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【No19】

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先生は、帰り際に(バロン殿下に、目をつけられたようですから、気を付けるんですよ?一人には、ならないように。それと、男爵令嬢達は、反省文と一週間の自宅謹慎に、なりましたよ)と言って、去って言った。

私は、そのまま座って、考えていた。

私は被害者で、痴話喧嘩に、巻き込まれただけよね?ユリアン・スコット嬢が恋人かは、わらないけど…。

でも、目をつけられたと言われても、被害者は私なのに、彼女の事で仕返しに来るのかしら?やっぱり、王子様らしくない人よね…。逆恨みで仕返しなんて、器の小さい人ね!

出来るだけ教室から、出ないようにしましょう。そうすれば、顔を合わす事はないわ。
私はそう思いながら、一人でうんうん頷いていたが、はっとして気がついた。

(それでは、監視が出来ないし、噂話も聞けないわ…どうしましょう…。特別手当が減額されたら…)

一人、ぶつぶつ考えていたら、向こうから赤い髪色が、近付いて来るのが見えた。

(えっ?本当に仕返しに来たの?こんな場所まで?ど、どうしましょう…先生もいないし…。取り敢えず逃げなきゃ!)

そう考えていたら、バロン殿下が走り出し、凄い勢いで、こっちらへ向かってきた。

(キャ~~!! 走って来た!!)

私は慌てて猫になり、近くの茂みに潜んだ。

(ど、どうしましょう…寮まで来たら困るわ。……そうだわ!! 魔法院に行って、誰かと帰ればいいんだわ。先生がいるかも知れないし!!)

私はそう考えて、急いで音を立てないように、気をつけてその場を離れた。少し遠回りをして、無事に魔法院に入り、受付の顔馴染みになった、職員のお姉様の所へ駆け寄った。

「きゃぁ~~!!茶トラちゃん♪いらっしゃい♪どうしたんでちゅか?今日は猫ちゃんの姿で、会いに来てくれたんでちゅね~。お姉さんと一緒に、美味しいお菓子を食べましょうね~♪」

お姉様の声を聞き、近くにいた職員の方や、魔術師様達が、わらわらと集まり、皆んなに揉みくちゃにされた。

(今日は仕方がないわ。仕返しされるより、マシよね…)

私は、お姉様が食べさせてくれる、菓子をモグモグしながら、お姉様に言った。

「お姉様、先生はいるニャン?フレディ叔父様はいるニャン?」

お姉様は(モーガン先生はいないけど、リンブル課長はいるわよ?課長に会いに来たのかしら?連れて行ってあげましょうか?)
と言ってくれた。私は喜んで、お姉様にスリスリして(お願いニャン)と言った。

「きゃぁ~~可愛いぃ~♪さあ、行きましょう」

お姉様はそう言って、ニコニコしながら、私を抱きかかえて、フレディ叔父様の所へ、連れて行ってくれた。

「リンブル課長、可愛いお客様ですよ」

お姉様に声を掛けられたフレディ叔父様は、机から顔をあげると、笑みを浮かべて立ち上がり、私をお姉様より受け取った。(お姉様は、また後で寄ってね~♪)と言って、部屋を出て行った。

「ラナンどうしたの?猫のままで、来るなんて…。何かあったのかい?」

私はフレディ叔父様に、しがみついて言った。

「し、仕返しに来たニャン。バロン殿下が走って来たニャン!」

フレディ叔父様は、怪訝な顔をして言った。

「はぁあ?ラナンに仕返しだって?どう言うことだい!私の可愛い姪に!ラナン、話してごらん、何があったのか…」

私は今日の出来事を、フレディ叔父様に話して聞かせた。フレディ叔父様は、うんうんと話を聞きながら、最後に苦笑して言った。

「ラナン…モーガンが言った意味は、ちょっと違うね…。仕返しはされないと思うけど、逃げて来たのは正解だね」

と言った。その時に(リンブル課長)と呼ぶ声がしたので、フレディ叔父様は、両手を差し出している、女性職員に私を預けて側を離れた。
私は、女性職員に撫でられながら、フレディ叔父様が戻って来るのを待っていた。


入口の外から、フレディを呼んだのは、影だった。フレディは影の報告を聞くことにした。

「リンブル課長、ラナン嬢を追って来たのは、バロン殿下ではありません。ロザリオ殿下です。今、魔法院に来て、モーガンがいるかと聞いてます」

「何故、ロザリオ殿下が、ラナンを追って来たんだ?面識はない筈だが…。それにモーガンに、何の用事があるんだい?」

「これは、私の考えですが、もしかしたら、先日の部長室の件では?あの時、モーガンがいましたからね。ロザリオ殿下は、モーガンが、影の教員だと知ってますから。

あの時の、部長の相手をモーガンが、隠してると思ったのでは?それで先程林の中で、ラナン嬢とモーガンが二人でいる所を見て、相手が誰か確認しようとしたのでは…」

フレディは、影からの話を聞いて、ウンザリして言った。

「全く困った部長ですね。何故あんな、紛らわしい事を言うんでしょうね…。猫じゃ無ければ、セクハラ発言ですよ」

影もフレディの言う事に、頷きながら言った。

「仕方がないですよ。まさかあの鬼部長が、大の猫好きだったなんて…。それなのに、顔が怖くて猫は逃げ出すし、無理に抱き上げようとすれば、必死に暴れて逃げるそうですよ?猫も、喰われると思い、恐怖を感じるんですかね?」

はぁ…と、フレディはため息をついて言った。

「可愛い姪は嫁入り前なのに、変な噂がたったら、部長のせいですからね。例え部長でも許しませんよ?兎に角ラナンは、まだ此処にいた方がいいですね…。嫌、裏口から帰った方がいいか…?」

影はフレディの発言に、申し訳なさそうに反論した。

「リンブル課長、それは駄目です。部長はもうラナン嬢が、此処に来ている事を知ってます。我々の安寧の救世主を、お連れ下さい…」

「………はぁぁ…わかったよ」
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