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5章

60話 神話②

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混沌の伍の支配者が全員、同じ場所に揃うことで、その存在感はとてつもなく、周囲には誰一人として居なかった

「誰も居ないみたいだし、どうする?ここで決着つけちゃう?」

ヒカーシュが頭に腕を組みながら呑気に喋る。まるで自分が最強だから、負けるはずないと言うように
そのヒカーシュの舐めた発言に他の4人は殺気を放つ

強烈な殺気に周囲に台風並の風が吹く。誰一人として台風に負けず、その場に留まっていた

「いいんじゃねぇか!やってやるよ!」

マースは顔を真っ赤にし、いつでも殴れる体勢を取っている

すると、マースの体が動かなくなる

「…アビスてめぇ超能力使いやがったな?」

アビスは世界で唯一の超能力と呼ばれる能力が使える、この能力は体を動けなくするとは少し違い、相手の足に強力な重力を纏わし、動けなくさせるのだ
弱点は3つある、1つ目は強靭な脚の持ち主なら外すことが、今まで誰一人として外すことはできていない
2つ目は超能力を発動するタイミングに左右や上に跳ぶと、回避することができる
3つ目は使うと体の消費が激しいことだ。だから、使い所は見極めないといけない

「アビス、開幕の合図ってことかい?なら始めるぞ!」

トラトは口を隠していた頭巾を下に下げ、息をしやすくし、戦闘態勢に入る

「そういうことよ。かかって来なさい」

「ぐぅぅ…はぁっっっ!!!!!」

超能力によって動けなくなっていたマースが重力を外すことに成功した。しかし、外すことに力を使い過ぎ、少し息切れしている
だが、自慢の超能力を初めて外されたアビスに精神的ダメージを与えた

「油断大敵!」

ヒカーシュはナイフの腕で動揺しているアビスの背中を斬る

「ぐっ…痛いわね!えいっ!」

「何もしないじゃん?反撃するちか…ぐはっ!?」

アビスは超能力の応用で重力を空中に出し、それをヒカーシュに向けて飛ばした
ヒカーシュ目線では何も見えなかった

「ヒカーシュ脱落か? 」

グレファーは腹を抑えながら、ヒカーシュが吹っ飛ばされている所に追撃を入れるよう、マッハのスピードで近付く

「腹を怪我しているからか、動き見えているよん♪」

ヒカーシュはナイフの腕から、巨大な斧に変形させ、向かってくるグレファーの腹にカウンターを入れる
腹をマースによって負傷させられていたグレファーはさらに食らう致命傷によって倒れる

「お前こそ油断大敵だぞ?ふんっ!」

「へっ?」

ヒカーシュは倒れたグレファーにトドメを刺そうと近付いていると、後ろからマースに声を掛けられ、背中を思いっ切り殴られる

「痛ったぁ!?」

ヒカーシュの背中はボキボキに折られる

「混沌の伍の支配者、パワー最強をなめんなよ!」

「さすがに強すぎでしょ…けれど♪」

ヒカーシュは斧の腕から大きなハンマーに変形を遂げる
そのハンマーをマースに向かって回転し投げる

「ぐはっ!」

頭に直撃し、マースは膝を着き、体が震えて立ち上がれなくなる

「舐めるなッ!」

マースの体に黄金のオーラが纏われ、マースは立ち上がる

「それはっ!?なんだ!」

ヒカーシュは見た事ない未知の武術に戸惑い、本能的に体が震える

「まさか…貴様も習得していたとはな…」

グレファーは体に青色と黒色のオーラを纏い、立ち上がる

「なんだよ!それ!?俺は知らねぇぞ!?」

さっきまでの余裕な態度だったヒカーシュは態度を一変させ、まるでトラの前に立つチワワのように怯えてしまう
それほど、オーラの存在は大きかった
しかし、マースとグレファーだけでは無かったのだ

「マジかよ、ヒカーシュだけか?習得していないのは?」

トラトはオレンジ色のオーラを纏い、煽るようにヒカーシュの前に立つ
すると、同じく白銀色のオーラを纏ったアビスもヒカーシュの前に立つ

「これは、才能を持った者に神から与えられと言われている、ストロングジェネシターと言う物よ…あなたは才能が無かったのかもね…」

「なんだと!?くそっ!何がストロングジェネシターだ!そんな物に負けるか!」

ヒカーシュはトラトに向かって腕を刀に変形させ、真っ二つにする勢いで頭を斬る
しかし、トラトは片手でそれを受け止め、刀を折る

「なっ!?………………」

あまりにも力の差を感じたヒカーシュは黙り込んでしまう
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