15 / 26
税制改革は波乱だらけ
過剰な誇りは国をも滅ぼす
しおりを挟む
「...」
「...」
ドゥエセタから軍の詳細な現状を聞き終わり、暫く無言の時が続いた。軍は思っていたより無駄がなかった。汚職も無いし、兵器の無駄な購入も無い。そこは流石の王国一の功績者である。隙はない。
もし軍事費を削るとすると、あれを削るしか無くなる。削るのは躊躇われるが、削らないと国の財政が死んでしまう。
「第九から第十三師団までを廃止する。」
この一言は、レシツィア王国にとっては重大な決断であった。
この国の軍には第一から第十三師団までが存在する。第一から第八までが今のレシツィア王国内を拠点とし、第九から第十三師団までが、内乱でウォルシャネ公国となった所を元々拠点としていた師団だ。それを廃止する事は、ウォルシャネ公国の領土を諦めた、とも取れるのだ。だから今まで無理をしてまでこの過剰な師団を無理してまで存続させていたのだ。
「ですが、ヴァイネス様、それではウォルシャネ公国領を諦めると言うのですか?」
そう言うドゥエセタの目はまさしく驚きで一杯にまで開かれていた。
「そうとは言っていない。」
「ですが...」
ドゥエセタは難色を示す。
「そんな事に無理な意地を張って国が滅びたらどうする。今のこの国の財政はハッキリ言っていつ滅びてもおかしくない位の酷さだぞ?」
「...」
再びドゥエセタが無言となった。
「退役した軍人の雇用先も決めた。これ以上なんか懸念があるか?」
「いえ、ヴァイネス様、吾輩は今、感動しているのですよ。」
「感動?」
「えぇ、無駄な過信をせず、しっかりと現状を見据え、何をすれば改善するかを考え、時に勇気ある決断をする。それこそ、君主として最も必要な事だと吾輩は思っています。」
そう言うと、ドゥエセタはおもむろに立ち上がった。帰るらしい。
「そうか。」
ヤバい、めっちゃ嬉しい。素直に嬉しい。今まであってきたクソ貴族よりこの人の方が絶対有能でしょ?そんな人に褒められると、素直に嬉しい。
去り際にドゥエセタは立ち止まりこう言った。
「この老耄、最期の役目と思い、何が有ろうとも果たしてみせましょうぞ。」
そんなドゥエセタの言葉通り、三ヶ月後には第九から第十三師団までが廃止された。やはり軍部からは強烈な反発があったらしいが、ドゥエセタの鶴の一声でゴリ押したという。流石は王国一の功績者である。未だ軍人達には非常に尊敬されているらしい。
これに伴う退役者には、色々な役目についてもらった。アイヒシア商会の荷物の運搬の護衛に商人ギルドでも始めた小規模な運搬の運搬や護衛、国としての治安部隊(現代日本の警察の様な物)を各集落ごとに設置するための人員にと、人手不足でやれていなかった事に存分と人員を補充する事が出来た。これで支出も大分楽になる。
残るはより収入を増やす事だろう。
やだなぁ。あのくっそ面倒臭い腹黒貴族共をまた相手にしなきゃなんない。あぁ、マジでやだよ!また四大貴族やらが出しゃばって来るんだろ...
そう呑気な事を考えていると、部屋に伝令兵が飛び込んで来た!
「な、なんだ?一体。そんな急いで。」
肩を切らせている兵に問いかけると、息も切れ切れ兵は口を開いた。
「ベルシツェ王国より使者が参りました。」
前にも言ったがレシツィア王国は友好国が少ない。だから他国から使者が来ることも珍しい。
「分かったが、誰が来たんだ?幾らうちに来る他国の使者が少ないとはいえ、そこまで焦る事はないだろう。」
「それは...」
伝令兵は何故か少し焦っている訳を言う事を躊躇っている。
「早く言え。」
「では...」
少し間を空けて兵士は続ける。
「使者に来たのはベルシツェ王国王太子、ヴァッハリー=タシューベルト様でございます。」
なんてこったい!?
「...」
ドゥエセタから軍の詳細な現状を聞き終わり、暫く無言の時が続いた。軍は思っていたより無駄がなかった。汚職も無いし、兵器の無駄な購入も無い。そこは流石の王国一の功績者である。隙はない。
もし軍事費を削るとすると、あれを削るしか無くなる。削るのは躊躇われるが、削らないと国の財政が死んでしまう。
「第九から第十三師団までを廃止する。」
この一言は、レシツィア王国にとっては重大な決断であった。
この国の軍には第一から第十三師団までが存在する。第一から第八までが今のレシツィア王国内を拠点とし、第九から第十三師団までが、内乱でウォルシャネ公国となった所を元々拠点としていた師団だ。それを廃止する事は、ウォルシャネ公国の領土を諦めた、とも取れるのだ。だから今まで無理をしてまでこの過剰な師団を無理してまで存続させていたのだ。
「ですが、ヴァイネス様、それではウォルシャネ公国領を諦めると言うのですか?」
そう言うドゥエセタの目はまさしく驚きで一杯にまで開かれていた。
「そうとは言っていない。」
「ですが...」
ドゥエセタは難色を示す。
「そんな事に無理な意地を張って国が滅びたらどうする。今のこの国の財政はハッキリ言っていつ滅びてもおかしくない位の酷さだぞ?」
「...」
再びドゥエセタが無言となった。
「退役した軍人の雇用先も決めた。これ以上なんか懸念があるか?」
「いえ、ヴァイネス様、吾輩は今、感動しているのですよ。」
「感動?」
「えぇ、無駄な過信をせず、しっかりと現状を見据え、何をすれば改善するかを考え、時に勇気ある決断をする。それこそ、君主として最も必要な事だと吾輩は思っています。」
そう言うと、ドゥエセタはおもむろに立ち上がった。帰るらしい。
「そうか。」
ヤバい、めっちゃ嬉しい。素直に嬉しい。今まであってきたクソ貴族よりこの人の方が絶対有能でしょ?そんな人に褒められると、素直に嬉しい。
去り際にドゥエセタは立ち止まりこう言った。
「この老耄、最期の役目と思い、何が有ろうとも果たしてみせましょうぞ。」
そんなドゥエセタの言葉通り、三ヶ月後には第九から第十三師団までが廃止された。やはり軍部からは強烈な反発があったらしいが、ドゥエセタの鶴の一声でゴリ押したという。流石は王国一の功績者である。未だ軍人達には非常に尊敬されているらしい。
これに伴う退役者には、色々な役目についてもらった。アイヒシア商会の荷物の運搬の護衛に商人ギルドでも始めた小規模な運搬の運搬や護衛、国としての治安部隊(現代日本の警察の様な物)を各集落ごとに設置するための人員にと、人手不足でやれていなかった事に存分と人員を補充する事が出来た。これで支出も大分楽になる。
残るはより収入を増やす事だろう。
やだなぁ。あのくっそ面倒臭い腹黒貴族共をまた相手にしなきゃなんない。あぁ、マジでやだよ!また四大貴族やらが出しゃばって来るんだろ...
そう呑気な事を考えていると、部屋に伝令兵が飛び込んで来た!
「な、なんだ?一体。そんな急いで。」
肩を切らせている兵に問いかけると、息も切れ切れ兵は口を開いた。
「ベルシツェ王国より使者が参りました。」
前にも言ったがレシツィア王国は友好国が少ない。だから他国から使者が来ることも珍しい。
「分かったが、誰が来たんだ?幾らうちに来る他国の使者が少ないとはいえ、そこまで焦る事はないだろう。」
「それは...」
伝令兵は何故か少し焦っている訳を言う事を躊躇っている。
「早く言え。」
「では...」
少し間を空けて兵士は続ける。
「使者に来たのはベルシツェ王国王太子、ヴァッハリー=タシューベルト様でございます。」
なんてこったい!?
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
告白はミートパイが焼けてから
志波 連
恋愛
国王の気まぐれで身籠ってしまった平民の母を持つティナリアは、王宮の森に与えられた宮で暮らしていた
この国の21番目の王女であるティナリアは、とにかく貧しかった。
食べるものにも事欠く日々に、同じ側妃であるお隣の宮で働こうと画策する。
しかしそこで出会ったのは、護衛騎士との恋に悩む腹違いの姉だった。
ティナリアの決断により、その人生は大きな転換を迎える。
様々な人たちに助けられながら、無事に自由とお金を手にしたティナリアは、名を変えて母親の実家である食堂を再建しようと奮闘する。
いろいろな事件に巻き込まれながらも、懸命に生きようとするティナリア。
そして彼女は人生初の恋をした。
王女でありながら平民として暮らすティナリアの恋は叶うのだろうか。
他のサイトでも掲載しています。
タグは変更するかもしれません。
保険的にR15を追加しました。
表紙は写真AC様から使用しています。
かなり以前に書いたものですが、少々手を入れています。
よろしくお願いします。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる