ホントのココロは

暁月雪

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幼少期

本当の家族~父~

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ガラガラガラ

…馬車が止まった。
城に着いたのかな。

「シオン様、城に到着致しました。」

「うん」


「足元お気を付けください」

ああ、確かこの騎士は、…ロ、ロード…。あぁ、ロードナイト。

「うん。ありがとう、ロードナイト」

そう言って騎士に微笑む。

「っ!いえ、こちらへ…」

…。緑色の髪をした執事?がたっている。

「初めまして、シオン様。私は、皇帝陛下、専属執事のセラフィナイト・フォン・モルドーモと申します。どうぞよろしくお願い致します。それでは、まずは湯浴みをし、その後お召換えをして頂きます。ご案内させて頂きます。どうぞこちらへ…」

皇帝陛下専属執事がどうしてここにいるんだろう。

はぁ…。まあいいか。
微笑みを作って返事をする。
自分の身を守るためにも外面は良くしておかないと…。

「うん。よろしく。セラフィナイト」

「…はい。よろしくお願い致します」



はぁ…。
城に来てから微笑みを貼り付けていたから頬が痛い。
それに窮屈だ…。
あれからやたら豪華なお風呂に入り、無駄に煌びやかで窮屈な服に着替えた。
これから皇帝陛下に会うそうだ。
僕の実の父親らしい。
どうでもいいけど…。


コンコンコン

「陛下、セラフィナイトでございます。シオン様をお連れ致しました。」

「ああ、入れ」

「失礼致します。シオン様、どうぞ…」

「うん。ありがとう、セラフィナイト」

貼り付けた微笑みが剥がれそう…。

「いえ、」

セラフィナイト…皇帝陛下の専属執事はそう言って静かに離れる。

…このおじさ…。コホン。この人がレイベルグ帝国皇帝陛下、ついでに僕の父か…。

「シオンよ。よく来たな。ずっと、」

威厳溢れる声。歳は30歳くらい。意外と若かった。

「ずっと、待っていたぞ~」

…威厳が吹っ飛んで行った。
顔がゆるっゆるだ。
( ・`-・´)キリッ→(*´ω`*)こんな感じに変わっていった。
ついでに抱きついてきた。
あ、貼り付けてた微笑みが剥がれた。

「オホンッ、陛下。シオン様が困っておりますが」

「あ、シオン…驚かせてしまってすまなかったな。嬉しくてつい…。私はレイベルグ帝国皇帝、スヴィエート・ミスラ・スモーキークォーツ・レイベルグだ。シオンの父親だよ。これからよろしくな。」

ホッ…。
驚いただけだと思ったらしい。
また微笑みを貼り付ける。
この場合は、なんと言ったらいいんだろうね。

「はい!よろしくお願いします。えっと…お父様?」

ちょっとあざとくやってみる。
…陛下が震えてるけど、失礼だったかな…?

「…。可愛い…。俺の子マジ天使…」

…。聞かなかったことにしよう。うん。
はぁ…。

「へ・い・か?はぁ…。シオン様が可愛いのは分かりましたからシャキッとしてください。」

…へ・い・か?の所が満面の笑みだったのにすごく怖かった。

「オホンッ、すまなかった。とりあえず今日の用事はこれだけだから部屋でゆっくり休むといい。皇后や他の皇子達の紹介はまた後でな。あぁ、そうだった。シオンの専属執事を紹介する。ジェダイド、入れ。」

「はい。失礼致します」

若い、薄黄緑色の髪をした執事が入ってきた。
どことなく陛下の専属執事に似ている。

「初めまして、シオン様。私はジェダイド・フォン・モルドーモと申します。僭越ながら殿下の専属執事をさせていただきます。どうぞよろしくお願い致します」

ジェダイド…僕の専属執事はそう言って綺麗な礼をした。

「ジェダイドはシオンだけの執事だからな、なんでも言って大丈夫だ。ジェダイド、シオンを部屋に案内してくれ」

僕だけの執事?
別にいらなかったけど、毎回違う人が僕の部屋を出入りするよりはマシかな…?

「はっ、かしこまりました。陛下。では、シオン様、お部屋にご案内させて頂きます。」

「うん。お願い」





「こちらでございます。」

…ここが僕の部屋…。
白と銀を基調としたシンプルな部屋だった。

「それではシオン様、私は左どなりの部屋におりますので何か御用がございましたらお呼びください。失礼致します」


パタン…

部屋の扉が閉まり1人になる。
ふぅ…。
首元を少し緩めてペンダントを出す。

ペンダントにはムーンストーンが着いている綺麗な指輪と透き通るような蒼い石が通してある。


この指輪は誰の物かは知らなかったけどお守りだと渡された。多分、僕の本当の母親が用意したんだろう。蒼い石は、僕が3歳の時に母がプレゼントしてくれたものだ。
朝着ていた服はもう着ることは無いからと、処分されてしまったので、これだけは持っておきたかった。
このペンダントと、髪紐を。
この髪紐は今日、お母さんに渡すつもりだったんだ。いつもありがとうって。
いつか、また、会いたい。会って、その時に渡したい。


いつか、辛い時、折れそうな時、このペンダントを見て頑張るから。

だからお母さん。
いつかまた逢う日まで。
元気でね…。

そう、母の色をした蒼い石に祈る。




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