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しばらくして戻ってきたリュストさんからもらった薬は飲み薬で、なんだかすごい色をしていた。木のコップに入っているのだが、底が見えず、どろっとしている。
薬草とかで作る薬はこんなものなのだろうか、とまじまじ見ていたが、僕はそれを返すことにした。
発情期(ヒート)は抑制剤でしかどうにもできない。もちろん、気休め程度に気持ちを落ち着かせることのできる食材はいくつかあるのだが、僕にそれは効かない。これは番解消の影響ではなく、もともとの体質だ。
この世界の物価はよくわからないが、薬なんてどこの世界でも高いものだろう。日本でだって保険がきかない薬はそれなりに高い。
「いらない、です」
そんなことより抱いてくれた方がこの熱はおさまる――なんて余計なことを口走りそうで怖い。発情期のオメガの知能や理性なんて赤ん坊並みだ。欲しいものを我慢できないし、感情の制御も難しい。
馬鹿なことを言わないように、一音ずつ、確かめるようにはっきりと言った。
しかし、それが体調の悪さをさらに演出してしまったのか、リュストさんは「飲め」の一点張りだった。
「高い、でしょ、う。薬なんて。死ぬようなものではない、ので、大丈夫です、よ」
「オレが作ったもんだから対して金はかかってねえ。おら、飲め」
口の中に親指をつっこまれ、顎をわしづかみにされ。強引に口を開かされて薬を流し込まれる。ほぼ喉に直なので、苦しいったらありゃしない。せめて舌から滑らすように入れてほしいのだが。
苦しさばかりが先行して、味はほとんど分からなかった。舌も固定されるほど強く押されているので、えづくことすらままならない。
どろりとした液体が喉を通り過ぎていく。その感覚は精液が流れる感覚に似ていて、無意識のうちに腹のそこが熱くなる。
コップの中身がすべて僕の胃に移動して、口から手を離されると、ようやくせき込むことが許された。
――が。
「オレの作った薬吐くんじゃねえぞ」
あごの下に指先を差し込まれ、そのまま上を向かされる。今に始まった話じゃないけど、ほんと鬼だなこの人。
もうせき込まないから、という意味を込めてリュストさんの手を軽くたたく。
解放され、ようやく呼吸もまともにできる。
「なんの薬ですか、これ」
「ア? 熱さましに決まってんだろ」
「意味、ないと思うけど……」
思わずつぶやくと、思い切り頬をつねられた。この人の頬のつねりは、強くつまむだけじゃなくてひねりも入れてくるので本当に痛い。
薬草とかで作る薬はこんなものなのだろうか、とまじまじ見ていたが、僕はそれを返すことにした。
発情期(ヒート)は抑制剤でしかどうにもできない。もちろん、気休め程度に気持ちを落ち着かせることのできる食材はいくつかあるのだが、僕にそれは効かない。これは番解消の影響ではなく、もともとの体質だ。
この世界の物価はよくわからないが、薬なんてどこの世界でも高いものだろう。日本でだって保険がきかない薬はそれなりに高い。
「いらない、です」
そんなことより抱いてくれた方がこの熱はおさまる――なんて余計なことを口走りそうで怖い。発情期のオメガの知能や理性なんて赤ん坊並みだ。欲しいものを我慢できないし、感情の制御も難しい。
馬鹿なことを言わないように、一音ずつ、確かめるようにはっきりと言った。
しかし、それが体調の悪さをさらに演出してしまったのか、リュストさんは「飲め」の一点張りだった。
「高い、でしょ、う。薬なんて。死ぬようなものではない、ので、大丈夫です、よ」
「オレが作ったもんだから対して金はかかってねえ。おら、飲め」
口の中に親指をつっこまれ、顎をわしづかみにされ。強引に口を開かされて薬を流し込まれる。ほぼ喉に直なので、苦しいったらありゃしない。せめて舌から滑らすように入れてほしいのだが。
苦しさばかりが先行して、味はほとんど分からなかった。舌も固定されるほど強く押されているので、えづくことすらままならない。
どろりとした液体が喉を通り過ぎていく。その感覚は精液が流れる感覚に似ていて、無意識のうちに腹のそこが熱くなる。
コップの中身がすべて僕の胃に移動して、口から手を離されると、ようやくせき込むことが許された。
――が。
「オレの作った薬吐くんじゃねえぞ」
あごの下に指先を差し込まれ、そのまま上を向かされる。今に始まった話じゃないけど、ほんと鬼だなこの人。
もうせき込まないから、という意味を込めてリュストさんの手を軽くたたく。
解放され、ようやく呼吸もまともにできる。
「なんの薬ですか、これ」
「ア? 熱さましに決まってんだろ」
「意味、ないと思うけど……」
思わずつぶやくと、思い切り頬をつねられた。この人の頬のつねりは、強くつまむだけじゃなくてひねりも入れてくるので本当に痛い。
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