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超魔の目覚め
真実を知るには
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恐るべき淫具を紹介するカズヤを撃退した一党は、必要な物の買い物を終えて出店が並ぶ大きな広場に辿り着いた。
広場には日光を遮るパラソル付きのテーブルが無数に並び、そして多くの出店からは食欲そそる匂いが立ち込める。
肉が焼けるこうばしい香りや、甘味を思わせるものも漂う。
よく見かける食べものから、見たこともないようなものまで多種多様すぎる食の空間である。
もちろん、アサム達がなぜにここに来たかと言うと、腹拵えのためだ。
買い出しのために歩き続けたのだ、それなら腹も減るし、消耗した体力を回復させるためにも食事は重要であろう。
一つのテーブルを確保した彼等は、アリシアとミアナにテーブルと荷物と乳母車の番を任せ、レオを抱くアサムとウェルシ、それからハンナとスティアは料理の買い出しに向かうのであった。
ここは美食と珍味だらけの広場、空腹の女性陣達が目を輝かせて屋台に向かったのは言わずもがなだ。
「……」
しかしそれとは裏腹に、その少女達はどこか居心地悪そうな雰囲気をかもし出している。
……いや、そう感じているのはアリシアだけであろう。
「ふぅ、それにしても今日は暑いわぁ。やっぱり、ムラトが不在だからねぇ」
実際にミアナは落ち着いた様子で熱を払うように右手で首もとを扇ぎながら遠く南方を眺めているが、アリシアはあまり落ち着かず無意味かつ不自然に目を泳がせる。
御互い敵国の君主の護衛役だ。気まずいのは当然であろう。
ましてや会って、そんなに時間は経過してない。そんな関係もあって、すぐに打ち解けるなど難しいのは当然。
彼女達の現状況は、停戦であり終戦ではないのだから。
確かに敵意こそないが、ゆえに自然と警戒してしまう。
「そんなに警戒しなくても大丈夫よ。私達は今、敵同士じゃないから」
と、不意に口にしたのはミアナだった。
「今の私の仕事はレオ様を御守りすること、終戦にいたっていないとは言え、あなた達とここで面倒をおこす気はないわ」
「……そう」
南方を眺め続けるミアナに泳がせていた視線を移すとアリシアは戸惑いながら頷いた。
「ここはとても良いところよ」
そして今度は周辺に目を向けてミアナは会話を続ける。
「ここの人達は、種族とか国とかにとらわれず、みんなが隔たりなく暮らしてる。水も空気もいいし、美味しい食べ物もふんだん。なに不自由しないわ」
彼女の発言を証明するようにアリシアの目に写るのは、人も毛玉人も歪みなく楽しげに会話と食事を楽しむ光景だ。
今まで自分達が味わってきた、見苦しい国家間の問題による不仲、軟禁生活や過酷な旅路とは正反対の環境。
こんな土地で暮らすことができれば、どれだけ楽しかっただろうか。
「……私達もこんな風になれればよかったのにねぇ」
そしてアリシアは気弱に囁いて、テーブルに項垂れた。
バイナルとギルゲス、本来なら友好な国同士になれるはずだったのだ。
きっとそうなっていたら、ミアナともこんな重々しい雰囲気で対面することもなかったはず。
そして恐らくではあるが、国だって崩壊しなかったであろう。
「大丈夫よ、アリシア。分かってるから、なぜ私達が争う羽目になったのか、その原因はけしてあなた達にはない。あなた達だって、あの戦いは望んでいなかったことでしょ」
「……ミアナ」
ミアナの言葉に思わずアリシアは伏せていた顔をあげた。
彼女が真実を理解してることに、おのずと安堵し声が震えた。
「……ご、ごめんなさい。今はこれしか口にできない。それと、ありがとう」
自然と謝罪と礼を述べてしまう。
不本意とは言え戦争を始めてしまったことへの罪悪感とミアナがその真意を分かってくれていることへのありがたみに。
ゆえにか彼女へ向けていた警戒心が、わずかながらほどけた。
「……でも避難してきた住民達は今だに、あなた達に敵意を向けてる人も少なからずいる。あまり何も考えずに出歩くのも、よろしくないかもね」
そしてミアナは注意を呼び掛けた。
バイナル王国の住民達も誇りを持っている。ゆえに国を汚さないためにも下手な気は起こさないだろうが、しかしけして国民達を疑うわけでわないが万が一のことも考えての発言だった。
これ以上、国同士が不仲になるのは避けたいがゆえにだ。
それを聞いてアリシアは、ゆっくりと口を開いた。
「……私達は、そこまでバイナル王国の人達に恨まれているのね」
「あの戦争が原因でバイナル王国は崩壊したって、みんなそう考えているから」
そしてアリシアは恐る恐ると尋ねる。
「ミアナ、どうしてあなたの国は崩壊したの? サンダウロでの最後の戦いは互いに全滅したと私は聞いてるけど、それが関係しているのね」
アリシアは何も知らないのだ。軟禁生活で外部との情報は断たれていたから。
ただサンダウロでギルゲスとバイナルの戦力がとも倒れに至ったことは聞かされていたが……。
「……あなた達の国は蛮竜達の襲来で崩壊し、私達の国はゲーダー帝国の侵攻で壊滅したの」
そして少し間を置いてミアナは語りだした。
「バイナル王国、最高戦力である大魔導騎士がサンダウロで、ほぼ壊滅したことで防衛力が大きく低下したの。そしてその隙をつくように帝国軍が狂乱したように奇襲をしかけてきた、そしてまともに抵抗もできずに敗戦したわ」
ミアナは落ち着いて語るが、その目は悲しみと悔しさゆえにか、どこか哀愁を感じさせる。
「……帝国が?」
「そう。国王様も殺され、どうにかレオ様と一緒に逃げ延び、それで今にいたるわけ」
驚いた様子で見つめてくるアリシアに、悔いが残るようにミアナは力なく息を吐いて応じる。
「難しい関係ねぇ。もちろん、一番悪いのは私達の国の方だけれど」
ともにあまりにも国家の関係が複雑極まりない。
方や、侵攻された事が原因で別の国に占領され、その要因を作ったもう片方は危険生物に襲撃され国の機能が崩壊した、と言うわけなのだから。
「……でもどうしても、私はあの戦いについて腑に落ちないことがあるの」
アリシアがそう言うと、ミアナは彼女の顔を覗きこんだ。
「……腑に落ちないって?」
「あなたの国の精鋭である大魔導騎士隊が、私達の戦力と共倒れになった、ことが」
アリシアは姫の護衛を生業とする。つまりは戦士。
ゆえに戦力の差を測るくらいのことはできる。
バイナル王国の戦力は魔術に優れる者達を徹底的に鍛えあげた精鋭も精鋭、しかしギルゲスは魔術を有する者がほとんどいない原始的な飛竜に頼った兵士達。
「私の国の兵士達を悪く言うつもりはないけど、どう考えてもバイナル王国の方が遥かに戦力は上だった。。あの戦争は圧倒されて、私達は間違いなく敗戦すると思っていたの。……にも関わらず両軍全滅。あまりにも、おかしいことよ。どう考えてもギルゲスの戦力に騎士達を全滅させるほどの力はなかったはず」
そう言ってアリシアはミアナの顔に視線を向けた。
するとミアナは考え込むように目もとに手をやり、そして少し間を置いて決意したかのように目を見開いて口を開けた。
彼女はあの戦乱の事実を知る権利があるが?
「アリシア、両軍が共倒れになったと言う報せは、あの戦乱の最中におきた本当のことを揉み消すための捏造なの」
「……どう言うこと?」
応じてくるアリシアに、あの戦乱で何が起きたのか告げたいところだがミアナは押し黙った。
「……ごめん、今は説明できない。私一人だけで、この情報を開示する権限はないから」
「……じゃあ、誰に聞けば」
「それは、石カブト。彼等に聞いてみて……詳しいことは、お腹を満たしてからね」
と、ミアナは誰かが近づいて来るのを察知しアリシアの背後へと目を向ける。
「凄い量ねぇ」
彼女の視線の先にいたのは食事を購入してきたアサム達。
アサムはレオを抱いてるため、購入した物を持つのは自然とウェルシとハンナとスティアになるが、彼女達の手にしている量が凄まじい物であった。
ウェルシが持つ紙トレイには人数分の大容量のミルクセーキが乗っているが、ハンナとスティアは大量のハンバーガー、サンドイッチ、揚げたイモ、ピザ、など色々と両手で抱えていた。
「……あはは、どうしても食べたいそうなので」
さすがにこの量にはアサムも苦笑いを見せることしかできなかった。
「ハンナがねぇ」
「ハンナ様がぁ」
そして続けてウェルシとスティアが口を揃えた。
「……あのその、どうしてもお腹が空いちゃって、えっへへ」
ハンナは笑って誤魔化そうとするが、空腹を満たすではなく、ただ単に美味い物を片っ端から食いあさりたい欲求が見え見えであった。
広場には日光を遮るパラソル付きのテーブルが無数に並び、そして多くの出店からは食欲そそる匂いが立ち込める。
肉が焼けるこうばしい香りや、甘味を思わせるものも漂う。
よく見かける食べものから、見たこともないようなものまで多種多様すぎる食の空間である。
もちろん、アサム達がなぜにここに来たかと言うと、腹拵えのためだ。
買い出しのために歩き続けたのだ、それなら腹も減るし、消耗した体力を回復させるためにも食事は重要であろう。
一つのテーブルを確保した彼等は、アリシアとミアナにテーブルと荷物と乳母車の番を任せ、レオを抱くアサムとウェルシ、それからハンナとスティアは料理の買い出しに向かうのであった。
ここは美食と珍味だらけの広場、空腹の女性陣達が目を輝かせて屋台に向かったのは言わずもがなだ。
「……」
しかしそれとは裏腹に、その少女達はどこか居心地悪そうな雰囲気をかもし出している。
……いや、そう感じているのはアリシアだけであろう。
「ふぅ、それにしても今日は暑いわぁ。やっぱり、ムラトが不在だからねぇ」
実際にミアナは落ち着いた様子で熱を払うように右手で首もとを扇ぎながら遠く南方を眺めているが、アリシアはあまり落ち着かず無意味かつ不自然に目を泳がせる。
御互い敵国の君主の護衛役だ。気まずいのは当然であろう。
ましてや会って、そんなに時間は経過してない。そんな関係もあって、すぐに打ち解けるなど難しいのは当然。
彼女達の現状況は、停戦であり終戦ではないのだから。
確かに敵意こそないが、ゆえに自然と警戒してしまう。
「そんなに警戒しなくても大丈夫よ。私達は今、敵同士じゃないから」
と、不意に口にしたのはミアナだった。
「今の私の仕事はレオ様を御守りすること、終戦にいたっていないとは言え、あなた達とここで面倒をおこす気はないわ」
「……そう」
南方を眺め続けるミアナに泳がせていた視線を移すとアリシアは戸惑いながら頷いた。
「ここはとても良いところよ」
そして今度は周辺に目を向けてミアナは会話を続ける。
「ここの人達は、種族とか国とかにとらわれず、みんなが隔たりなく暮らしてる。水も空気もいいし、美味しい食べ物もふんだん。なに不自由しないわ」
彼女の発言を証明するようにアリシアの目に写るのは、人も毛玉人も歪みなく楽しげに会話と食事を楽しむ光景だ。
今まで自分達が味わってきた、見苦しい国家間の問題による不仲、軟禁生活や過酷な旅路とは正反対の環境。
こんな土地で暮らすことができれば、どれだけ楽しかっただろうか。
「……私達もこんな風になれればよかったのにねぇ」
そしてアリシアは気弱に囁いて、テーブルに項垂れた。
バイナルとギルゲス、本来なら友好な国同士になれるはずだったのだ。
きっとそうなっていたら、ミアナともこんな重々しい雰囲気で対面することもなかったはず。
そして恐らくではあるが、国だって崩壊しなかったであろう。
「大丈夫よ、アリシア。分かってるから、なぜ私達が争う羽目になったのか、その原因はけしてあなた達にはない。あなた達だって、あの戦いは望んでいなかったことでしょ」
「……ミアナ」
ミアナの言葉に思わずアリシアは伏せていた顔をあげた。
彼女が真実を理解してることに、おのずと安堵し声が震えた。
「……ご、ごめんなさい。今はこれしか口にできない。それと、ありがとう」
自然と謝罪と礼を述べてしまう。
不本意とは言え戦争を始めてしまったことへの罪悪感とミアナがその真意を分かってくれていることへのありがたみに。
ゆえにか彼女へ向けていた警戒心が、わずかながらほどけた。
「……でも避難してきた住民達は今だに、あなた達に敵意を向けてる人も少なからずいる。あまり何も考えずに出歩くのも、よろしくないかもね」
そしてミアナは注意を呼び掛けた。
バイナル王国の住民達も誇りを持っている。ゆえに国を汚さないためにも下手な気は起こさないだろうが、しかしけして国民達を疑うわけでわないが万が一のことも考えての発言だった。
これ以上、国同士が不仲になるのは避けたいがゆえにだ。
それを聞いてアリシアは、ゆっくりと口を開いた。
「……私達は、そこまでバイナル王国の人達に恨まれているのね」
「あの戦争が原因でバイナル王国は崩壊したって、みんなそう考えているから」
そしてアリシアは恐る恐ると尋ねる。
「ミアナ、どうしてあなたの国は崩壊したの? サンダウロでの最後の戦いは互いに全滅したと私は聞いてるけど、それが関係しているのね」
アリシアは何も知らないのだ。軟禁生活で外部との情報は断たれていたから。
ただサンダウロでギルゲスとバイナルの戦力がとも倒れに至ったことは聞かされていたが……。
「……あなた達の国は蛮竜達の襲来で崩壊し、私達の国はゲーダー帝国の侵攻で壊滅したの」
そして少し間を置いてミアナは語りだした。
「バイナル王国、最高戦力である大魔導騎士がサンダウロで、ほぼ壊滅したことで防衛力が大きく低下したの。そしてその隙をつくように帝国軍が狂乱したように奇襲をしかけてきた、そしてまともに抵抗もできずに敗戦したわ」
ミアナは落ち着いて語るが、その目は悲しみと悔しさゆえにか、どこか哀愁を感じさせる。
「……帝国が?」
「そう。国王様も殺され、どうにかレオ様と一緒に逃げ延び、それで今にいたるわけ」
驚いた様子で見つめてくるアリシアに、悔いが残るようにミアナは力なく息を吐いて応じる。
「難しい関係ねぇ。もちろん、一番悪いのは私達の国の方だけれど」
ともにあまりにも国家の関係が複雑極まりない。
方や、侵攻された事が原因で別の国に占領され、その要因を作ったもう片方は危険生物に襲撃され国の機能が崩壊した、と言うわけなのだから。
「……でもどうしても、私はあの戦いについて腑に落ちないことがあるの」
アリシアがそう言うと、ミアナは彼女の顔を覗きこんだ。
「……腑に落ちないって?」
「あなたの国の精鋭である大魔導騎士隊が、私達の戦力と共倒れになった、ことが」
アリシアは姫の護衛を生業とする。つまりは戦士。
ゆえに戦力の差を測るくらいのことはできる。
バイナル王国の戦力は魔術に優れる者達を徹底的に鍛えあげた精鋭も精鋭、しかしギルゲスは魔術を有する者がほとんどいない原始的な飛竜に頼った兵士達。
「私の国の兵士達を悪く言うつもりはないけど、どう考えてもバイナル王国の方が遥かに戦力は上だった。。あの戦争は圧倒されて、私達は間違いなく敗戦すると思っていたの。……にも関わらず両軍全滅。あまりにも、おかしいことよ。どう考えてもギルゲスの戦力に騎士達を全滅させるほどの力はなかったはず」
そう言ってアリシアはミアナの顔に視線を向けた。
するとミアナは考え込むように目もとに手をやり、そして少し間を置いて決意したかのように目を見開いて口を開けた。
彼女はあの戦乱の事実を知る権利があるが?
「アリシア、両軍が共倒れになったと言う報せは、あの戦乱の最中におきた本当のことを揉み消すための捏造なの」
「……どう言うこと?」
応じてくるアリシアに、あの戦乱で何が起きたのか告げたいところだがミアナは押し黙った。
「……ごめん、今は説明できない。私一人だけで、この情報を開示する権限はないから」
「……じゃあ、誰に聞けば」
「それは、石カブト。彼等に聞いてみて……詳しいことは、お腹を満たしてからね」
と、ミアナは誰かが近づいて来るのを察知しアリシアの背後へと目を向ける。
「凄い量ねぇ」
彼女の視線の先にいたのは食事を購入してきたアサム達。
アサムはレオを抱いてるため、購入した物を持つのは自然とウェルシとハンナとスティアになるが、彼女達の手にしている量が凄まじい物であった。
ウェルシが持つ紙トレイには人数分の大容量のミルクセーキが乗っているが、ハンナとスティアは大量のハンバーガー、サンドイッチ、揚げたイモ、ピザ、など色々と両手で抱えていた。
「……あはは、どうしても食べたいそうなので」
さすがにこの量にはアサムも苦笑いを見せることしかできなかった。
「ハンナがねぇ」
「ハンナ様がぁ」
そして続けてウェルシとスティアが口を揃えた。
「……あのその、どうしてもお腹が空いちゃって、えっへへ」
ハンナは笑って誤魔化そうとするが、空腹を満たすではなく、ただ単に美味い物を片っ端から食いあさりたい欲求が見え見えであった。
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