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《No6》

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「お二人共、とても美味しそうに、食べていたな。まだ食べるかい?
言ってくれれば、取って来てあげるよ?」

((!!!!))

「「大丈夫です。自分達で取りに行きます」」

((!!クスクス…))

「「まだ、食べるんだね」」

(推し)が言いました。

「まだ、食べるなら、運動した方がいいんじゃない?ダンスは踊らないのかな?
皆、誘っているよ?王太子の所へね」

((!!))

ニアが(推し)に言った。
「私達はいいんです。シャトン、運動しに行きましょ?まだ食べてない物があるし…」

「ニア、そうね。ルドルフ・シュタイナー様、ジェイソン・ボーン様、お気遣いありがとう御座いました。失礼します」

二人で椅子から立ち上がり、カテーシーをして、その場から立ち去り、バルコニーから、中庭に逃げた。

ジェイソンが、目を細めて微笑み、二人の後ろ姿を見ながら言った。

「おや?逃げられてしまいましたね」

ルドルフも、同じく二人の後ろ姿を見ながら言った。

「ホントだね。逃げられたね」

そんな二人の会話など、聞こえないニアとシャトンは、その場から離れる事しか、考えていなかった。

シャトンはニアに言った。

「ニア!あれが(推し)でしょ?
ルドルフ・シュタイナー様。もう一人のジェイソン・ボーン様は?」

二人で庭園を歩きながらニアは言った。

「ジェイソン・ボーン様は、宰相の息子で、王太子の側近だよ。それに、攻略対象の一人だよ。
(推し)のルドルフ・シュタイナー様も、攻略対象の一人だよ。
まさか、声を掛けられるとは、思ってなかったよね?ビックリしたぁ…」

私は、ニアに言った。

「えっ?ニアの(推し)も攻略対象なの?あの二人もお花畑なの?そうは見えなかったけどね…。それに、ニア…もう少しあそこにいて、(推し)と話したかったんじゃない?お近付きになれるじゃない」

ニアは、寂しそうに言った。

「そうだけど、変わるのよ…。
本の中では、ヒロインに会ったら、别人のように二人は変わるのよ…。何時も私達を睨みつけて、最低の悪役令嬢だな、って言い続けるのよ。
下手に親しくなったら、ツライでしょ?」

「そうなのね…。あの二人にも、近付かないほうがいいのね。気を付けるわ…。
そう言えば、私、王太子を確認してないわ。顔が解らなかったら困るかしら?」

「後で、見ればいいじゃない。取り囲まれてるから、見えるか解らないけどね…。クスクス…」

「ねえ…シャトンの家の百合の庭も、素敵だけど、お城の薔薇の庭も素敵ね」

「ニア、あっちのガゼボまで行って見ましょ?それから、またブュッフェに、行きましょう?
ニアの好きなサーモンのマリネも、美味しそうだったわよ?」

「サーモンのマリネ?それは食べなくちゃ♪その後で、またケーキよね。イチゴのタルトも捨てがたいわぁ~♪」

「またケーキなのね…ふふふ…。
私もイチゴのタルトは絶対に食べたいわ♪」

((クスクス…))

二人でそんな話をしていたら、また後から声を掛けられた。

「君たちは、食べる事が大好きなようだね。そんな細い身体の何処に入るんだろうね?クスクス…」

私達は、聞き覚えのある声を、確かめる様に振り返った。そこには、先程別れた相手が二人、ニッコリ笑っていた。

ニアが先に言った。

「どうしたんですか?ルドルフ・シュタイナー様、ジェイソン・ボーン様」

ジェイソン・ボーンが答えた。

「美しい令嬢が二人で、何時までも暗闇の庭園に居ては、危険ですからね。迎えに来たんですよ」

それを聞いて驚き、シャトンが言う。

「ジェイソン・ボーン様、先程といいお気遣い感謝致します。
ですが、お二人の手を煩わせる訳にはいきませんので、私達戻りますので…。行こう、ニア…」

シャトンと、ニアは、二人から距離を取って、歩き出す。

ジェイソン・ボーンが、シャトンに言った。

「ガドット嬢、いや…私もシャトン、と呼んでもいいですか?
私の事もジェイソン、とお呼び下さい。
実は、貴方にお礼を、言いたかったのですよ。
少し、お時間を頂けますか?」

シャトンは、困惑しながら言った。
「ジェイソン・ボーン様に、お礼を言われる様な事はしてませんが…」

シャトンとジェソンの会話を聞いていた、ルドルフは、ニアに声を掛けた。

「ソニア嬢、何やらジェイソンが、シャトレーゼ嬢に話があるようだから、向こうのガゼボで、待っていないかい?」

そう言って、ルドルフはニアをエスコートすべく、手を引いて、少し場所を離れた。

そんな二人を見て、シャトンはニアと(推し)ルドルフを二人だけで、話す機会をあげたかったので、ジェイソンと話す事にした。

「ジェイソン・ボーン様、お礼とは、何の事か解らないので、教えて頂けますか?それと、ジェイソン・ボーン様に対して、お名前で呼ぶ事など、失礼ですので、呼べませんわ」

ジェイソンはシャトンを見つめて言った。

「シャトン、私の事はジェイソンで、かまいませんよ?私が良いと言ってるのだから。
実は以前、シャトンのお父上の、エドワード殿に、助けられたのだよ。崖崩れの時にね。

急いで隣国へ、行かなければ、いけないのに、道は塞がれていて、先には進めないし、戻りたくても、車輪が壊れていて、戻る事も出来ない。

そんな時に、エドワード殿に会ったのだよ。
馬車の車輪の予備も2つあったお陰で、我が家の馬車も修理出来たし、必要だった染料も、その場で手に入ったしね」

「あの崖崩れのせいで、馬車は修理出来ても、戻り、遠回りをしてたら、かなり日にちがかかる所だった。助かったよ」

「あの時、父がお会いしたのが、ボーン様だつたんですね。それについては、私にお礼を言って頂く、必要はありませんよ」

ジェイソンは言った。

「いや…お父上が言っていたよ。私が、何故予備の車輪を2個も積んでいたか、聞いたら、娘が、最近崖崩れがあると、聞いたから、心配だから(車輪を2個と工具を持って行って)と、頼まれたからだと。
そのお陰で、私は助かったんたよ」

シャトンはジェイソンに言った。

「それでも、ボーン様にお礼を言って頂く必要はないですよ。私は、父が心配だった、だけですから…。お気になさらず。では、失礼します」

シャトンはニアの方を見て、声を掛けた。

「ニア、そろそろ戻りましょう?」

ニアが振り向き返事をした。

「シャトン、今行くわ。シュタイナー様、失礼します」

ニアはそう言って、シャトンに近寄り、シャトンと二人で、ジェイソンとルドルフに軽く会釈をして、会場へ戻って行った。
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