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序章

侵入

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「そもそもだ、依頼人の素性を調べるのは当たり前だろ西城」

「まあ、そうだな」

「で、西城さっきの話の続きだが、依頼人は隣のクラスの新藤 聖夜しんどう せいやって奴だった」

「新藤聖夜?……あいつか」

「ああ、そいつで間違いないと思うぞ、お前と並ぶイケメンで女子にはモテモテ、父親はとある企業のお偉いさんらしい」

「まじか、あいつ本当に勝ち組だったのか」
  
  イケメン……殺す。

 しかし、あの顔面偏差値の高いやつが告白すら出来ないとはね。
 仕方ないと言えば仕方ないのかもしれない。独自に調査した結果、聖夜は高校入学後50回以上、女子生徒に告白されているため自分から言い出すことが出来ないのだろうたぶん。

 やはり……殺す。

 いけないいけない、つい心の声が漏れてしまう。

「勝ち組だよ、勝ち組、人生のな」

「で、そんなやつが何でうちのクラス女子生徒の情報を知りたがるんだ?」

「恋だろ」

「恋って、あいつあんなに女子に告白されてるのにか?」

 お前がそれを言うか。
 イケメンが。

「しるか!?」


 なんだかんだと西城と話し合い、方針が決まる頃には夜になっていた。

「準備はできたか西城」
  目的の家の近くの電柱に隠れ、フードを深くかぶりながら俺は西城に無線機で話かける。

「ああ、ポジションに着いた」

「作戦の最終確認をするぞ」

「わかった」

「あと数分で、ターゲットが塾に行くために家を出る。そうしたら、彼女の家に侵入し情報収集を行う、いいな?」

「わかった」

  無線機に話しかけながらもターゲットが家から出てこないかしっかりと確認をする。
  
「すみませんお名前を教えてくれませんか?」

「え、学生さんなの?君、カッコイイね、良ければ今夜一緒に遊ばない?年上のお姉さんは嫌いかな?」

 そんな声が聞こえてきた。

  まさかと思いながら西城がいるであろう電柱の方向を向くと、西城は2人の女性に逆ナンされていた。

「はぁ~、あいつこんな時までイケメン力を発揮しなくてもよくないか?」

  これは、ため息をついてしまっても仕方がない筈だ。
 異論は認めん。

「お褒めのお言葉ありがとうございます。ですが誠に申し訳ございません、現在仕事中なのでお嬢様方のお相手をしている暇はございません」

「えぇ~、いいじゃない、お姉さんと遊ぼうよ」

「あ、ズルい、私も!」

 チッ!

「すみません、無理です」
  今度はしっかりと断ったようだな。

「「駄目なの?」」
  これは、女の武器のひとつ上目遣い。

「すみません、無理です」

「どうしても?」
  
「どうしてもです」
  しばらくの間、西城と女性は見つめ合い、女性は納得したのか西城から目を離した。

「わかったは」

「ありがとうございます」

「それじゃ、また今度会いましょう?これ私の名刺ね」
  西城に名刺を渡し、2人の女性たちは居なくなってしまった。

「どうしようか、この名刺?」

 どうやら、やっと逆ナンが終わったらしい。



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