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「娼館街では避妊が絶対。女は避妊薬を飲まないといけないし、男は避妊具をつけないといけない。ほとんど無法地帯な娼館街で、数少ない絶対的なルールだ」
じっくりと他人の行為を見る趣味はないので、花祭りのときにはそんなルールがあることには気が付かなかった。気まずくて、リュストさんの背中ばかり見ていたくらいだ。
「――でも、あの女はそのルールを破ったんだ。オレを自分のものにするためにな。ガキが出来れば、オレに買い取って貰えると、本気で思ってたんだろ」
……確かに、あれだけリュストさんに固執していれば、避妊薬を飲まないで、とか、使い終わった避妊具から精液を取り出して、とか、平気でやりそうなものである。
でも、今こうしてリュストさんが一人で暮らし、あの女性と出会ったら殴って追い返しているようでは、女性の目論見は失敗に終わったのだろう。
「オレが買い取る気もない女を孕ませたって話が一気に広まって、婆のところ以外の娼館は全部出禁。客として出禁なのは、まあ、妥協できても、仕事すら貰えなくなったからな。困ったどころの話じゃない」
街の飲食店に卸していた量の薬では、生活できないらしい。たしかに、いくら酒場だからといって、来る客全員が必ず胃薬なんかを買うわけじゃない。絶対に毎日使われる娼館街の避妊薬に比べたら、需要が少ないだろうことは、僕にだって分かる。
だからこそ、安く買いたたかれても『婆』さんに逆らうことができないのか。商品を駄目にした、という過去と、『婆』さんから仕事を貰えなくなったら生活できない、という二つも理由があって。
一気に仕事が立ちいかなくなった原因が女性にあるのなら、そりゃあ、殴ったり蹴ったりしたくも……ううん、納得は出来るけど、理解はできない、かも。別に僕はすぐに手が出る性格じゃないし。
ただ、面倒なことにならないように性欲のはけ口に女じゃなく男を使うようになって、後腐れないように、明らかに身寄りのない僕を選んだ、というのは腑に落ちる。あそこの娼館街、男娼も扱っているっぽかったし、抵抗が薄いのかもしれない。リュストさん自身、性欲のはけ口にする相手は性別を選ばなそうだし。
「でも、こんなんで、子供は……」
あの女性が、まともに子育てが出来ているとは到底思えない。あの人の世界はリュストさんだけで構成されていそうな雰囲気がある。育児放棄をしている、と言われれば簡単に納得出来てしまう。
でも、帰ってきた言葉は、想像よりも遥かに酷かった。
「ああ、子供はいない。……あいつ、ガキが出来てもオレが自分のものにならないと知ったら、あっさり堕胎しちまったんだよ」
その言葉を聞いてぞっとするのと同時に、あの女ならやりそうだな、と、妙に納得してしまった自分がいた。
じっくりと他人の行為を見る趣味はないので、花祭りのときにはそんなルールがあることには気が付かなかった。気まずくて、リュストさんの背中ばかり見ていたくらいだ。
「――でも、あの女はそのルールを破ったんだ。オレを自分のものにするためにな。ガキが出来れば、オレに買い取って貰えると、本気で思ってたんだろ」
……確かに、あれだけリュストさんに固執していれば、避妊薬を飲まないで、とか、使い終わった避妊具から精液を取り出して、とか、平気でやりそうなものである。
でも、今こうしてリュストさんが一人で暮らし、あの女性と出会ったら殴って追い返しているようでは、女性の目論見は失敗に終わったのだろう。
「オレが買い取る気もない女を孕ませたって話が一気に広まって、婆のところ以外の娼館は全部出禁。客として出禁なのは、まあ、妥協できても、仕事すら貰えなくなったからな。困ったどころの話じゃない」
街の飲食店に卸していた量の薬では、生活できないらしい。たしかに、いくら酒場だからといって、来る客全員が必ず胃薬なんかを買うわけじゃない。絶対に毎日使われる娼館街の避妊薬に比べたら、需要が少ないだろうことは、僕にだって分かる。
だからこそ、安く買いたたかれても『婆』さんに逆らうことができないのか。商品を駄目にした、という過去と、『婆』さんから仕事を貰えなくなったら生活できない、という二つも理由があって。
一気に仕事が立ちいかなくなった原因が女性にあるのなら、そりゃあ、殴ったり蹴ったりしたくも……ううん、納得は出来るけど、理解はできない、かも。別に僕はすぐに手が出る性格じゃないし。
ただ、面倒なことにならないように性欲のはけ口に女じゃなく男を使うようになって、後腐れないように、明らかに身寄りのない僕を選んだ、というのは腑に落ちる。あそこの娼館街、男娼も扱っているっぽかったし、抵抗が薄いのかもしれない。リュストさん自身、性欲のはけ口にする相手は性別を選ばなそうだし。
「でも、こんなんで、子供は……」
あの女性が、まともに子育てが出来ているとは到底思えない。あの人の世界はリュストさんだけで構成されていそうな雰囲気がある。育児放棄をしている、と言われれば簡単に納得出来てしまう。
でも、帰ってきた言葉は、想像よりも遥かに酷かった。
「ああ、子供はいない。……あいつ、ガキが出来てもオレが自分のものにならないと知ったら、あっさり堕胎しちまったんだよ」
その言葉を聞いてぞっとするのと同時に、あの女ならやりそうだな、と、妙に納得してしまった自分がいた。
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