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潜みし脅威
電磁魔人の力
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地形を変形させるほどの超高速鉄拳の激突を免れたオボロが最初に感じたのは、鼓膜が破れそうな轟音と浮遊感であった。
電磁魔人の重鉄拳の着弾の余波で周囲一帯の建物が吹き飛ばされ、粉々の瓦礫になりはてる。
そしてその凄まじい衝撃は、一トンを越えるオボロと言えども弾き飛ばされるほどであった。
「どわあぁぁぁ! であっ!!」
三メートルを越す巨体が宙を舞い、落下して地面に叩きつけられた。
オボロでなかったら間違いなく重症、最悪死んでいたであろう程の衝撃だっただろう。
「……いててて」
ムクリと巨躯を起こし、オボロはマグネゴトムの方へと目を向けた。
粉塵や砂煙に阻まれて、うまく全体は視認できないがゴーグルのごとき目を真っ赤に輝かせているのが分かる。
「ぺっぺっ! いったい何なんだ、この化け物は?」
口の中に入った砂を吐き出し顔を歪めた。
戦闘経験豊富なオボロから見ても、この怪物は異様な存在なのだ。
魔物の中にも特殊能力を持つ奴もいるが、超音速で体の一部を飛ばしてくるなど異常すぎる。
明らかに生物や魔物の範疇を凌駕している存在だ。
「……通常の攻撃の威力が、魔術どころじゃねぇぜ!」
それこそマグネゴトムの攻撃は人類の主力たる魔術をも上回っている。しかもそんな攻撃を普通に使ってくるのだから、厄介どころではない。
……そんな磁力の怪物が姿を見せたのは、一時間程前だっただろうか?
近隣の村や街を破壊しながら北上して、ゲン・ドラゴンに現れた。
そして短時間で都市はこの惨状となったのだ。
「ウオォォム」
マグネゴトムはその姿形に見あった無機質な鳴き声らしき音を発すると、発射した鉄拳を回収した。
強力な磁力で両拳部が引っ張り寄せられ、腕にガチャリとはめ込まれる。
そして、その巨体でズシリズシリと近寄ってきた。
「オボロ殿! 大事はありませんか?」
するとオボロのもとに美青年が駆けてきた。
しかし、そんな彼も重鉄拳の余波に巻き込まれたのだろう。顔色が悪く、口角から血を流していた。
「大したことはねぇが、このままだと不味いぞ」
事も無げな様子でオボロは返答した。その目からは今だに闘争心は消えていない。
「これ以上、戦いが長引くと都市は壊滅するぞ。もう一層のこと仕掛けるしかねぇ!」
戦っていた時間は、そう長くはない。しかし電磁魔人の破壊力が桁外れなため、短時間のうちに都市はこの有り様になってしまったのだ。
このままマグネゴトムに決定打を与えられず、戦いを引き延ばすとゲン・ドラゴンは壊滅してしまうだろう。
「しかし、迂闊に接近はできません。なにか戦術を考えないと……」
「そんな悠長なこと、してられるか! 被害と犠牲が増えるだけだ!」
なぜ、こんなにも二人が戦いに手こずっているのか?
それはニオンの発言を無視して、オボロが突っ込んだ時だった。
「バオォォムッ!」
突如マグネゴトムの全身に放電の火花が散る。
「いけないオボロ殿! ……くっ!」
思い切って接近するオボロとは真逆に、ニオンは一目散にその場から離れた。
そして電磁魔人から殺傷力を秘めた灼熱の領域が展開された。
「ぐおぉぉあぁぁぁぁ!!」
殺傷領域にいたオボロは強烈な圧迫感と灼熱感に襲われた。まるで肉体の内側から焼かれるような激痛であった。
「ぬがあぁぁぁ!!」
凄まじい苦痛でオボロは絶叫をあげる。
そして、その強靭な表皮が破れ身体中から血煙を噴出させた。
マグネゴトムが発した怪力線による結界で体の水分と言う水分が沸騰したのだ。
それに合わせて周囲に散らばっていた住民達の亡骸も膨れ上がり水風船のごとく弾けて臓腑をぶちまける。
「バオォム!」
そして電磁結界が解かれる。展開されていた時間は十秒程だが一瞬で生物を殺傷できる威力であった。
そんな空間の中では、どんな者も事切れるはず。
「……やってくれるぜ」
だが、そんは怪力線の洗礼を受けても……その男は倒れなかった。
体毛の一部は炭化、所々には重度の熱傷、そして全身からボタボタと血を流す巨体があった。
その負傷たるや重症どころではない。明らかに致命傷、と言うよりかは生きていること事態が異常。
しかしそれほどの傷を負っているにも関わらず、オボロはややふらつきながらも進み出る。
「ウオォォムッ!」
だが、そんな傷だらけの男に引導を渡さんとマグネゴトムは両手を組んで狙いを定めた。
発射されんとするは、またあの超高速鉄拳。
しかも今度は両手を組んだ状態での射出。その破壊力は……。
「ウオォォォム!!」
そして咆哮をあげた電磁魔人から、再び電磁加速を用いた超高速兵器が放たれた。
多大なダメージを受けて、動きが鈍っているオボロに回避はできなかった。
地形を変えるほどの高重量の運動エネルギー弾の着弾。燃えるゲン・ドラゴンは大音量と凄まじい揺れに飲み込まれた。
そして、オボロは押し潰されたようにクレーターと巻きあがる瓦礫と土壌の中に姿を消した。
「オボロ殿!!」
思わず叫んだのはニオン。
マグネゴトムから距離をとっていたため、電磁結界による殺傷効果は免れていた。
……しかし、今はオボロの心配をしてる場合ではない。そもそも、あんな攻撃を受けて無事だとはとても思えない。
「くっ! 今攻めなければ!」
ニオンは佇む電磁魔人を見上げる。
今のマグネゴトムは両手を切り離した状態。それに電磁結界の再使用には一分程の休止が必要、恐らく充電の時間だろう。
勝機があるとすれば、武器が使えない今であった。
鋼鉄の剣のみを手にして、ニオンは駆け出す。
粉々になった建物が散らばる中を、美剣士が速度を落とさず走る。彼の鍛え上げられた脚力があってこその俊足だ。
「狙うは脚か」
考えとしては電磁魔人の脚を破壊して転倒させることであった。そうすれば動きを大きく削ぐことができ、弱点を探る隙が得られる。
だがしかし、ニオンが手にしているのは普及品の鋼鉄製の剣一つのみ。
これだけで、強力な電磁石にも強固な装甲にもなる奴の金属の体を斬ることができるだろうか。
いや、やらなければならないのだ!
今は自分の剣術の技量にかけるしかない。
「連続で斬りつけて、削り取っていくしかないか」
マグネゴトムの右足に向かって一気に接近したニオンは、踝の辺り目掛け勢いのままに斬りつけた。
相手は巨大かつ強固なため小技のような小細工は通用しないだろう、ゆえに一撃で深く斬り込む力技を叩き込んだ。
しかし、何の手応えもなかった。
……確かに斬り込んだはずなのだが。
「こ、これは!」
ニオンは驚愕しながら手にしている刃を見つめた。
剣身がドロドロに融解して根元近くからなくなっていたのだ。
「……まさか、電磁装甲の一種か」
驚くべき防御システムであった。
マグネゴトムは体に大電流を巡らせることによって、ニオンの唯一の武器を融解せしめたのだ。
そして、剣を失った美剣士を踏み潰さんとマグネゴトムは右足を大きく振り上げた。
「ぬっ!」
すかさずニオンは跳躍して、巨大な足から繰り出された踏みつけを回避した。
推定五百トンからの一撃。地面を大きくへこませ、周囲を揺るがす。
「……どうしたものか」
ニオンはマグネゴトムから距離を取り、考えを巡らせる。
剣もなしに、この怪物を倒すにはどうすればいいものか……。
「や、やりやがったなぁ! こんちくしょおぉぉ!!」
すると突如、闘争心剥き出しの雄叫びが響き渡った。鼓膜がいかれそうな大声量で。
声が発せられたのは、今だにマグネゴトムの鉄拳が食い込んでいるクレーターからであった。
そして、その重々しい金属の両拳がゆっくりと動きだしたのだ。
電磁魔人の重鉄拳の着弾の余波で周囲一帯の建物が吹き飛ばされ、粉々の瓦礫になりはてる。
そしてその凄まじい衝撃は、一トンを越えるオボロと言えども弾き飛ばされるほどであった。
「どわあぁぁぁ! であっ!!」
三メートルを越す巨体が宙を舞い、落下して地面に叩きつけられた。
オボロでなかったら間違いなく重症、最悪死んでいたであろう程の衝撃だっただろう。
「……いててて」
ムクリと巨躯を起こし、オボロはマグネゴトムの方へと目を向けた。
粉塵や砂煙に阻まれて、うまく全体は視認できないがゴーグルのごとき目を真っ赤に輝かせているのが分かる。
「ぺっぺっ! いったい何なんだ、この化け物は?」
口の中に入った砂を吐き出し顔を歪めた。
戦闘経験豊富なオボロから見ても、この怪物は異様な存在なのだ。
魔物の中にも特殊能力を持つ奴もいるが、超音速で体の一部を飛ばしてくるなど異常すぎる。
明らかに生物や魔物の範疇を凌駕している存在だ。
「……通常の攻撃の威力が、魔術どころじゃねぇぜ!」
それこそマグネゴトムの攻撃は人類の主力たる魔術をも上回っている。しかもそんな攻撃を普通に使ってくるのだから、厄介どころではない。
……そんな磁力の怪物が姿を見せたのは、一時間程前だっただろうか?
近隣の村や街を破壊しながら北上して、ゲン・ドラゴンに現れた。
そして短時間で都市はこの惨状となったのだ。
「ウオォォム」
マグネゴトムはその姿形に見あった無機質な鳴き声らしき音を発すると、発射した鉄拳を回収した。
強力な磁力で両拳部が引っ張り寄せられ、腕にガチャリとはめ込まれる。
そして、その巨体でズシリズシリと近寄ってきた。
「オボロ殿! 大事はありませんか?」
するとオボロのもとに美青年が駆けてきた。
しかし、そんな彼も重鉄拳の余波に巻き込まれたのだろう。顔色が悪く、口角から血を流していた。
「大したことはねぇが、このままだと不味いぞ」
事も無げな様子でオボロは返答した。その目からは今だに闘争心は消えていない。
「これ以上、戦いが長引くと都市は壊滅するぞ。もう一層のこと仕掛けるしかねぇ!」
戦っていた時間は、そう長くはない。しかし電磁魔人の破壊力が桁外れなため、短時間のうちに都市はこの有り様になってしまったのだ。
このままマグネゴトムに決定打を与えられず、戦いを引き延ばすとゲン・ドラゴンは壊滅してしまうだろう。
「しかし、迂闊に接近はできません。なにか戦術を考えないと……」
「そんな悠長なこと、してられるか! 被害と犠牲が増えるだけだ!」
なぜ、こんなにも二人が戦いに手こずっているのか?
それはニオンの発言を無視して、オボロが突っ込んだ時だった。
「バオォォムッ!」
突如マグネゴトムの全身に放電の火花が散る。
「いけないオボロ殿! ……くっ!」
思い切って接近するオボロとは真逆に、ニオンは一目散にその場から離れた。
そして電磁魔人から殺傷力を秘めた灼熱の領域が展開された。
「ぐおぉぉあぁぁぁぁ!!」
殺傷領域にいたオボロは強烈な圧迫感と灼熱感に襲われた。まるで肉体の内側から焼かれるような激痛であった。
「ぬがあぁぁぁ!!」
凄まじい苦痛でオボロは絶叫をあげる。
そして、その強靭な表皮が破れ身体中から血煙を噴出させた。
マグネゴトムが発した怪力線による結界で体の水分と言う水分が沸騰したのだ。
それに合わせて周囲に散らばっていた住民達の亡骸も膨れ上がり水風船のごとく弾けて臓腑をぶちまける。
「バオォム!」
そして電磁結界が解かれる。展開されていた時間は十秒程だが一瞬で生物を殺傷できる威力であった。
そんな空間の中では、どんな者も事切れるはず。
「……やってくれるぜ」
だが、そんは怪力線の洗礼を受けても……その男は倒れなかった。
体毛の一部は炭化、所々には重度の熱傷、そして全身からボタボタと血を流す巨体があった。
その負傷たるや重症どころではない。明らかに致命傷、と言うよりかは生きていること事態が異常。
しかしそれほどの傷を負っているにも関わらず、オボロはややふらつきながらも進み出る。
「ウオォォムッ!」
だが、そんな傷だらけの男に引導を渡さんとマグネゴトムは両手を組んで狙いを定めた。
発射されんとするは、またあの超高速鉄拳。
しかも今度は両手を組んだ状態での射出。その破壊力は……。
「ウオォォォム!!」
そして咆哮をあげた電磁魔人から、再び電磁加速を用いた超高速兵器が放たれた。
多大なダメージを受けて、動きが鈍っているオボロに回避はできなかった。
地形を変えるほどの高重量の運動エネルギー弾の着弾。燃えるゲン・ドラゴンは大音量と凄まじい揺れに飲み込まれた。
そして、オボロは押し潰されたようにクレーターと巻きあがる瓦礫と土壌の中に姿を消した。
「オボロ殿!!」
思わず叫んだのはニオン。
マグネゴトムから距離をとっていたため、電磁結界による殺傷効果は免れていた。
……しかし、今はオボロの心配をしてる場合ではない。そもそも、あんな攻撃を受けて無事だとはとても思えない。
「くっ! 今攻めなければ!」
ニオンは佇む電磁魔人を見上げる。
今のマグネゴトムは両手を切り離した状態。それに電磁結界の再使用には一分程の休止が必要、恐らく充電の時間だろう。
勝機があるとすれば、武器が使えない今であった。
鋼鉄の剣のみを手にして、ニオンは駆け出す。
粉々になった建物が散らばる中を、美剣士が速度を落とさず走る。彼の鍛え上げられた脚力があってこその俊足だ。
「狙うは脚か」
考えとしては電磁魔人の脚を破壊して転倒させることであった。そうすれば動きを大きく削ぐことができ、弱点を探る隙が得られる。
だがしかし、ニオンが手にしているのは普及品の鋼鉄製の剣一つのみ。
これだけで、強力な電磁石にも強固な装甲にもなる奴の金属の体を斬ることができるだろうか。
いや、やらなければならないのだ!
今は自分の剣術の技量にかけるしかない。
「連続で斬りつけて、削り取っていくしかないか」
マグネゴトムの右足に向かって一気に接近したニオンは、踝の辺り目掛け勢いのままに斬りつけた。
相手は巨大かつ強固なため小技のような小細工は通用しないだろう、ゆえに一撃で深く斬り込む力技を叩き込んだ。
しかし、何の手応えもなかった。
……確かに斬り込んだはずなのだが。
「こ、これは!」
ニオンは驚愕しながら手にしている刃を見つめた。
剣身がドロドロに融解して根元近くからなくなっていたのだ。
「……まさか、電磁装甲の一種か」
驚くべき防御システムであった。
マグネゴトムは体に大電流を巡らせることによって、ニオンの唯一の武器を融解せしめたのだ。
そして、剣を失った美剣士を踏み潰さんとマグネゴトムは右足を大きく振り上げた。
「ぬっ!」
すかさずニオンは跳躍して、巨大な足から繰り出された踏みつけを回避した。
推定五百トンからの一撃。地面を大きくへこませ、周囲を揺るがす。
「……どうしたものか」
ニオンはマグネゴトムから距離を取り、考えを巡らせる。
剣もなしに、この怪物を倒すにはどうすればいいものか……。
「や、やりやがったなぁ! こんちくしょおぉぉ!!」
すると突如、闘争心剥き出しの雄叫びが響き渡った。鼓膜がいかれそうな大声量で。
声が発せられたのは、今だにマグネゴトムの鉄拳が食い込んでいるクレーターからであった。
そして、その重々しい金属の両拳がゆっくりと動きだしたのだ。
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