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税制改革は波乱だらけ

病的なまで黒、奈落の果ての闇

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「はぁ、」

そんな溜息をつきながらゼールストワイズは王宮の廊下を歩く。各所に宝石やらが詰め込まれたその廊下は、吊るされたシャンデリアに照らされ、さらに華美が増している。ひっきりなしに使用人が往来するこの廊下は、まるで花街や栄えた市を思い出させる。
ふと、大きく造られ縁は装飾で彩られた窓を見ると、そこには絶妙な橙色を讃える美しい夕日がハッキリと見渡せた。

「わぁ、綺麗。」

怪しむ者はいない。今日もそれは万全だ。そう思いながら、また目的の場へ、向かおうと体を正面へ向けた時、背中から私に向けて、オチャラケた声が響いた。

「やぁ、兄さんの所のかわい子ちゃんじゃないか!」

そう面倒臭そうな奴の登場に溜息をつきたくなる。レシツィア王国国王の息子にして王国の懐刀、ツヴァイシア公爵家に養子として向かえられたルーグス、本名ルーグス=ゾルネス=アーチバル=ツヴァイシアだ。脳に叩き込んだこの国の重役の情報からルーグスの情報をさらっと繰り返した。

「はい!?なんでしょうか?」

そんな如何にも無害そうな返答を、完璧な驚愕の顔で応じてみせる。昔から感情が薄かったゼールストワイズかのじょにとって、ある意味本当の感情である。

「可愛い悲鳴だね。それと今度一緒に食事でもどう?」

さらに私に近づきながら彼はそんな戯言を言った。

「なっ、行くわけないだろう!?それと馬鹿にするな!?」

「じゃあ仕方ないね。」

顔がピッタリくっつきそうな距離まで近づいたルーグスは、耳元で囁かでそう呟いた。

そんな程度で女が堕ちるとでも思っているのか?この馬鹿は。そんな呆れを胸に、予想も容易い次の言葉を待っていた。

「もし、兄さんに手を出そうとしたら、次こそ分かっているよね?女狐?」

今までの軽そうな喋りと打って変わった、低くどす黒さが混じった声に、感情の薄い彼女は久しぶりに、本気で驚愕した。

「分かってんだよ、お前がどんだけ感情を造ったって、お前目は黒いままなんて事ぐらい。」

そのままルーグスは続ける。

「この国なんてどうでもいいけど、もし兄さんに傷一つでも付けたら、その時がお前の最期だと思え。」

そう言ったルーグスの瞳には、絶対に覗いてはいけなかった深淵を、確かに見た。それは一瞬の事だった。その後直ぐに彼は声色を戻しじゃあまた今度ね!などと言って去っていった。
そしてしばらく呆然と彼が去っていった方を見ていたが、漸く気を取り戻し目的の場所へ向かおうとして初めてゼールストワイズは気が付いた、自分が着ているメイド服の、丁度襟元に刃物で裂かれた跡がある事に。
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