ、回廊に入り込んできた目の前の巨漢から距離を取ろうとした。
「誰だ!?」
桐華が誰何すると、ふふんとその短い脚を開いて胸を張る。
「誰とはまた。お久しぶりではないですかな、謝家のご兄弟がた」
ねっとりとした視線で三人をそれぞれに値踏みするかのように見ていく。
梨華はそれに怖気が立った。
「ふむ。双子と、そこに居るのは末の弟とか言う辺境の賤民ですかな」
男は名乗りもせずに既に夏の暑さも退いた季節であると言うのに、ばっさばっさと大きく扇で顔を仰ぐ。
その肥満体は秋であっても暖房すら要らぬほどに熱を発しでもするのか顔がやや赤い。
ちょこちょこと身長のわりに短い脚で歩みより、義兄たちに支えられて息も絶え絶えになりつつある漣華の顔を覗き込んだ。
ほう、と呟きながら顔に手を伸ばそうとして、漣華はぱしん、と震える手でそれを払った。
「生きの良い事だな。この美しさであれば、妹の婿でなくとも私の妾にしてやっても良いぞ」
撥ね退けられた手をさすりつつ、漣華に息が届くまでに顔を近づけ、じっとりねっとりと検分を始めた。
「なんなら、今の妻と離縁して我が妻に据えてやってもいい。どうだ?」
どうだ、と聞かれてもお断りだ。
漣華はそう答えたいが男から漂ってくる下品なまでに強烈な香の臭いで呼吸すらままならない。
既に意識も飛びかけ、末の弟を護ろうと奮闘する義兄たちも同じように呼吸もままならず、身体を動かすにも難渋するありさまである。
「なに、すでに跡継ぎはおるからそこは気にすることはない。お前はわたしの妻として嫁いだ後は、毎夜私にその身体を開けばよいのだ。大人しくしていれば、毎晩天にも昇る心地にしてやろう」
男の目は血走り、鼻息が荒い。
香で隠しきれない口臭と体臭が混じりあい、異臭を放っている。
漣華はその異臭に耐えきれず、胃からせり上がってくるものを耐えきることはできなかった。
これが通常であれば、そのような失態を見せるわけがない。
だが、異臭で意識がほぼ飛んでしまい、いつもであれば漣華の状態を見て場を調えてくれるだろう侍従や他の使用人はその場にはいない。
唯一場を制する権限のある義兄二人も異臭で意識を保つのがやっとだ。
「なんだ、涙まで流して。おお、そこまで嬉しいのか。ならば嫁として迎えるのに先んじて、私の客室まで連れて行って介抱してやろう。体の隅々まで診てやろうぞ、私には医学の知識があるから安心するが良い」
男は舌なめずりをしながら相変わらずべらべらと勝手にしゃべり続ける。
そして義兄がかばおうとするのを払い落し、漣華に手を伸ばした。
その芋虫のごとき指のついた分厚い手と脂肪に埋まった手首が漣華を掴もうとする。
漣華の朦朧とした意識のもと、うっすらと紗が掛かったような白い視界の中に男の指に嵌められた指輪が太陽の光を反射して光った。
こいつは見かけによらずは医学を修めているのか。
なら、この異臭から脱出させてほしいと思う。
それにもし医師であるならば、自分のこの状態だとてきっと理解してくれるに違いない。
この吐き気も嘔吐も医師なら、大丈夫だろう。
いつも漣華を見てくれる医官だって、漣華が体調を崩してみっともないところを見せても顔色ひとつ変えず、きちんと薬を処方してくれるのだ。
漣華は瞬時にそう判断して、身体の反応を我慢せずに解放しよう、と決めた矢先だった。
「何をしている」
聞きなれた、張りのある低い声。
謝家の家人ではなく、いつも漣華の傍にあって常にそこに居た。
「し……しょ……」
この異臭からの刺激のせいで、呼吸もままならず、視界もなんだか歪んで白く濁って見える。
瑯炎の周りに揺らめくような金の光が立ちのぼり、いつもは綺麗な碧の瞳が金色に底光りして見える。
「これに手を出したのか?」
この異臭を意に介する様子もなく、瑯炎はすっと足を踏み出す。
それだけで停滞していた空気が動き始め、立木の先の小さな葉ですら少しも動く気配を見せなかったのがさわさわと風にそよぎ始めた。
瑯炎がすっと手をあげ、さあっと辺りを薙ぎ払うよう腕を内から外へと動かす。
すると、停滞していた異臭の塊が涼やかな風と共に吹き清められたかのように、そこから消えた。
代わりにそこには冷え冷えとした空気と、荒々しく吹き込んでくる風が運ぶ新鮮な空気が辺りを満たし、漣華たち三人はようやくまともに呼吸ができるようになった。
それでも少々の時間とは言え、まともに酸素を取り込めなかったためか、頭はガンガンと痛むし、まるで頭に心臓があるかの如くどくどくと血流が血管を走る音すらする。
三人は口を開けて思いっきり息を吸い込んだ。
空気とはこれほどに甘美なものだったのか。
常に周りにあるもので、まさかこれが断たれるとは思うはずもないものであったのだから、そう思うのも新鮮であった。
とにかく、有りがたい。
視界もどこか歪んだような、薄く白い紗が掛かっていたのが取れたかのように少しずつ鮮明になっていく。
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