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【No4】

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私は浴室から出て、持参した少ない荷物を、手早く片付けた。元々荷物になるので、王都で衣服は購入しようと考えていたからだ。

直ぐに片付け終った私は、お茶を入れて、一緒に引出しに入っていた、菓子を食べることにした。

(まぁ…お茶も、菓子も美味しいわ。流石王都よね。リンブルとは違うわね)

私はお茶を済ませても、まだ時間があるので、入浴を済ませて、ワンピースを着て見ようと考えた。

(フレディ叔父様は、後で出掛けると言ってたし…)

私は先に、着るワンピースを選んでから、浴室へ向った。
湯を張り体を洗うと、高級品の石鹸もシャンプーも、いい香りで肌も髪も、艶々になった。私は上機嫌で髪を乾かし、髪をハーフアップにして、ワンピースに合わせた、白いレースのリボンを結んだ。

選んだワンピースは、控え目な地色が水色で、胸元から白いレースで飾られて、フリルや小さな飾りリボンが沢山着いている、素敵なデザインだった。私の髪の色は、赤とオレンジ色の中間のような、淡いパプリカ色なので、派手な色の服を着ると、目立つので嫌いだった。

フレディ叔父様が、用意してくれたワンピースは、淡い落ち着いた、色の服ばかりで、どれも気に入った物ばかりだった。

(フレディ叔父様、よく私の好みがわかったわよね?靴も下着のサイズも、ピッタリだったし…?後で、聞いてみなくちゃ…)

そんな事を考えつつ、買いたい物を、紙に書き出していると、扉を叩く音が聞こえた。
私は、直ぐに扉を開くと、フレディ叔父様に、注意された。

「ラナンキュラス、駄目だよ?扉に鍵をかけないと…。それから扉には、のぞき穴があるから、相手を確認してから、扉は開けるようにね。ここは、昔の寮とは違って、男子禁制ではないんだよ。ほら、働いている女性が、住んでるから、偶に職場の同僚の出入りもあるから、気をつけるんだよ。王都は物騒だからね」

私は驚きながら頷いて、フレディ叔父様に言った。

「そうなんですね。これからは気をつけます。それとフレディ叔父様、ありがとう御座います。素敵な服や靴も…。王都で買い揃えようと思っていたので、助かりました。
あんなに沢山買い揃えたら、凄いお金を使ったでしょう?お支払いしますね」

私がそう言うと、フレディ叔父様は、笑いながら手を振って言いました。

「金の事は気にしなくていいよ?あれは王家から出ているからね。全部ラナンキュラスの物だよ。定期的に、石鹸やシャンプーや茶葉等の消耗品は、受付の女性が支給してくれるからね。はい、これがこの寮の、決まりが書いた紙と、見取り図だよ。後で目を通してね。

あぁ…早速着替えたんだね。サイズもピッタリだし、似合っているよ。ラナンキュラスの可愛さが、一段と増すね。鍵を掛け忘れたら、絶対に駄目だからね。変な虫がついたら、私が兄上に殺されてしまうからね!」

私はクスクス笑いながら、言いました。

「もう…フレディ叔父様ったら、変な虫なんてつかないわ。こんな田舎娘なんて、誰も相手にしないわよ。それより、よく私の好みや服や靴、下着のサイズが解りましたね?」

「あぁ…、それは最初に、話をしに行った時に、侍女のヘレンに聞いたんだよ。最近の服の型紙も貰ってね。それと好みと、靴と下着のサイズを紙に書いて、渡してもらったんだよ。それにあの時、映像画を撮らせて貰っただろう?それを彼女達に見せて、紙を渡したからだよ」

「まぁ…そうでしたか…だから、サイズがぴったりで、好みの物ばかりだったんですね?どれも、とっても気に入りました。選んで下さった方に、お礼を言って下さいね♪」

フレディ叔父様は、笑いながら言いました。

「お礼は、ラナンキュラスが、自分で言ってあげて。今から行く所に彼女達は、居るからね。さぁ…王宮の魔法院に行くよ」

私は頷きながら、フレディ叔父様と一緒に部屋を出て、鍵を閉めた。王宮の魔法院へは、馬車で行くのかと思ったら、フレディ叔父様は、寮の脇道の、林の中に入って行く。

「フレディ叔父様、王宮の魔法院へ行くと、言いましたよね?ここは林では?」

「あぁ…、この林を抜けると、王宮の魔法院の建物があるんだよ。ここを通ると、近道なのさ♪ほら、建物が見えて来ただろう?

更に奥へ行くと、城が見えるよ?入口は別々にあるけど、門の中に入ると、同じ敷地内なのさ。建物の間に、林で区切られてるけどね」

私は感心しながら、呟いた。

「あぁ…だから、魔術院の女性見習い研修員の方が、寮に住んでるんですね…」

(そう言うことだよ)とフレディ叔父様は言いました。寮に住んで居るのは、見習い女性達なので、夜遅くまで訓練がある為に、通うのが大変だから、この使われていない、女子寮の部屋を、見習いを卒業する迄、使用しているそうだ。

彼女達は、くたくたになって帰って来るので、近くて食事の心配もしなくていい、ここの寮生活が、気に入ってるそうだ。見習い期間が過ぎても、寮で暮らしたいと言ってるらしいと、フレディ叔父様は、話してくれた。

寮を出てから10分程で、大きな4階建ての建物が見えて来た。

「さぁ…ラナンキュラス、こっちだよ。彼女達も会いたがっていたよ。彼女達は、元学園の卒業生だし、寮に住んでるから、時間が合えば、色々相談も聞いてくれるよ」

「それは、心強いですね。お姉様方と仲良くして欲しいですわ」

フレディ叔父様は、苦笑してぽつりと言った。

「お姉様方…ね…。まぁ…そうなんだけどね。どちらかと言うと、お兄様に近い…かな…」
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