謝漣華は誘惑する。

飴谷きなこ

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拾壱、礼記は慈しむ。 *R18*

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 二人は浴室へ去っていく瑯炎ろうえんを見送ることもせず、漣華れんげの世話を始める。
体液で汚れた身体を湯で拭って清め、白湯さゆを飲ませる。
白湯には少しの塩と砂糖、それに檸檬レモンを絞ってある。
敢えて冷やしていないのは身体を必要以上に冷やさないためと、内臓での吸収を促す為だ。
冷やすとその分内臓は縮こまって一時的に固くなり、動きが鈍る。
その分必要な水分が入って行かない。
だから敢えて特に身体を冷やす必要がないのならば、常温で飲ませるのだ。

 綺麗に身体から汚れを拭い去ってしまうと、莱玲らいれいはするりとその手を肌の上で滑らせ、時には弾いたり軽く引っ掻いたりしながら刺激を与えていく。
清拭せいしきをしている間も漣華の雄の猛りは治まらず、礼記れいきが途方に暮れたような顔をしていた。

「礼記さま、抱いておしまいなさいまし」

 莱玲は誘う。
肝心の礼記の雄は雄々しく天を指しているがその持ち主である礼記は、この色欲に蕩けて正常でない漣華に手を出すのには抵抗があるらしい。

 やはり真面目だ。
だからこそ、瑯炎もここへ連れてきたのだろう。

莱玲はふふっと笑みをもらした。

「なあ、莱玲どの。何か飲ませて排出と言うわけにはいかんのか。このままでは私は」

「人助けだと思いなさいまし。意識がないだとかどうだとか、余計なことは置いといて。実際人助けです。これ、多分あと何度がヌけば大丈夫だと思うのですよ」

 さ、と莱玲は漣華の身体を背後から抱くようにして支え、今更ながらに怖気づく礼記に両脚を割り開いてその雄や後ろで息づく後孔を見せつけるようにする。
それでも動かない礼記に苛立ったのか、ちょっとごめんなさいねと言い置いて寝台の傍の引き出しの中から粘度のある液体の入った小瓶こびんを取り出し、ちょいちょいと礼記を手を招いて招き寄せた。
そして漣華の脚の間で膝立ちにさせるとその雄に小瓶の中身を垂らす。
そうして、細い指でその液体ごとぐちゃぐちゃと扱きだした。
さらにそこに礼記の雄を一緒に重ねて両方を繊手せんしゅで潤滑剤ごと扱き上げる。

「なにを」

 戸惑ったような熱のこもったような声で礼記が問いかけるが、先ほど掛けたこの液体、ただの液体ではない。
蜃気楼しんきろう御用達ごようたしの潤滑剤である。
それを猛った雄に塗され、白い繊手で上下に扱かれ、その潤滑剤に含まれる海藻の成分のうち、わずかな掻痒感そうようかんと熱がさらに礼記の息をあげさせた。
さらに漣華を抱き上げるようにして両脚を大きくはしたなく開かせ、だらしなくその皺の一本一本までも伸ばし切ってつるりとした後孔を、礼記にこれ見よがしに見せつける。
そんな漣華の雄と共に扱かれ始めると、礼記の快感は今まで感じたことのないほどに強く速くその階段を一気に駆け上がった。

 一時その快楽の声を堪えても、敏感な裏筋から鈴口、尿道にまで莱玲の容赦ない愛撫がそこに及ぶとたまらず欲を吐きだす。
その吐きだしたものも一緒くたにして、莱玲は自らの位置を変えると自身の履いていた下着の横にある紐をほどき、自らの猛った雄をあらわにして一緒に扱き始める。
寝台の上には三人の感極まった声が漏れ聞こえ、雄は自ら出した欲に更に白く染まった。

 荒く息を付く礼記に見せつけるように莱玲は漣華の既にメスと化した部分に張り型を宛がうが、礼記がそのまま中に挿れるのか、と思うと莱玲はちらりとこちらを見やりながら漣華の頬を舐め上げた。
そのまま耳殻を食むと、漣華は艶やかな声を上げる。

 そんな淫靡な姿を礼記に見せつけるように、ゆっくりと手に持った張り型で漣華の中を蹂躙じゅうりんし始めた。
辺りは淫靡な音に満ち、その音を恥じてか漣華は赤く染めた目元を手で隠してしまうのを、それをそっと引きはがして、礼記はまぶたに口づけを落とした。

「見せてください、漣華どの」

 瞼から、頬、耳殻と徐々についばむような口づけを落としていくと、はぁ、と熱い息を漏らしながら熱のこもりつつある瞳で漣華を映す。
瞳の中には劣情に肌を染め、はしたなく口を開けて嬌声をあげる漣華が映っていた。

 それを見て、礼記の腹の奥のずぐりとした熱がうごめくようにしながらその熱さを増していく。
莱玲と礼記はそれぞれに漣華に口づけを施しつつ、漣華をまた愛撫していく。
その艶やかな声を聞くたび、礼記が触れた箇所で反応を示すたびに礼記の中に確実に漣華の居場所は作られていく。
 張り型で中を十分にこね、引き抜くと漣華はまた感極まった嬌声をあげて白濁をこぼす。

 礼記はもう漣華を愛しくてたまらなかった。
一目見た時に、雷が自らに落ちたかのような衝撃を受けた。
この世にこんな佳人が居るのかと。
礼記とて、男である。
だから美しい女はそれなりに抱いてきたし、それなりに愛しく思った経験もある。
だが、ここまで己が何を捨ててでもと思うまでに夢中になった女はいなかった。
まさしくこれが礼記の初恋なのだ。

「礼記様、どうぞ」

 莱玲は少し離れて、横にずれて漣華を寝台に横たえた。
そしてそのまま自身の猛る雄の根元より奥を弄り始める。
それを無視して、礼記は漣華の後孔に一気に突き入れた。
先ほどまで瑯炎が散々に蹂躙し、更に莱玲が張り型で散々にほぐしてある。
ぽっかりと開いた後孔は難なく礼記の雄を呑みこみ、括約筋が切なげにきゅう、と締め上げる。
中は温かく礼記の雄を舐め上げ、包み込み腰を引き戻して押し込むごとに締め上げる。
 きゅうきゅうと雄を切なく締め上げられるごとに、礼記の中にある漣華への想いは募っていく。

 こうやって乱れた姿は、自分だけのものにしてしまいたい。
このまま拐っていって、どこかで部屋に閉じ込めて、二人だけで暮らすのだ。
自分が将軍位を返上してもいい。
そうしたら、田舎にある領地に引っ込んで二人だけで畑でも耕しながら暮らせたら。
礼記はそう夢想する。

 そのまま両脚を抱えて腰を動かしながら、姿勢を変える。
横に寝かせて片脚を担ぎ上げて更に腰を使う。

 莱玲は自身の牝の部分・・・・をゆっくりとほぐしながら、横向きになった漣華の雄を口で愛撫した。

 その漣華と莱玲の媚態にクるものがあり礼記は衝動を堪えるのに苦労するが、莱玲の準備も終わったのか、視線で合図を送られ、漣華を仰向けにする。
そして天を指し示す漣華の雄を莱玲は自身の牝に奥深く挿しこませると、そのまま両膝を立てて雄が引き抜けないように気を付けながら屈伸運動をして刺激を与えていく。
同時に礼記は漣華の奥を目指して腰を叩きつけ、辺りには三人の荒い息遣いと嬌声、空気と粘液がかき混ぜられ肌と肌がぶつかる音が聞こえる。

 礼記と莱玲、両方から快楽を与えられた漣華は堪らずいやいやをするように頭を左右に振るが、それを押して刺激を与えていく。

 その頑是ないようなあどけない表情と動きも礼記にはたまらない。
何せ一目惚れした、最愛の人を今この手に抱いているのだ。
漣華も完全に快楽に呑まれているのかと思いきや、どこかに正気な部分があるようで、羞恥に顔を染め痴態を見られるのを嫌がる素振りを見せる。
それが、礼記にはたまらなく愛しい。
この延唐が西方にある国々よりも婚姻に関しては緩やかで良かった、と思ったことはない。
ここから戻ったら、まずは人を頼んで正式に婚姻を申し込むべく動いてもらおう。
結納などの用意もしなければならぬ。
 礼記は自らの腹の下で艶やかな声を上げる愛しい人を莱玲の肩越しに見ながら思った。

 緩急をつけてゆっくりと猛った雄で漣華の胎内を蹂躙し、味わう。
そのうち漣華の牝となった後孔がきゅっきゅっと引き絞られ、絶頂が近いことを二人に教えてくれた。
それを感じると共に達したいと二人はより激しく胎内と雄を貪る。

 やがて漣華の絶頂と同時に二人も快楽の極みで脳裏に真っ白な雷が走るのを見て、全身に緊張と痙攣とそれからゆっくりと弛緩を味わった。
 息が整うのを待って、ずるりと引き抜くと漣華の後孔と莱玲の牝から白濁と自身から分泌された体液と混じってさらさらした液体がとろりと流れ出してくる。
 すでに漣華は気を失っているのか、ぴくりとも動かず、先ほどまで痛々しいほどに充血して猛り狂っていた雄はもう欲を吐きだし切ったのか、その力を失って小さくなっていた。





 莱玲は愛しそうに眠る漣華を見つめる礼記を羨ましく思う。
莱玲はここ、蜃気楼の陰間だ。
実際には雄と雌、双方の性器をもって客をもてなすのだから花魁でもあるのだが。
 客は莱玲の身体を殊の外珍しがり、同時に両方を味わえるとして、好んで莱玲を呼んで相手をさせる。
だから、ここ蜃気楼でも稼ぎ頭の部類に入りそこそこいい扱いをしてもらっている。

 けれど。

 今まで、何千と言う男を相手にはしたけれども莱玲を愛してくれる客はいなかったように思う。
所詮、この花街での恋は手練手管で買われる側から仕掛ける恋の遊び。
いっときの睦言はささやいても、その心まではお互い与えないのだ。
そういう遊び・・を楽しむ場所なのだから。
お互いに恋を仕掛け合い、そこに本気になれば野暮と言われてさっさと捨てられる。
割り切ってお互いの心に恋を仕掛けて勝負するこの数々の妓楼が立ち並ぶ花街の中で、こんな純真な恋心を莱玲はついぞ見たことがなかった。

 出会いはどうも内裏かその関連するところなのだろうが、同性同士の婚姻が認められる延唐えんとうに於いても子が生せないことがわかっている男同士、女同士の恋愛はもろ手を挙げて歓迎されるものではない。

 それでも、きっとこの礼記と言う客はその真心を漣華に捧げるのだろう。
そして大事に大事にその腕の中に囲い、慈しむのだ。
そういうきらきらと輝くような目の前の二人の未来を莱玲は垣間見た気がした。

 莱玲はここ、花街で生きる陰間だ。
ここで生きていく限り、真心を捧げ合ってお互いだけを見て生きていくなど到底望むべくもない。
心のどこかで、きゅう、と啼く声を聞いた気がした。
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