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「――っ、それ、もう、やだぁ……っ」

 ぐすぐすと、鼻を鳴らしながら、僕はリュストさんに懇願する。でも、彼はやめない。どうあがいたって、どうなったって、ベッドの上で、僕に拒否権はないのだ。

 ただ、いつもと彼の雰囲気が違う。普段だったら、リュストさんが気持ちいいように、都合いい様に僕を『使う』方が多いくらいなのに、今日に限って、リュストさんは僕のことをでろでろに甘やかしてくる。
 しっかり時間を計っているわけじゃないからなんとも言えないけど、体感時間としては、普段ならもう行為自体が終わっていそうなのに、まだ、前戯の中盤かと思わされるほどだった。

 もどかしさと、緩い快感だけが募って頭がおかしくなりそうだ。

 優しくしてくれるのが、恋人みたいに甘ったるくしてくれるのが怖い、と思ったのは、ほんの最初の方だけ。今はもう、とにかく早くどうにかしてほしい、という感情と、蓄積された快感しか頭にない。

「たす、たすけて……っ」

 思わず男に手を伸ばすと、男はそれをパシっと握った。

「はは、こんなにしてるのはオレなのに、オレに助けを求めるのか?」

 楽しそうに笑う男の表情に、ぎゅう、と心が締め付けられる。いつも意地悪いようにしか笑わないくせに!
 ずっと機嫌が悪かったのに、今はそんなの微塵も感じられない。何がスイッチだったというんだ……。

「も、入れて……」

 僕がそう言うと、リュストさんは一瞬、きょとんとすると、すぐにくつくつと笑い出した。何がそんなに楽しいんだ。
 早く終わってほしい、と思いながらも、少しだけ、いつもこのくらい機嫌がよければな、とも思ってしまう。
 ……いや、でも、正直これだけ焦らされ、甘やかされるのは、殴ったり乱暴にされたりするのと同じくらいつらいかもしれない。どちらがマシか、という話になったら、どちらを取るか悩ましいところだ。

「――、っ、ふぅ……!」

 ぐぐ、とリュストさんが僕に押し入ってくると、息が詰まる。散々いじられたからか、圧迫感はない。そんなものより、ようやく与えられた快感の方が強かった。
 普段よりも、ゆっくりと進むリュストさん。余計に、彼の形を思い知らされているようで、じれったいと同時に恥ずかしさと変な快感が僕を襲う。

 トン、と、最奥を突かれたとき、僕は察する。

 あ、これ、駄目かも。

 そこから先は、もう記憶が飛び飛びだ。ずっと、与えられる快楽に溺れて、もがいて、縋っていたような気がする。何度果てて、情けない声を出して、強い快感に涙をこぼしたのか分からない。

 ――でも、最後の最後まで、リュストさんが優しかったことだけは覚えている。
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