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《No72》

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ジェイの呼ぶ声に、私は目が覚めた。

「シャトン、起きて下さい。休憩場所に、着きましたよ?」

そう言われても、まだジェイの腕の中が心地良くて、ジェイの胸に顔を埋めて(まだ…)と言って抱き締めて、ささやかな抵抗をする。

クスクスと言う笑い声が、聞こえてジェイが言った。

「クスクス…可愛いですね、私のシャトンは…。ニアが待ってますよ?珍しい物があると、言ってますよ?」

ジェイの言葉に顔を上げて、目をしばしばさせると、(まだ、寝ぼけてますね?)と言う声と、アンソニー様の(ジェイソン、ニヤケ過ぎだぞ)と言う声が聞こえた。

私はやっと、ここが北の辺境だった事に、気が付いてキョロキョロと、周りを見渡す。すると、ニヤけた顔のルドルフ様とニアが、側にいてアンソニー様がいた。側には騎士様達に取り囲まれて、私達は芝生の上に座っていたようだ。私だけが、ジェイの膝の上に、抱かれて寝ていたようだった。

「シャトン、起きた?全然起きないんだもの…」

ニアは、ニヤリと笑って、私に棒に丸い物が刺さった、茶色のいい匂いがする物を、手渡した。私は首を傾げて、それを受け取り、ニアに聞いた。

「ニア?これは何?いい匂いがするわね?」

「これはね、芋に衣を着けて、油で揚げたものよ?美味しいわよ?」

そして、コッソリとアンソニー様と小声で、話していた。(揚げ芋にしては、甘くないから、天婦羅に近いわよね?)と二人で話していた。ニアも、アンソニー様も、かぶり付いて食べていたので、私も真似をして食べた。

ジェイに(美味しいですか?)と聞かれて、モグモグしながら、うんうんと頷くと、アンソニー様が(萌えるわぁ~)と言いだして、ニアに(アンソニー、煩いわよ!!)と言われていた。
隊長様と、ザビエル様は驚きの顔をしていたが、私達にとっては何時もの事なので、気にしなかった。その後、串から芋が落ちて皿の上で、バラバラになった物を、ジェイがフォークで一口大にして、食べさせてくれた。

私は、パクパク食べながら、隊長様とアンソニー様の話を聞いていた。どうやらこの街には、ピンクさんの目撃情報は、無いようだ。
ただ、ローブを着た見慣れない男が、数日前に、何度か大量に食料を買い込んでいたと、言う報告をしていた。

揚げた芋を食べてから、ニアとルドルフ様達と4人で、街の中を少しだけ歩いて見た。余り人通りも多くなく、店の数も少ないので、よそ者は目につきそうだった。

アンソニー様は、そのローブの男を、調べるように、隊長に指示を出していた。その後で、私達4人は一台の馬車に乗り込んで行く事にした。

「ニア、先程隊長が言ってたローブの男って、ピンクさんの仲間かしら?ピンクさんの髪の色なら、絶対に目立つわよね?代わりに買い物に来たのかしら?一人じゃなくて、やっぱり協力者がいるのかしら?」

ニアも考えてながら、言いました。

「そうよね…。でもピンクは勿論、他の逃げてる可能性がある罪人も、お金は持ってないわよね?もし協力者が居たら、外部の者かしら?」

私達の話を聞いて、ルドルフ様が言いました。

「外部の人間とは、限らないですよ?あの鉱山の騎士や、内部の人間の方が、怪しいですからね。働かされている犯罪奴隷達は、普段外部の者と、会う事がないですからね…」

ジェイも、難し顔をして言った。

「そうですね…残念ながら、あの鉱山で働いている者達は、全員ではないですが、腐ってますからね。まさかとは思いたいですが、サニー嬢に、誑かされた者が居たら、匿ってるかもしれませんね」

(まぁ…犯罪者を、匿うなんて…)私は、ジェイの言葉に、驚きながら聞きました。

「では、ピンクさんが生きているなら、まだ鉱山の近くか、北の辺境領にいる、可能性が高いのね?では、この辺には居ないのかしらね…」

私は、そう言って窓の外を見ると、遠くに大きな建物と塔が見えた。

「ねぇ…あの塔と建物は、何かしら?ほら、林の向こうにあるでしょう?」

ニアも窓の外を見ています。

「あら?本当だわ。どなたかの、お屋敷かしらね?」

ジェイは窓の外を見て(あぁ…)と言ってから(この近くにあったんですか…)と呟いた。

「あれはきっと、ダイアナ様が、入っていらっしゃる、この国一番の厳しいと言われてる、修道院ですよ。私も初めて目にしますね。確か北の辺境領に近くて、高い塔があると聞いてますから、あの建物でしょう」

(まぁ…ダイアナ様は、ここにいるのね?)
私は驚きながら、窓の外を眺めていた。
すると、ピンク色を見た気がして、慌ててニアに言った。

「ニア見て、早く!!ピンク色よ?!」

ニアも急いで、窓の外を見ます。

「あっ?!本当だわ!!ほら、ルド見て!!」

ルドルフ様は、窓の外をみて、馬車を停める様に命じて、馬車から降りる前に、ジェイに声を掛けました。

「ジェイソン、二人を頼むよ。私はアンソニーの所へ行き、様子を見てくるから」

ジェイも真剣な顔で、頷いて言いました。

「あぁ…ルドルフ、気をつけて下さいね」

ルドルフ様は馬車を降りて出て行った。ジェイは急いで、扉を閉めて(結界を張りますよ)と言った。私とニアは、窓に張り付き外の様子を伺うと、アンソニー様とルドルフ様と騎士達が、先程ピンク色が見えた場所に、馬を走らせていた。
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