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「……拾った以上、責任は取る。お前を捨てることはない。これから先も。ただ――……」

 リュストさんが少し、口ごもる。言葉を探しているのだろうか。

「――……ただ、もし、お前が野垂れ死にしたくない、という感情以外で、オレに捨てないでくれと言っているなら、その感情は捨てた方がいい」

「……どうして」

「捨てられたくないから代わりに死んでもいい、なんて、ろくな感情じゃねえからだ」

 リュストさんの言葉に、僕は何も言い返せなかった。
 リュストさんの言う通りだから。

 たとえ、これが、バース性からくる肉欲だったとしても、ストーカー女のような執着だったとしても――それこそ、恋のような何かだったとしても。命を粗雑に扱ってもいいと思う感情が、正しいわけがない。

 歪すぎる、自覚がないわけじゃない。
 でも――でも。僕には分からない。

 その辺の適当なオメガと同じように、世界で自分を一番に愛してくれる誰かを夢見て、でも、そんな夢を見ているほうが幸せだったと思えるほど、一瞬で、あっけなくアルファに捨てられてしまって。
 そんな僕には、リュストさんに抱く感情がどうあれば正しくなって、普通の恋愛のようになるのか、全然、見当がつかない。
 正解が、分からない。

「――……それでも、僕は、リュストさんと一緒にいたいんです。正しくなくても、ろくでもなくても」

 分からないなりに、僕は想いを言葉にする。呆れられてしまうだろうか、と思いながら。

「……どうしてそんなに、オレにこだわるんだ。オレなんかより、いい男も、いい女も、たくさんいる。それこそ、お前を『飼う』みたいな扱いをするんじゃなくて、『保護』してくれるような奴が、もっと他にいるだろ」

 理解出来ない、と言いたげな様子で、リュストさんが言う。
 バース性のない人間には、確かに理解出来ないだろう。こればかりは、理屈じゃない。感情と、本能だ。

「貴方が、僕を求めてくれたから」

 誰にも求められず、誰にも愛されず。いつか僕を愛してくれる『誰か』に希望を見出すことも出来ず。そんな日々が、どれだけ辛くてみじめだったか。
 そりゃあ、最初は、殴られて、無理やりで、パニックになったこともあったけど。でも、僕を求めて、僕を世話してくれて、僕を気にかけてくれて。

 それにどれだけ救われたか、リュストさんには分からないのだ。

 たとえ、泥沼のようなもので、ここにいることが悪いことで、逃げ出した方がいいと世界中の誰に言われようと――それこそ、リュストさんに言われようとも。
 死ぬまでここにいることが僕の幸せだと、本気で思っている。
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