謝漣華は誘惑する。

飴谷きなこ

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弐、瑯炎は翻弄する。 *R18*

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 身体の力がゆったりと抜けて、漣華れんげの意識は心地よい眠りの中をただよう。
連日連夜の激務で疲れ切ったその身体が存分に睡眠を欲した結果、漣華は今まさしく熟睡していた。
不埒なやからがいたら、即座にぺろりと頂かれても仕方のない状態である。
何せ、漣華は西域さいいき特有の薄い髪色にまるで北方にあると言う青狼湖みずうみの色をそのまま写し取ったような透き通った青をたたえた瞳、白皙はくせきの肌、秀でたひたいにすっと延びた鼻梁はな
そして頬に影を作る長い睫毛まつげに薄い唇、そして鋭角えいかくに削られて整えられたかのような、淡く桃色に色づいた頬。

 ひげは元々薄いのかまだ年若く生え始めたばかりなのか、ほとんどわからない。
声は既に成人のように低いが、耳に心地よい低音を奏でる。
耳たぶには耳環ピアスが通され、所属を表す涙滴しずく型の紅水晶が揺れている。
瑯炎が西域の辺境で拾った時にはガリガリにせていたちびだったのが、瑯炎としては丹精たんせい込めて育てた結果、すくすくと伸びて今や瑯炎と変わらない。
瑯炎も背の高い方だが、もうすぐ漣華に抜かされそうな勢いでここ数年伸び、時たま伸びた骨や腱、筋肉が痛むのかしかめ面をしているところを見たりもする。
 要は見る者が見れば、食べごろの男子なのである。

 そんな無防備に睡眠をむさぼる養い子兼弟子兼部下の、顔にかかった薄い色をした髪をそっと瑯炎ろうえんは払ってやった。

「そんな表情なさるくらいなら、思いを打ち明ければよろしいのですわ。瑯炎様」

 漣華が眠る寝椅子の端に腰かけ、その寝顔を見やる瑯炎を蘭秀らんしゅう揶揄からかい混じりに声を掛けた。
先ほどまで隣室で酒やさかな、音楽でもてなしていたのだ。
そのもてなしていた側の蘭秀は先ほどまで着飾っていた衣装を脱ぎ、ゆったりとした夜着よぎに着かえている。
薄く透ける布地で作られたそれは蘭秀の無駄なく引き締まってそれでいてたっぷりと豊かな乳房ちぶさや両脚の上にささやかに息づく桃色をした秘所を余すことなく浮き出させて余すことなくより扇情せんじょう的に魅せていた。

「蘭秀」

「この方、うぶなのかしら」

 蘭秀がべに縁取ふちどられたで見やるその先には未だ眠りの中を揺蕩たゆたう漣華が横たわっている。

「俺の知る限りでは」

「わちきが、頂いても?」

「構わんだろう。俺もそのつもりで連れてきたのだし」

 瑯炎はそう言うと、蘭秀のほっそりとした腰を抱く。

「こいつが目を覚ますまでの間、たのしませてくれるか」

 耳元でささやきかけられて、蘭秀は玉虫色に輝く唇をねっとりと小さな舌で舐めあげた。





 寝椅子で眠る漣華をそのままに、瑯炎は蘭秀をたくましい両腕で抱き上げる。
そして長い両脚で部屋を横切ると、部屋の奥に設えられた寝台しんだい垂れ絹カーテンをめくってそこに抱きかかえた女の身体をそっと下ろす。
その間に瑯炎は蘭秀から激しい口内愛撫ディープキスを施され、既にその中心は熱を持ち、硬く力強く天を指していた。
その熱を持ったものを下衣ズボンの上からやわやわと撫ですさび、長く伸びた爪先で時たまその頂点に刺激を与えると、そこはびくっとさらに反応を示す。
その反応に気を良くした蘭秀はそこを更にいじりつつ、瑯炎の身体を包むお仕着せの詰襟つめえりをくつろげ、ボタンをその留環あなから外す。
その下の肌着を探り当てると、その合わせ目も解いてしまう。
帯も外し、上半身を包むものをすっかり脱がせてしまうと瑯炎の筋肉で覆われた身体が現れた。

 その無駄のない身体を撫でまわすと、下衣の留め金も手早く外してしまう。
瑯炎はついでとばかりに穿いていた革製の長靴ブーツを脱ぐと寝台に上がった。
残るは瑯炎の股間で主張するモノを包む下袴ふんどしだけである。
それを下袴の上から蘭秀は時には激しく時にはやんわりと愛撫あいぶしつつ、未だ瑯炎の舌も愛撫するのをやめない。
寝台の上には今にも食べてとばかりに色づく蘭秀の身体がその両乳房のとがりを瑯炎の身体に押し当て、濡れた秘所から立ち上る淫猥いんわいな香りは鼻をくすぐった。

「相変わらずいい女だな、蘭秀」

「うふふ。瑯炎様に可愛がっていただいてるからですわ。今日も食べさせてくださるのでしょう?」

 その薄い透けるような衣を脱がせると、瑯炎はたっぷりとした乳房を好きなようにこね回し、柔らかさと吸い付くような肌を堪能たんのうする。
形はお椀を伏せたような円錐形えんすいけいでその頂点には桃色に色づいて、今やおそしと瑯炎の唇の中に入り込みたいと主張する飾りがある。
そこに吸い付くと、蘭秀は切なげな声をあげた。
ひとしきり左右の飾りを吸い上げ、歯ではじくように愛撫を施していく。
背筋に添うように肌を撫で上げ、肋骨あばらの上に手のひらを滑らせる。
それだけで蘭秀は声を上げて瞳を潤ませた。
肉付きのいい尻肉をみ、撫でまわせば秘所は赤く色づき、その上のつぼみが充血して更に大きくふくららむ。
そこに新造しんぞ禿かむろ達に手入れをさせた指先を滑らせれば、蘭秀の淫声こえは言葉をなす前にその咽喉のどき鳴らした。

 「いい感じだな」

 くつくつと笑ってはいるが、実際にそこまで瑯炎に余裕があるわけではない。
いつの間にか下袴から取り出された瑯炎のモノは蘭秀の巧みな愛撫で今にも暴発せんばかりに快感をめこんでいる。
さっさと蘭秀の中を味わわせてもらわない事には男として情けない事になりかねなかった。
そう思いつつ、蘭秀の蕾を指できゅっと摘まみあげると、蘭秀はその豊かな乳房をねさせり、絶頂を極める。
その反応に気を良くしつつ、蜜壺みつつぼの入り口をそっとさぐるとそこは既に淫液いんえきあふれ探る指を中に引き込もうとうごめいていた。

 自らの身体の下で甘く声を上げる蘭秀とは別な生き物のように蠢く蜜壺に指をし入れ、中をまさぐるとその筋肉は蘭秀の意思とは別に奥へ奥へと導く。
すでに子壺こつぼ(子宮の事)が降りてきているのか、指先に少し硬いような柔らかいような感触が当たった。
そこに触れるや蘭秀は身体を電流でも通ったかのようにびくりと反応させる。
先ほどまで翻弄ほんろうされていたところ思わぬ仕返しができて、瑯炎はしてやったりと小さく笑みを浮かべた。
蘭秀の顔を見やると、うるんだひとみで軽くにらまれる。
それに小さく笑いを返して、瑯炎は蘭秀の身体の下に逞しい腕を通して抱き込み、自らが蘭秀の身体の下に滑り込んだ。
敷布シーツが背中に当たり、さらさらとした肌心地がして火照ほてった身体に気持ちよい涼感りょうかんを伝える。
夏の盛りも過ぎて秋口に差し掛かりはしたが、まだ暑さは残る。
全館最新式の空調完備の高級妓楼であるとは言え、人の身体から常時上がる熱を冷ますには少し物足りないが、その熱が二人の間に漂う淫靡いんびな空気を盛り上げていることは確かであった。

「蘭秀。尻をこちらに向けて、お前のを味わわせてくれ」

 瑯炎が希望したのはいわゆるシックスナインの形である。
蘭秀の身体を上に乗せて、自らの雄々おおしく反り立ったものを口中で愛撫させる。
それはこの蜃気楼での妓女たちに教えられる秘術でもあった。
瑯炎の言葉に蘭秀はためらうことなく女陰ほとをくるりと瑯炎に向けてまたがり、自身は瑯炎のモノを口中に含んで愛撫を丹念たんねんほどこしていく。
その小さな唇に納まりきらない逞しいモノをしらうおのような指と手のひらで撫でつつ、更にその下の袋もを愛撫する。
蟻の戸渡ありのとわたりに小さな舌をわせ、その先のすぼまりをぐりぐりと舌でほじくった。
そこまでされると流石さすがに瑯炎もたまらずびくびくと反応させてしまうが、欲を放ってしまうのをすんでのところで押しとどめた。
先に一度気をやり掛けたが、ここはおとこ矜持プライド、意地である。
瑯炎はお返しとばかりに陰核クリトリスをその舌と歯でもって愛撫しつつ、蜜壺の奥、子壺目がけて指を押し込めてえぐるようにその入り口を弾く。
蘭秀はそのたびに身を震わせて絶頂を味わうと、蜜壺も子壺も痙攣痙攣させながらぐったりと力を抜いた。
その様子に達成感を覚えながら、抱き上げて胡坐を掻いた上に座らせるように蘭秀を抱き上げるといきなりその中心で蜜壺を抉った。

 その衝撃で蘭秀は何度目かの絶頂を迎え、快楽にあえぐ声を押さえきれずにく。
蘭秀が上げる啼き声にますます気を良くしながら、瑯炎は腰を使い中を抉った。
中を抉られる度に蘭秀はすでに半ば意識を失っているのか、白目をきながらも体はびくびくと動き、口はだらしなく開いて玉虫色に綺麗に塗られた紅もげてよだれを流し、先ほどの艶麗えんれいとした姿の見る影もない。
 蘭秀は他の客相手であればここまで乱れることはないのだが、こと瑯炎を相手にするとよくぞここまでと思えるほどに淫欲よくのおもむくままに貪るのだ。
それがこの妓楼みせを支える花魁おいらんの最高峰である太夫たる蘭秀の心を、ある意味均衡バランスを保たせるひとつとなっているのを知っている瑯炎はそれに文句をつけることはない。
むしろ、他の客相手につんと澄ました顔で袖にする、この年若いまだ少女とも呼べる年齢の女を好き勝手に抱けると言うことに優越感を感じるのだ。

 更に何度かその豊かなししおきに腰を叩きつけるように蜜壺を抉り、完全に蘭秀の意識を飛ばしてしまうと瑯炎は中で欲を放った。
蘭秀の中から間断なくにじみ出てくる淫液と合わさって流れ出てくる白いモノは中に放った瞬間は粘性が高いが、淫液と合わさるとさらさらとした感触に変わり、奥の子壺が吸い込んだ余りが胎外そとに流れ出してくる。
自らのモノを蘭秀から抜き出し、えたモノを近くにあった使い捨ての薄紙うすがみで拭い取りながら瑯炎は何とはなしにながめていた。
蘭秀は未だ快感を極めているのか、その身体をびくびくと痙攣させている。
それを横目に、脱ぎ捨てた自身のお仕着せの隠しから小さな薬篭くすりいれを取り出すと、中から丸薬がんやくを取り出して蘭秀の蜜壺の奥に押し込む。
それがうまく子壺の入り口に留まり、溶け始めたのを確認して瑯炎は指を抜いた。

 女の身体から離れてその身に用意されていた柔らかい布地でできた浴衣ゆかたを羽織ると、呼び鈴を鳴らして禿を呼び、世話を任せて自身は湯を浴びることにした。





 女の嬌声こえを漣華は夢うつつに聞いた気がした。
緩々ゆるゆると意識は覚醒かくせいに向かい、段々とそのまぶたに光が差すのを感じ始める。
瞼がぴくぴくと動き、眼球が動く。
意識はほぼ覚醒しているが、まだ身体は眠っているのか瞼は思い通りに動く気配はなかった。
そこに女のくぐもった様な声と何かを叩くような音が聞こえる。
それに粘液ねんえきが空気と混ざり合うような音も。

 ぼんやりと何度かまばたきをして目を見開くと、そこは先ほど新造や禿達に導かれて横たえられた寝椅子の上で、寒くないように毛布が掛けられていた。
 やわやわと揉み解されていた手を見ると爪先まで完璧な手入れが施され、指先までしっとりふっくらとしていて、爪は磨かれぴかぴかに光っている。
足先はと目をやるとそこも手入れを施され、がさがさになっていたかかともつるりと磨き上げられてしっとりとして玻璃ガラスがはめ込まれた窓から注ぐ光をやわらかく受けていた。
しばらくぼんやりと手入れが施された自らの手や爪を光に透かすようにして眺めていると、そこにふと影が射した。

「なんだ。起きたのか」

 そう声を掛けられて、背もたれに預けた頭をその方向へ向けると、頭を綿布タオルで水分を拭き取り、同じ柔らかな綿布でできた浴衣を着て腰ひもを結んだ姿で瑯炎はそこに立っていた。

「目は覚めたか」

 瑯炎は漣華に声を掛けるが、目は開いているがまだ意識はそこまで覚醒していないのだろう、ぼんやりと瑯炎をその透き通った青の瞳で見上げるだけである。
ふむ、とひとりごちて近くの小卓小テーブルの上にあった水差しを取り上げると玻璃のカップに中の冷えた檸檬水れもんすいを入れて漣華に差し出した。

「飲め」

 漣華はゆっくりと背もたれから身体を起こすと杯を受け取り、素直に冷えた檸檬水を咽喉のどに流し込む。それを嚥下のみくだして、瑯炎を見やり、空になった杯を手に身体をそちらに向けた。
杯を小卓に置くと瑯炎にまだぼんやりとしたような表情で、「おはようございます」とあいさつをする。
それをくくっと咽喉で笑い、瑯炎は声を掛けた。

「まだねぼすけだな、漣華。来い、食事にしよう」

 隣室に続く扉を抜けると大卓大テーブルにはいくつかの料理が並べられ、酒も用意されていた。

「どのくらい寝てました?」

「さてな。俺が一戦してる間はおそらく寝ていただろうな。今、何時だ?」

 瑯炎の問いに禿がいらえを返す。
すでに日も暮れ始めて夕闇が窓の向こうを彩っている。
禿の応えに瑯炎は首肯しゅこうし、漣華の方を向いた。

「既に閉門時間を過ぎている。今日はここに泊まって明日の朝共に行くぞ」

 それに漣華は否やはなかった。
ここ最近の睡眠を取り戻すかのように深く寝入ってしまってはいたが、そのおかげか身体が軽く調子もいい。目の前に並べられた料理の数々に腹が鳴った。

「さて、喰うか。遠慮はするな」

 基本的に仕事をきっちりとこなしていれば目の前にいる師匠兼上司は機嫌がいい。
機嫌がいいという事はそれに伴って部下の扱いも良くなるのだ。

「明日はお前が採ってきた注文を手伝ってやる。心配するな」

 近衛から押し付けられた無理難題を一人でやらずに済んで、漣華はほっと肩の力を抜く。
禿や新造が椅子を引いて席をすす、そこに腰を下ろすと程よく反発力のある布張りが尻を迎える。
ここまでパンパンに膨らんだものは漣華の知る限りでは、畏きところの後宮くらいにしかないだろうと思うのだが、それを作るのは技官である自分の指揮の下に働く工房の職人たちであることは確かだ。
先年、定年を迎えて何人か退職していったので、その覚えた技術で持って店でも開いたのだろうと予測を立てる。
内裏でつちかわれた技術がそれなりに民間に広がり、根付いていくのはいいことだ。
それを見て使って、国民は自らの国に生まれた新しい技術と製品を知り、それを作って売り買いして経済を回していくのだ。

 椅子の布張りを撫でまわして感触を確かめていると、瑯炎が独りごちるかのように呟いた。

「去年退職してったジジイ共が、協力して工房を開いたらしい。そこをこの妓楼に紹介したんだ」

 この師匠兼上司は案外面倒見が良く、退職していく者たちに対して生活が成り立つように色々と手を貸してやっているのを漣華は何度か目にしている。
退職していった者たちはその恩恵にあずかれたらしい。
いいことだ、と内心思う。
そのまま無事にその余生よせいを過ごして行けたらそれでいいのだ。
工房を去っていく職人たちに何もしてやれず、それを気に掛けるばかりだった漣華はそれで少し報われたような気がして、ほっと息をついた。
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