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超魔の目覚め

蛮竜の最後

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 無駄なことをしやがる。結果は分かりきってるはずだ。

「うらあぁぁぁ!!」

 雄叫びを響かせて、前方から向かってきた蛮竜三匹を右手で叩くように殴打する。
 十万トン以上の肉体から繰り出される打撃、その威力はもはや並の兵器を上回る。
 複数の人食いの化け物は血霧をぶちまけて爆散するように肉片へと変わり果てる。
 そして、すかさず触角から高出力レーザーを照射して上空の蛮竜を五匹まとめて蒸発。
 続いて、後方を音速に達した尾で凪ぎ払う。さながら長大な鞭となり、破裂音を轟かせて八匹の蛮竜がバラバラに弾け飛ぶ。
 千を越える蛮竜が俺に密集している、視界は全て奴等に埋め尽くされているが、それはつまり適当に体を動かすだけで奴等を攻撃できると言うもの。
 次から次へと蛮竜が臭い血霧と肉片へとなりはて、ボタボタと無惨に落ちていく。
 しかし、それでも全ては迎撃できないため何匹かは怪獣の巨体にへばりつき牙や銛状の舌を突き立てたり、強酸溶液を吐きかけてきた。

「そんなものが俺に効くかよ」

 何かがへばりつく不快な感覚はあるが負傷しなければ痛みもない。怪獣の表皮を突き破るにはあまりにも非力だ。
 超装甲のごとき表皮に、豆鉄砲を何千何万発撃っても傷つくことはない。
 たとえどれだけ蛮竜がいようと、俺を倒すのは不可能なことなのだ。どんな攻撃も無効である。

「ぐおっ!」

 突如、右目に焼けるような痛みが走った。
 どうやら俺の真上を飛翔してた奴等がどさくさに紛れ込むように、目に向けて強酸溶液を吐きかけてきたようだ。

「見くびるなよぉ、直接ではないが貴様とは一度戦っている。インプラントの機能で蛮竜どもを通じて情報は俺にも反映されてる、何の考えもなしに挑んでるとでも思っているのか。いかに強靭な肉体を持っても、目が脆弱なのは他の生物と変わらんだろう」

 蛮竜の翼の音に混じり、あの黒い蛮竜の鼻で笑うような声が響く。
 そしてまたも赤黒い溶解液が顔に吐きかけられる。左目を守るため咄嗟に目を閉じた。
 当然のこと視界は真っ暗。これでは戦闘など不可能と言えるが、俺には肉眼に頼らずに外界を知覚する超感覚が備わるため全く問題ない。
 ……が、奴の言う通り少し見くびりすぎていたか。
 蛮竜どもの知能は獣よりも低いが、それを操ってるのは人並みの存在。敵の弱点などを突くような攻撃を仕掛けてくるのは当然だったか。

「だがな目を潰したぐらいで、俺は倒せんぞ」

 左肩にへばり付いていた蛮竜を虫のごとく叩き潰し、一気に数を減らすために面の攻撃を試みた。
 有機磁性体を備えた背鰭一つ一つにエネルギーを供給、背面にそびえる突起状器官が共同で強力な高周波電波を放出した。
 その結果、俺の後方にいは蛮竜どもの構成主成分たる水分が急激に加熱され、数十体の化け物の体液が沸騰しパンパンに膨れ上がり、やがて皮膚を突き破ってスプレーのように弾けとんだ。
 確かに少々侮っていたかもしれんが、それは蛮竜側も同じと言えよう。

「ゲン・ドラゴンで、てめえらを数百体も相手にしたんだ。何ら手段もなしに、蛮竜の殲滅に来たとおもっているのか?」

 おそらく連中は、俺の戦闘能力を当時のままと思っているのだろう。でなきゃ目潰し程度のちんけな策だけのはずがない。
 黒い蛮竜が戦術を練っていたように、俺だって無数の蛮竜に対処可能な生体武装を構築させておいた。
 先程の高周波電波の攻撃がそれだ。
 レーザーではどうしても、点による攻撃になるため多数の敵には対応しきれない。
 そのためにも備えていたんだ。

「素晴らしい! そんな武器まで備えているとは」

 大量の蛮竜を対処中でも、超感覚により黒い蛮竜の感心するような言葉を拾うことができる。

「お前ほどの力があれば、この世を思うがままにできるだろうに。惜しいな人間なんぞに与せず俺達に協力してくれればよいものを。俺のような失敗作とは真逆だ、まさに究極の生命だ」
「何が俺達に協力だ、何が究極の生命だ、てめえの話は聞きあきた。ゲン・ドラゴンへの襲撃、トウカを付け狙ったこと、俺達に牙を向けた時点で貴様等は最初はなから敵……いや害獣でしかない」

 そう言って光線で首を切断して墜落した蛮竜を踏み潰す。こいつらは首だけになっても、しばらくは生きているからな。

「ところで、ギルゲスのお姫様はどうしている?」

 嘲笑うように黒い蛮竜が問いかけてくる。

「てめえには関係ねぇことだ」

 ……いや、まて。なんでこいつは俺達がウェルシ様を保護していることを知っている。
 蛮竜を通じてアリシアを伴って、ギルゲスにやって来たことを知ってるからか?

「俺はあえて姫を見逃したのさ。自分等だけ無事に生き延び、見捨てられた住民どもは毎日蛮竜が現れるかもしれない恐怖。俺達が殲滅されたところで、この国はどうなるだろうな? 住民どもが自分達を見捨てた姫をなんと思うだろうな」

 人並みの知能を有するだけあって、考えることもかなり醜悪だな。
 確かに蛮竜を殲滅して事が終わっても俺達の仕事は終わるだけで、ギルゲス内の問題や住民達との関係が解決するわけでもない。
 ウェルシ姫やアリシア達は住民達を見捨てたことを責められるかもしれんし、一生罪悪感に苦しめられるだろう。
 それを見越してウェルシ姫を見逃していたと言うなら、ただ人類を殺すのではなく人を苦しめて悶えるその姿に喜びと満足感を得る腹積もり。
 人同士の繋がりを壊して信用や関係を崩壊させ疑心暗鬼に導く。
 蛮竜を殲滅したところで、混乱と不安の時代が来るか、もしくは自滅の将来の可能性もある。
 ……だが。

「そう言ってくれると、なおさら殺しがいがでるぜ」

 その薄汚いやり方が、逆に闘争心を駆り立てた。
 もう出し惜しみはしない。
 触角先端付近に調整した偏向力場を展開し、光線を照射した。
 途端、目映い光線は触角付近で数十に分裂し様々な方向へと向かい、各々に蛮竜を貫き撃墜する。
 さながらその光景はあらゆる方向へと降る光の雨である。

「威力は落ちるが、広範囲の攻撃には有効だ」

 偏向力場は本来レーザーの収束や進行方向の変化に用いるが、うまく調節すればレーザーを拡散させて一度に広範囲に撒き散らすことも可能。
 それに敵の動きを読み調節して照射するため、拡散した光線の命中精度は高い。
 拡散ゆえに破壊力は低下するが、蛮竜をズタボロにして行動不能にするのには十分な威力である。
 そしてまた拡散レーザーを照射する、光の線が多方へと向かい無数の蛮竜を貫き大地へと叩きつけた。
 この攻撃はかなり有効だったらしく、一気に蛮竜の数が減少していく。

「へへ、さすがにここまでとは思ってなかったぜ」

 急激に蛮竜の数が減っていくなか、黒い蛮竜の薄笑いが聞こえた。
 焦ってるわけではない様子、おそらく怪獣との圧倒的な力の差を感じ笑う事しかできないのだろう。
 そして俺は負傷していた右目を瞬時に再生させ、その目を開き無数の蛮竜の中から黒い蛮竜を正確に捉えた。

「見つけたぞ」

 大量の蛮竜に紛れて身を隠していたつもりだろうが、俺には通用しない。
 正確に照準をつけてレーザーを照射し、黒い蛮竜の首をぶった切った。

「……がふぅ!」

 そして胴体は無視して血反吐を噴出しながら落下していく奴の頭を左手でキャッチした。
 これで後で直接脳から情報を引き出せる。

「これで引導をくれてやる!」

 あとは残りの蛮竜を叩くだけだ。俺は上空に顔を向け、大きく口を開き凄まじい音ともに黒い気体を放出する。
 このガスは俺が体内で生成しておいた特殊な液体爆薬。
 体内で密閉されている爆薬を沸点以上にまで加熱して高温高圧状態の液体にし、それを外界に放出すると一気に蒸発し凄まじい速度で広範囲に広がる。
 それは頭上に爆薬の蒸気雲となりはてた。
 ……そしてこいつを着火すると。
 上空に形成された巨大な蒸気雲に向け、レーザーを照射し着火させた。
 それは大規模な疑似気化爆弾と言えるだろう。
 紅蓮の炎と凄まじい爆音。
 辺りいったいが強烈な爆炎と爆風に飲み込まれた。
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