1 / 7
組織入団テスト編
恐怖する幼女
しおりを挟む
「はやくっ!はやく逃げて!!瑠璃!!」
「……ぅう、いぁだ!!いあぁだ!!ママといっしょに、いくんだもん!!」
お母さんといっしょにいたくて、泣きじゃくる私がそこにはいた。
当時、6歳の私には、お母さんがなぜあそこまで必死に私に逃げて、と言っていたのかが判らなかった。
「ルリ!!わがまま言わないの!!……いい子だから、この前行ったところに一人で向かうのよ」
「ッツ、ッツ、でも、でも……わかんないよママ!!」
いいえ、その時の私は、しっかりと避難所のある場所を覚えていた。
でも、なぜだか、私は、嫌な予感がして、いいえ、子供であった私にはそれが嫌な予感であったということすらも判らずに泣いていた。
「わからないの?だったら、ここからこの道を真っ直ぐ道なりに進めば着くわ。だから、ルリ、お願いだから逃げて……ごめんね、こんな時くらいしかあなたを守ってあげれなくて。愛してるわ、ルリ。あなたが生まれてきてくれたことが、私の一番の宝物よ」
そういって、お母さんは私の額にキスをしてくれた、
今でも私は、その時のお母さんの唇から伝わってきた暖かさを忘れてはいない。
「ぅ……ぅぅうぐぅ、うぅっ、うぅっ……」
「よしよし、いい子ね。大丈夫だから」
「うぐぅん、……ぅぅ……ぅぅ……わかった」
「えらい子ね」
「……お母さん、また会えるよね?」
少し悲しい顔をしながらお母さんはその時、こう言った。
「……えぇ、会えるわよ」
「……ぅん、わかった」
私は、優しく抱きしめていてくれたお母さんの手の中から離れて、瓦礫が散乱する道を走り出した。
その時、走っている私の後ろで大きな音が聴こえてきたが振り向かずに私は、お母さんが言った通りに道を走った。走っている途中で、「愛しているわよ、ルリ……」という声が聴こえた気がするが、その時の私には確かめる余裕すらなかった。
のちに、駆けつけた『アンヘル・ネメシス』と呼ばれる。北部を担当する、半人半異形の組織によって、北部に現れた捕獲型の『エグリアルマティアス』通称ーネットスパイダーは討伐された。
そして、私には後日、お母さんが私とお揃いで着けていたクローバー型のネックレスが遺留品として渡された。そのネックレスは、半分が赤黒く染まっており、元々綺麗だった艶のある黄緑色ではなくなっていた。
残念ながら、お母さんの遺体は見つからなかったようだ。
__あの日から、5年が経った。
私は、亡き母の復讐のために『エグリアルマティアス』を殺すことが専門の組織、
『アルマティアス』──通称、『アルマ』に入ることを決めた。
そして、現在。
私は、アルマ入団試験会場へと足を運んでいた。
「思ったよりも、人が多い?」
試験会場である旧:富士山と呼ばれている山の山頂には、私が思っていたよりも多くの入団志願者が集まっているようだ。
年齢層は、私と同じ10代だろうか?
まだ、あどけない顔立ちの幼女たちがそこには私を含めて100名ほど集まっており、各々が腰や肩などに鞘に収まった刀をかけている。彼女たちも私と同じように自身の体内に敵、つまるところの『エグリマティアス』の臓器を移植しており、ある程度の基準をクリアしたのだろう。
そんなことを考えているうちに会場に拡声器により拡声された、芯のある強い声が響き渡る。
当然、私たち入団希望者はその声を発しているであろう人物へと注目を向ける。
そこには、鉄製の壇上の上で左手を腰に当て、右手に拡声器を持った深紅のような赤色が特徴的な少女と呼ぶには身長が足りていない、幼女が立っていた。
ただ、その場にいる誰もがそんな外見から得られる情報よりも、その内部に宿っているものに畏怖のような、恐怖を覚えていた。これは、私の人間の部分が恐怖しているのではなく、私の『エグリマティアス』の部分が恐怖を感じている。潜在的な格の違い、それを直接叩きつけられているかのような気分に陥る。
「スッー!!」
息をするのも忘れるほどの、存在感。
あの時の死の恐怖すらも生温いと感じるような恐怖。
「……ぁあ」
この、恐怖のような威圧によりその場にいた何名かの幼女たちが倒れ込み始める。
「うん、どうやら。今年の子たちはなかなかに逸材が多いようだね。あっ、救護班!!倒れてる子たちを運んだ上げて、目が覚めたら、聞いておいて、まだ、やれるか……ってね!!」
先ほどまでとは打って変わって、可愛らしい声で話し始める壇上の幼女。
「あぁ……ぁ、えぇ……と、皆さん!!こんにちは!!私は、北部担当『アンヘル・ネメシス』の団長?みたいな立場にいるクレア・西ノ宮だよー。よろしくね!」
「団長、しっかりと挨拶をしてください。見てください、皆さんが困ってますよ」
クレアのいる壇上したにて、待機していた副団長らしき人が団長の挨拶を戒める。
「えぇ~そうかな?このぐらいがちょうどいいとおもうけどな~」
「はぁ~まったく、団長は相変わらず戦闘以外のことになると適当になるんですね」
「うんうん、よくわかってるじゃん!!さすが、副団長兼参謀だね♪」
「わかりました、団長。壇上から降りてください。後は、私が説明します」
「は~い~」
副団長が壇上に上がる。
「えぇ~、それでは、団長の代わりに副団長である私が今年の入団試験の方法を説明いたします」
副団長である彼女も、また同様に、団長ほどではないがかなりの存在感を感じる。
その、温和で優しそうな顔。そして、声。まるで、風鈴のようにスゥーと耳に入ってくる。
クリスタルのような白群色の長髪の髪がその美しさをさらに際立たせている。
「まず、皆さんにはそれぞれ1人でこちらの指定した場所に移動してもらいます。その後、その場にいる『エグリアルマティアス』と戦ってもらいます。もちろん、討伐してもらっても構いません。それと、安心してください、今回相手をしてもらう『エグリアルマティアス』はかなり弱い個体なので、油断をしなければ死ぬことはありません。以上です。それでは、みなさんご健闘を祈っております」
そういって、副団長は壇上を降りていく。
降り切ったところで団長に肩をツンツンされていたが、流石に、会話内容までは聞こえなかった。
「それでは、みなさん。受付で渡された番号を持っている場所へ移動してください!!」
その号令が響くや否や、その場にいた参加者全員が自分の所定の位置に向かって走り出したのだった。
「……ぅう、いぁだ!!いあぁだ!!ママといっしょに、いくんだもん!!」
お母さんといっしょにいたくて、泣きじゃくる私がそこにはいた。
当時、6歳の私には、お母さんがなぜあそこまで必死に私に逃げて、と言っていたのかが判らなかった。
「ルリ!!わがまま言わないの!!……いい子だから、この前行ったところに一人で向かうのよ」
「ッツ、ッツ、でも、でも……わかんないよママ!!」
いいえ、その時の私は、しっかりと避難所のある場所を覚えていた。
でも、なぜだか、私は、嫌な予感がして、いいえ、子供であった私にはそれが嫌な予感であったということすらも判らずに泣いていた。
「わからないの?だったら、ここからこの道を真っ直ぐ道なりに進めば着くわ。だから、ルリ、お願いだから逃げて……ごめんね、こんな時くらいしかあなたを守ってあげれなくて。愛してるわ、ルリ。あなたが生まれてきてくれたことが、私の一番の宝物よ」
そういって、お母さんは私の額にキスをしてくれた、
今でも私は、その時のお母さんの唇から伝わってきた暖かさを忘れてはいない。
「ぅ……ぅぅうぐぅ、うぅっ、うぅっ……」
「よしよし、いい子ね。大丈夫だから」
「うぐぅん、……ぅぅ……ぅぅ……わかった」
「えらい子ね」
「……お母さん、また会えるよね?」
少し悲しい顔をしながらお母さんはその時、こう言った。
「……えぇ、会えるわよ」
「……ぅん、わかった」
私は、優しく抱きしめていてくれたお母さんの手の中から離れて、瓦礫が散乱する道を走り出した。
その時、走っている私の後ろで大きな音が聴こえてきたが振り向かずに私は、お母さんが言った通りに道を走った。走っている途中で、「愛しているわよ、ルリ……」という声が聴こえた気がするが、その時の私には確かめる余裕すらなかった。
のちに、駆けつけた『アンヘル・ネメシス』と呼ばれる。北部を担当する、半人半異形の組織によって、北部に現れた捕獲型の『エグリアルマティアス』通称ーネットスパイダーは討伐された。
そして、私には後日、お母さんが私とお揃いで着けていたクローバー型のネックレスが遺留品として渡された。そのネックレスは、半分が赤黒く染まっており、元々綺麗だった艶のある黄緑色ではなくなっていた。
残念ながら、お母さんの遺体は見つからなかったようだ。
__あの日から、5年が経った。
私は、亡き母の復讐のために『エグリアルマティアス』を殺すことが専門の組織、
『アルマティアス』──通称、『アルマ』に入ることを決めた。
そして、現在。
私は、アルマ入団試験会場へと足を運んでいた。
「思ったよりも、人が多い?」
試験会場である旧:富士山と呼ばれている山の山頂には、私が思っていたよりも多くの入団志願者が集まっているようだ。
年齢層は、私と同じ10代だろうか?
まだ、あどけない顔立ちの幼女たちがそこには私を含めて100名ほど集まっており、各々が腰や肩などに鞘に収まった刀をかけている。彼女たちも私と同じように自身の体内に敵、つまるところの『エグリマティアス』の臓器を移植しており、ある程度の基準をクリアしたのだろう。
そんなことを考えているうちに会場に拡声器により拡声された、芯のある強い声が響き渡る。
当然、私たち入団希望者はその声を発しているであろう人物へと注目を向ける。
そこには、鉄製の壇上の上で左手を腰に当て、右手に拡声器を持った深紅のような赤色が特徴的な少女と呼ぶには身長が足りていない、幼女が立っていた。
ただ、その場にいる誰もがそんな外見から得られる情報よりも、その内部に宿っているものに畏怖のような、恐怖を覚えていた。これは、私の人間の部分が恐怖しているのではなく、私の『エグリマティアス』の部分が恐怖を感じている。潜在的な格の違い、それを直接叩きつけられているかのような気分に陥る。
「スッー!!」
息をするのも忘れるほどの、存在感。
あの時の死の恐怖すらも生温いと感じるような恐怖。
「……ぁあ」
この、恐怖のような威圧によりその場にいた何名かの幼女たちが倒れ込み始める。
「うん、どうやら。今年の子たちはなかなかに逸材が多いようだね。あっ、救護班!!倒れてる子たちを運んだ上げて、目が覚めたら、聞いておいて、まだ、やれるか……ってね!!」
先ほどまでとは打って変わって、可愛らしい声で話し始める壇上の幼女。
「あぁ……ぁ、えぇ……と、皆さん!!こんにちは!!私は、北部担当『アンヘル・ネメシス』の団長?みたいな立場にいるクレア・西ノ宮だよー。よろしくね!」
「団長、しっかりと挨拶をしてください。見てください、皆さんが困ってますよ」
クレアのいる壇上したにて、待機していた副団長らしき人が団長の挨拶を戒める。
「えぇ~そうかな?このぐらいがちょうどいいとおもうけどな~」
「はぁ~まったく、団長は相変わらず戦闘以外のことになると適当になるんですね」
「うんうん、よくわかってるじゃん!!さすが、副団長兼参謀だね♪」
「わかりました、団長。壇上から降りてください。後は、私が説明します」
「は~い~」
副団長が壇上に上がる。
「えぇ~、それでは、団長の代わりに副団長である私が今年の入団試験の方法を説明いたします」
副団長である彼女も、また同様に、団長ほどではないがかなりの存在感を感じる。
その、温和で優しそうな顔。そして、声。まるで、風鈴のようにスゥーと耳に入ってくる。
クリスタルのような白群色の長髪の髪がその美しさをさらに際立たせている。
「まず、皆さんにはそれぞれ1人でこちらの指定した場所に移動してもらいます。その後、その場にいる『エグリアルマティアス』と戦ってもらいます。もちろん、討伐してもらっても構いません。それと、安心してください、今回相手をしてもらう『エグリアルマティアス』はかなり弱い個体なので、油断をしなければ死ぬことはありません。以上です。それでは、みなさんご健闘を祈っております」
そういって、副団長は壇上を降りていく。
降り切ったところで団長に肩をツンツンされていたが、流石に、会話内容までは聞こえなかった。
「それでは、みなさん。受付で渡された番号を持っている場所へ移動してください!!」
その号令が響くや否や、その場にいた参加者全員が自分の所定の位置に向かって走り出したのだった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
まさか転生?
花菱
ファンタジー
気付いたら異世界? しかも身体が?
一体どうなってるの…
あれ?でも……
滑舌かなり悪く、ご都合主義のお話。
初めてなので作者にも今後どうなっていくのか分からない……
異世界転生はうっかり神様のせい⁈
りょく
ファンタジー
引きこもりニート。享年30。
趣味は漫画とゲーム。
なにかと不幸体質。
スイーツ大好き。
なオタク女。
実は予定よりの早死は神様の所為であるようで…
そんな訳あり人生を歩んだ人間の先は
異世界⁈
魔法、魔物、妖精もふもふ何でもありな世界
中々なお家の次女に生まれたようです。
家族に愛され、見守られながら
エアリア、異世界人生楽しみます‼︎
英雄のいない世界で
赤坂皐月
ファンタジー
魔法の進化形態である練魔術は、この世界に大きな技術革新をもたらした。
しかし、新しい物は古い物を次々と淘汰していき、現代兵器での集団戦闘が当たり前となった今、この世界で勇者という存在は、必要の無いものとみなされるようになってしまっていた。
王国の兵団で勇者を目指していた若き青年、ロクヨウ・コヨミは、そんな時代の訪れを憂い、生きる目標を失い、次第に落ちこぼれていってしまったのだが、しかし彼の運命は、とある少女との出会いをキッカケに、彼の思わぬ方向へと動き始めてしまう──。
●2018.3.1 第1シーズン『THE GROUND ZERO』が完結しました!
●2018.3.23 BACK TO THE OCEAN Chapter1 完結しました。
●2018.4.11 BACK TO THE OCEAN Chapter2 完結しました。
●2018.5.7 BACK TO THE OCEAN Chapter3 完結しました。
42歳メジャーリーガー、異世界に転生。チートは無いけど、魔法と元日本最高級の豪速球で無双したいと思います。
町島航太
ファンタジー
かつて日本最強投手と持て囃され、MLBでも大活躍した佐久間隼人。
しかし、老化による衰えと3度の靭帯損傷により、引退を余儀なくされてしまう。
失意の中、歩いていると球団の熱狂的ファンからポストシーズンに行けなかった理由と決めつけられ、刺し殺されてしまう。
だが、目を再び開くと、魔法が存在する世界『異世界』に転生していた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる