大怪獣異世界に現わる ~雇われ労働にテンプレはない~

轆轤百足

文字の大きさ
上 下
294 / 357
超魔の目覚め

食っちゃ寝してりゃ育つ

しおりを挟む
 昨晩から深夜にかけて激しい殺戮と戦闘があったとは思えないほどに、その日は良い天気である。
 夏が近いため多生なりの暑さはあるが、それも楽しめるぐらいの清々しさである。
 そんな下、電子音や地を掻く音が響いていた。
 テントを建て、機材等を運び終えた異形の姿の物達が各々に特殊な防護服と装置を片手に周囲を駆け回っている。
 日が登り数時間、超獣が爆砕された場所は今だに熱が残っているため調査はできないが、しかしやっとのこと周囲に近づくことができるまでに温度は低下していた。
 そして調査やヴァナルガンが投棄した金属物質の回収作業を行うそんな異星人達の現場から、だいぶ離れて一機の魔人が修理を施されている。

(この調子なら、あと数時間もすれば修理が終わるだろう)
「ほんと? 良かったよ、大事ない破損で」

 ハクラの言葉に応じるのは、米粒程度の作業ロボット達にまとわりつかれるクサマを見上げるナルミ。
 横たわるアイドリング状態の魔人の機体表面では無数の鈍色の蟻のように小さい作業員達が徘徊していた。
 これはシキシマの機体内工場に常駐している作業ロボット達で、破損や故障の修理や部品製造を行っている小型作業機械である。
 クサマの機体の所々で溶接が行われてるらしく、時折に火花が散った。

(『我等見参オラタチダー』は小型である分、細部まで点検・修理が可能だ。精密機器から内部機構まで、元通りにしてくれる)
「へぇ、すごい」

 ハクラの説明を聞いてナルミは感心したのか、修理現場を周回しては細部まで見やる。

「……でも、何だか」

 見方を変えると、さながら傷口に群がる虫の大群にも見えなくもないが。
 だが確かに修理は早く正確で細かい。
 そして自律機械のため不休での作業が可能で、高い持続力も備える。
 これならクサマの修理が短時間で終わる、と言えるのも十分に頷ける。

(それと修理ついでに、電源の増設作業も並行する。動力源が二つになることで出力パワーが増す)

 と、またナルミの頭の中にハクラの言葉が伝わる。

「性能が向上するって、ことだよね」
(ああ、今シキシマの機体内の工場で新型の蓄電池を製造しているからな。そいつをクサマに搭載する)

 ここ最近、強力な魔獣や超獣が頻繁に出現しているのだから性能向上は必須であるのは言うまでもなくだ。
 魔獣も超獣も、こうしてる間に戦闘能力を高めているのだから、こちらとてより強くならなければなるまい。

「よかったねぇクサマ、強くしてくれるって!」

 それを聞いたナルミは興奮して目を輝かせ、荒い鼻息をならす。
 さながら自分の子供の成長を楽しみにしている、ような心情なのかもしれない。




 ……修理と性能向上、それは何もクサマだけに施されているわけではない。
 いや、この場合は自力でそれに等しいことを行っていると、言えばよかろうか。
 みなが機械装置等を用いて作業に専念する最中、そこは……怪物的に巨大な熊だけは、異質すぎることをしていた。
 ビキッ、ブチッ、と言う靭帯や腱がちぎれる音。
 ガリッ、ゴリッ、と骨格が噛み砕かれる音。
 メリッ、ジュル、と新鮮な肉が咀嚼され鮮血がすすられる音。
 それらが入り交じる。

(……お前、生でもいける口なのか?)

 超人熊のその姿を観測していたのだろう、ハクラの声でない言葉がオボロに向けられる。

「好んで食いはしないが、食える時に、食える物を、食えるだけ食っておく。戦いを生業とするんなら、そんな消化器はらをしているべきだろ?」

 口元から真っ赤な液体を滴らせながらオボロは答えた。そして、また食糧にかぶりつく。

(……それは、そうかもしれんが)

 ハクラが観測しているものは、おそらく超人の食事風景……だがそれは食欲をそそるようなものではない。
 オボロの傍らには、巨兎おおうさぎ青毛猪あおげしし一骨角犀ものくろさい等の大型獣が何頭も山積みになっている。おそらくその総重量は数十トンにもおよぶだろう。
 どれもこれもが頭を叩き割られていたり、頚椎を捻り折られていた。
 超怪力を持つオボロに狩られたことが一目で分かるだろう。
 ……その獲物を焼いたり、煮たりせずに、胡座をかく超人熊は生肉なまで食しているのだ。
 噛み砕くたびに鮮血が飛ぶため、オボロの顔面と体は真っ赤にドロドロに汚れている。
 しかもかれこれ、もう数時間も食い続けているのだ。
 そんな食事風景である、とてもじゃないが食欲が誘われるわけがない。
 肉食系の毛玉人は生肉を食しても問題ないが、好む者は少なく、ましてやオボロのように大量に摂取する者はまずいない。

(……確かに俺やニオンもサバイバルの一端として、色々と悪食はしていたが、さすがに生ではなぁ)

 ニオンはゴブリンを黒焼きにしたり、そして自分はとある好奇心で初代魔王を補食した記憶がある。

(生食を見ていると……あの忌まわしい戦国の世を思い出す)

 そんな言葉など気にした風もなく、超人は大量の蛋白質を口に運び、体内に納めていく。
 まるで狩られた大型獣達が超生命体と同化していくようだ。

「やっぱり戦闘のあとは、たまらなく腹が減るぜぇ」

 赤黒いツヤツヤした生の肝臓をムシャムシャと噛みちぎりながら、オボロは獲物の山とは反対の方へと手を伸ばす。
 そこにはバケツ……いやオボロがデカイがためにその様に見えるだけであって、実際は異星人達が手配してくれた飲料水で満たされたドラム缶。
 それが数十缶も並んでおり、オボロその中の一つ(重量二〇〇キロ以上)を手にするとガボガボと一気に数百リットルの水を飲み干した。

(……あれだけの流血と負傷をしたのだから、当然だろう)

 オボロの異常的な食欲旺盛に、引きながらハクラは説明を繋げる。

(致命傷はないが、かなりの攻撃を受けて多大な損傷を負ったことには変わりない。傷を回復させるためにも、お前の肉体が大量の蛋白質や水分や滋養を求めているんだ)
「そうなのか。ならしっかり食って寝て、ケガを治さねぇとな」

 そうオボロは応じると、真っ赤な心臓を丸飲みにし、今度は大きな骨を掴んだ。
 そして、それをバキバキと雑巾を絞るように捻り折った。

「骨髄は造血器官、ここが栄養満点でめぇんだよなぁ。それを理解してる動物ってえのは、しぶとく生き延びれるもんだ」

 割れた骨を口に運ぶなり、大きな角砂糖を砕くような音がなった。
 対核装甲も食い破る牙と顎なのだ、今さら大型獣の骨など焼き菓子とかわらない。
 ……しかしいくらケガの回復とは言え、これほどの食糧が必要だろうか?

(超回復するために異常なまでに養分の補給が必要なのだろうが……)

 そう、違うのだ。
 オボロの肉体は、ただただ傷を回復しようとしてるわけではない。
 より強くなるために超回復に至ろうとしているのだ。
 鍛えて十分な栄養と休養を与えることで人は身体能力を向上させるもの。
 しかしオボロのそれは、超人ゆえにか規模が違いすぎるものなのだ。
 その繰り返しで骨格筋が増大していき、今の巨体になったわけだが……。

(……肉体の主成分が置き変わっていく)

 だがはたして、今回はただの超回復でおさまるのだろうか?




 太陽が天辺に到達し、早小半時約三十分
 午後になっても異星人達は調査に専念し、クサマは修理を継続中。
 そんな中、やることもなく飽きてきたのかナルミは周囲をトボトボと歩いていた。

「あーあ、暇だな」

 そう一人で呟いていると。

「ぐがあぁぁぁぁぁ!!」

 突如、やかましい音が響き渡った。
 音がした方に視線を向けると、なんとオボロが熟睡していた。
 獲物も飲料水も全て平らげたのだろう、大地には血黙りと無数のドラム缶が転がってるだけであった。

「うわぁ、内臓も骨も食べちゃったんだ」

 それにしても不思議である、あれほどの量がオボロの腹の中に全て収まったのだから。
 まるで冬眠前の野生動物のようである。
 そんな隊長の様子を伺おうと、ナルミは眠る超人にちかよった。
 ……と、いきなり眠るオボロから土を引っ掻くような音が鳴り出した。

「んっ? なに」

 思わずナルミは立ち止まる。
 そしてオボロの身に異変が起きてるのを感じた。

「……大きくなってく」

 ズリズリと土が削れる音。
 それはオボロが肥大して、大地を擦っている音であった。

(骨格筋が増幅してきている、食った蛋白質や水分が筋肉や血液に転化してきているんだ)

 不意にハクラの言葉が伝わってきた。

「じゃあ隊長は、また大きくなって強くなるの? それは良いことだけど、これ以上大きくなったら私生活が……」
(いやっ! 超回復それどころじゃない)

 ナルミの言葉を遮り、ハクラは驚愕したように言葉を続けた。

(肉体が根本的な領域から再構成されいく)
「……どう言うことなの?」
(オボロの体組織が作り変えられていく、と言うことだ。確かに体積や質量の増幅も並行しているが、これはもはや突然変異、いやっ世代を股がない進化とも言える)
「ん~、やっぱりよくわかんないよ」

 ハクラの説明が難解なのか、ナルミは頭をかいた。

(オボロに姿形と言った外面的な変化はあまりおきないが、内面的な部分が全く別の存在に至ろうとしている。つまりだな見た目は変わらんが、生命体として全く別の存在になると言うわけだ)  
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

―異質― 激突の編/日本国の〝隊〟 その異世界を掻き回す重金奏――

EPIC
SF
日本国の戦闘団、護衛隊群、そして戦闘機と飛行場基地。続々異世界へ―― とある別の歴史を歩んだ世界。 その世界の日本には、日本軍とも自衛隊とも似て非なる、〝日本国隊〟という名の有事組織が存在した。 第二次世界大戦以降も幾度もの戦いを潜り抜けて来た〝日本国隊〟は、異質な未知の世界を新たな戦いの場とする事になる―― 大規模な演習の最中に異常現象に巻き込まれ、未知なる世界へと飛ばされてしまった、日本国陸隊の有事官〝制刻 自由(ぜいこく じゆう)〟と、各職種混成の約1個中隊。 そこは、剣と魔法が力の象徴とされ、モンスターが跋扈する世界であった。 そんな世界で手探りでの調査に乗り出した日本国隊。時に異世界の人々と交流し、時に救い、時には脅威となる存在と苛烈な戦いを繰り広げ、潜り抜けて来た。 そんな彼らの元へ、陸隊の戦闘団。海隊の護衛艦船。航空隊の戦闘機から果ては航空基地までもが、続々と転移合流して来る。 そしてそれを狙い図ったかのように、異世界の各地で不穏な動きが見え始める。 果たして日本国隊は、そして異世界はいかなる道をたどるのか。 未知なる地で、日本国隊と、未知なる力が激突する―― 注意事項(1 当お話は第2部となります。ですがここから読み始めても差して支障は無いかと思います、きっと、たぶん、メイビー。 注意事項(2 このお話には、オリジナル及び架空設定を多数含みます。 注意事項(3 部隊単位で続々転移して来る形式の転移物となります。 注意事項(4 主人公を始めとする一部隊員キャラクターが、超常的な行動を取ります。かなりなんでも有りです。 注意事項(5 小説家になろう、カクヨムでも投稿しています。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

大絶滅 2億年後 -原付でエルフの村にやって来た勇者たち-

半道海豚
SF
200万年後の姉妹編です。2億年後への移住は、誰もが思いもよらない結果になってしまいました。推定2億人の移住者は、1年2カ月の間に2億年後へと旅立ちました。移住者2億人は11万6666年という長い期間にばらまかれてしまいます。結果、移住者個々が独自に生き残りを目指さなくてはならなくなります。本稿は、移住最終期に2億年後へと旅だった5人の少年少女の奮闘を描きます。彼らはなんと、2億年後の移動手段に原付を選びます。

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

処理中です...