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未来の息子がやってきた!?

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ドゴーンっ!!




 エイデンの蹴りで人造人間ホムンクルスの身体が跳んだ。壁を壊し倒れこんだ人造人間ホムンクルスに魔力を込めたエイデンの拳が向かうがそれは転がるように避けられる。しかし、避けられることなど予測していたのか、人造人間ホムンクルスが避けた先が爆発し、弾き跳んだ相手をエイデンは再び蹴り飛ばした。建物をなぎ倒し瓦礫に埋もれた人造人間ホムンクルスは遂にピクリとも動かなくなる。


「うしっ!終了!おい、ミドル生。こいつ拘束しろ。」
「…っ!」
「…はっ、はいっ!!」

 同じように息を呑んで戦いを見守っていたミドル生らが弾かれたように動き出し、魔力を練る。人造人間ホムンクルスの身体を中心に魔法陣が現れ、幾重もの鎖が人造人間ホムンクルスを拘束した。


「うわ、キッショッ!……なんか変な汁ついたわ…。」

 人造人間ホムンクルスの捕獲をミドル生に任せたエイデンは、自身の制服に付いた緑色のねばついた液体を見ながら叫んでいた。「うげぇ」と清掃魔法をかけている姿は先ほどまで異次元な戦闘を繰り広げていた人物とは思えない。


「…はは…。」


 まぁ、そこがエイデンの良いところではあるのだが。


「…お前、怪我してねぇ?」
「え?…あ、うん…。おかげさまでほっぺだけ…。…エイデンは?」
「してるわけねぇだろ。」
「さいですか…。」
「人のはいいから早く自分の傷治せバカ。」

 両手を上げ「何言ってんの?」といった表情を浮かべるクラスメイトに何とも言えない感情になる。




「あ、」

 ボフッ


 その時エイデンの背後にいた魔獣に気づいたが、声を出す間もなく魔獣が燃え上がった。本当に、この男は背中に目でもついているのだろうか。


(…あれ…?)


 気づいた時には遅かった。燃え上がる炎よりもずっと奥の瓦礫の山…――

 そこに居たはずの…――


(…人造人間ホムンクルスが居ないっ!!??)



 そこからはスローモーションの様にしか見えなかった。
 エイデンの背後で燃えている魔獣。その炎越しに人造人間ホムンクルスが現れる。
 
 大きな手と鋭い爪がエイデンに振り下ろされた。
 
 無意識だった。魔力を使って移動する。



 だって、この場で必要な人物は、残さなきゃいけないのは…――



「ソフィアっ!!!!」





 背中が熱い。どくどくと身体を廻る拍動を感じる。
 周囲が爆風や爆音であわただしいような気もするけど意識が跳びそうでそれどころじゃない。
 自分の身体に治癒魔法をかけるが朦朧とする意識のせいで思うようにいかない。

(あぁ、なるほど…。無意識レベルで治癒魔法が出来なきゃこういう時ダメなんだ…。)










「ソフィアっ!ソフィアっ!」

 自身の得意分野の欠点について考えていると急に目の前にエイデンの顔が現れた。
 人造人間ホムンクルスはまた捕獲することが出来たのだろうか。何かを言っている気がするけど耳に幕が張ったみたいに聞き取りにくい。
 それよりも、エイデンはなんでこんな泣きそうな顔をしてるんだろう。


 私が覚えているのはここまでだった。

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