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最終魔戦
決闘
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目の前の巨漢が戦闘体勢に入ったことを理解すると、勇者は剣聖候補と賢者に指示をだした。
「ジュリは私と一緒に、ヨナは援護と補助を!」
「この熊、こらしめてやるわ」
「賢者の魔術を見せてあげますよ」
勇者一党も個々に戦闘体勢をとる。
そして、オボロは呟くように口を開いた。
「……始めていいのか?」
「いつでもきて」
勇者がそう言った瞬間だった、オボロの足下の地面が陥没した。その一撃は、見えなかった。
勇者一党は、いつの間にか空中を舞っていた。気づいたときには全身に激痛を感じ、上空十数メートルまで跳ね飛ばされていたのだ。
三人は、そのまま受身もとれず地面に落下した。
オボロは勇者一党に向かって突進しただけである。
「……ぐはっ!」
「がはっ!」
「ぐぅ!」
三人は、まともに声が出せなかった。
衝撃と呼吸ができない苦痛で、不様に地を這いずり回わる。
今まで、これほどの攻撃を受けたことがあろうか?
「……ま、まだよ……この熊を……地に……這いつくばらせる……までは」
ジュリは長剣を支えにして立ち上がるが、膝が振るえていた。頭皮を切ったらしく、彼女の顔面が真っ赤に濡れる。
一度攻撃を受けただけで、一党は総崩れであった。
「お嬢ちゃん、根性はあるようだな」
賞賛の言葉をかけると、オボロは彼女に目掛け鉄拳を放った。
「ジュリさん、危ない! 五重剛障壁!」
ヨナの詠唱により、ジュリとオボロの間に五重の強固な防御壁が形成される。
むろん賢者が行使した防御壁だ、一枚破壊するのだって至難である。
「だりゃぁ!!」
しかし、オボロは躊躇うことなく防御壁を殴り付けた。凄まじい音が響く。
「……ば、バカな」
ヨナは声を震わせた。
素手による攻撃で、三枚の防壁が粉砕されたのだ。四枚目にもクモの巣のような亀裂が入っている。
賢者の防壁を一枚砕くにしても、魔王とて安易なことではない。
しかし、それが三枚まとめて生身で破壊されたのだ。
「脆いぜ!」
オボロは拳を振り上げ、再びジュリ殴り付けようとした。これを食らえば間違いなく防壁は全て破壊され、ジュリに鉄拳がとどく。
「ジュリィィ!!」
叫びながらジュリを押し倒したのは勇者であった。防壁を粉砕したオボロの鉄拳が勇者の体を掠めた。オボロの高速の鉄拳は、そのまま地面に叩き込まれクレーターを作りあげる。
「……大丈夫、ジュリ?」
「ありがとう、ユウナ。助かった、ギリギリだったよ」
二人が会話していると、いきなり勇者ことユウナに巨大な脚が激突した。
オボロの蹴りはユウナを数十メートル先まで吹き飛ばす程に強力であった。それだけにおさまらず、彼女は樹木に激突した。
ユウナは、たまらず苦痛の声をあげた。
「があっ!」
「敵前で、お喋りしてる場合か?」
そう言って、オボロはジュリを見下ろした。
先程まで強気だったジュリは歯をカタカタとならし、身動きがとれなくなった。
剣聖候補ゆえに彼女は、かなりの修羅場を経験している。
しかし、そんな経験を忘れるほどの恐怖である。
「ジュリさん!」
彼女を正気に戻すためヨナは叫んだ。しかし時遅く。
巨大な手で掴まれたジュリは、いきおいよく地面に叩きつけられた。
オボロの投げは強烈無比。人型に大地が陥没し、ジュリは反動ではねあがり再び地に落下した。
「ぐっ……がはっ……ごほ」
体をビクビク痙攣させながら、ジュリは口腔から血を噴出させた。内臓にまでダメージが達していた。
勇者一党は、いまだに反撃ができていない。あまりにも一方的すぎる光景。
「……なによ。これじゃ戦いじゃないじゃない」
「さすがに、やりすぎだろ」
「ひでぇぜ、こりゃ」
住民達も、あまりの無惨さに小さく声をもらした。
その有り様に耐えられなくなったのか、ロランが声をあげる。
「師匠! やりすぎです! それ以上は……」
「黙っていろ、ロラン。この戦いを終わらせることができるのは勇者どもだ」
オボロは、そう吐き捨てると戦いに意識を戻す。そしてヨナに向かって歩を進めた。
「ストーン・バレット!」
するとヨナは攻撃魔術の詠唱を行い、高速の石弾をオボロに向けて放つ。
しかし、オボロは避けもせず石弾を拳で迎撃する。
ヨナの石弾もオボロの鉄拳には敵わず、粉々に砕け散った。
「……魔術をあんな風に迎撃するなんて、見たことがないよ。よくもジュリさんを……許しません!」
怒りに任せ、ヨナは魔術に集中していく。
空間中の魔粒子がオボロの頭上数十メートルの位置に凝縮されていく。
形成されたのは、質量が数千トンはありそうな巨大な岩であった。
「潰れてしまえ! タイタン・クラッシュ!」
ヨナが叫んだ瞬間、その大質量の塊がオボロに落下した。
激震が巡り、大地に亀裂が入った。
「……ぼく達を怒らせた、あなたが悪いんですよ……」
ヨナは巨大な岩を見据えた。大量の魔力を消費したらしく、息を荒げていた。
オボロは、ペシャンコになったと思われた。
ところが、目の前の巨岩が動きだしたのだ。
「……そ、そんな……ありえない」
ヨナは顔面蒼白になる。
彼だけではない、集落の人々もそれを見て顔をひきつらせた。
「……ふんぬぅ」
オボロは両腕で大質量の巨大岩を支えていたのだ。
そして、それを人がいないところへと放り投げた。それが大地に激突し、再び震動が襲った。
もはや、やっていることが人類の範疇ではなかった。
「賢者の坊っちゃんよぉ。集落の近くで、こんなあぶねぇ魔術を使うんじゃねぇよ」
そう言ってオボロは膝をつくヨナに詰め寄る。
そしてオボロは、その弱った少年の口の中に己の太い中指をねじ込んだ。
「ん゙んんん!」
口の中に丸太のような指を捩じ込まれたヨナは、言葉にならない苦痛の声をもらした。賢者の少年の口角が大きく裂けて血が流れ落ちる。
そしてオボロは曲げた指をヨナの上顎に引っ掻けて、彼を軽々持ち上げて宙吊りにした。
「ん゙! ん゙ん゙んんん!!」
上顎に全体重がかかり、ヨナはあまりの苦痛に喉から絶叫を鳴らした。
「ほれ、賢者の坊ちゃん、魔術の詠唱をしてみたらどうだ」
オボロが宙吊りのヨナにそう言っ時、無数の鋭い塊が駆け抜けた。
「痛でっ!」
いくつもの氷の槍が、オボロの背中に突き刺さった。しかし痛みだけを訴えるあたり、貫けたのは薄皮だけなようだ。
その氷の矢を放ったのは、ふらふらと佇むユウナであった。オボロの蹴りのダメージが残っているのだろう、彼女は立っているのも辛そうな様子である。
「ほう、さすがに良い拵えの鎧だな。勇者さんよぉ」
「この鎧を纏っていなかったら、あなたに蹴られたとき死んでたよ」
「……展性合金と超弾力材による複合装甲だな。対衝撃には中々の代物だ」
「随分詳しいんだね」
「まあな、むろん弱点も分かるぜ」
オボロはヨナの口から指を抜き取り、体の向きをユウナに向ける。ヨナはバタリと大地に倒れこみ、口元を押さえながらうずくまった。
オボロに目を向けられて、ユウナの背中に冷や汗が伝う。
先程放った氷の槍は強力な魔術である。
普通、生身で受けて無事でいられるようなものではない。だがオボロには、ほとんどダメージがなかった。
「アイス・ジャベリン!」
ユウナが叫ぶと彼女の周囲に多数の魔方陣が出現し、そこから氷の槍が放たれた。
かなりの速度で、間をあけず次々と鋭利な氷が放たれてゆく。
だがオボロはそんなことは気にせず、真正面から氷の槍に向かって突っ込んだ。
オボロは氷の槍に被弾しまくるが、やはりその強靭な肉体にまともなダメージが入らない。彼の皮膚を多少裂く程度の傷しか与えられてないのだ。
ユウナは氷の槍を放つことを止めると剣を構えた。マガトクロム合金の上等な代物。
「魔術がダメなら、これで!」
ユウナは跳躍して、突っ込んでくるオボロの頭目掛け剣を降り下ろした。
しかし刃の部分を鷲掴みにされ受け止められた。
「は、はなせぇ!」
どれ程の力で握っているのか、剣を引いても押してもビクともしない。
そしてオボロは一気に握力が強めた。
彼女の愛剣の刃が砕け散った。
ユウナは言葉を失った。もはや勇者の常識が通用していない。
魔王を倒すための術が効かないと言うことは、目の前にいる巨漢は魔王以上の存在であることを意味する。
「終わりだ、勇者様よぉ」
オボロは、彼女を脚払いで転倒させた。
そして起き上がってくる前に、鎧ごしにユウナの胴体を踏みつけた。
そのまま体重を乗せて彼女の体に圧力を加えていく。
「ぐっ……がぁ……」
苦しみのあまりユウナは、ひどい声を発した。
一トンを軽々越える男に踏まれているのだ。強烈な圧迫である。
「お前が纏っている鎧は瞬間的な衝撃には強い。だがな、こんなふうに圧迫してやる攻撃には弱いんだよ」
オボロは踏みつける足に体重をさらに加えた。メリッと言う音が響いた。
ユウナの胸骨と肋骨が砕けたのだ。彼女の目は充血し、毛細血管が破裂したのか口と鼻から血が流れ出てきた。
「……負け……です……許し……て」
かすかではあったがユウナが負けを宣言した。
オボロは、しっかりとそれを聞き取っていたらしく、ゆっくりと彼女から足をどかしたのであった。
「ジュリは私と一緒に、ヨナは援護と補助を!」
「この熊、こらしめてやるわ」
「賢者の魔術を見せてあげますよ」
勇者一党も個々に戦闘体勢をとる。
そして、オボロは呟くように口を開いた。
「……始めていいのか?」
「いつでもきて」
勇者がそう言った瞬間だった、オボロの足下の地面が陥没した。その一撃は、見えなかった。
勇者一党は、いつの間にか空中を舞っていた。気づいたときには全身に激痛を感じ、上空十数メートルまで跳ね飛ばされていたのだ。
三人は、そのまま受身もとれず地面に落下した。
オボロは勇者一党に向かって突進しただけである。
「……ぐはっ!」
「がはっ!」
「ぐぅ!」
三人は、まともに声が出せなかった。
衝撃と呼吸ができない苦痛で、不様に地を這いずり回わる。
今まで、これほどの攻撃を受けたことがあろうか?
「……ま、まだよ……この熊を……地に……這いつくばらせる……までは」
ジュリは長剣を支えにして立ち上がるが、膝が振るえていた。頭皮を切ったらしく、彼女の顔面が真っ赤に濡れる。
一度攻撃を受けただけで、一党は総崩れであった。
「お嬢ちゃん、根性はあるようだな」
賞賛の言葉をかけると、オボロは彼女に目掛け鉄拳を放った。
「ジュリさん、危ない! 五重剛障壁!」
ヨナの詠唱により、ジュリとオボロの間に五重の強固な防御壁が形成される。
むろん賢者が行使した防御壁だ、一枚破壊するのだって至難である。
「だりゃぁ!!」
しかし、オボロは躊躇うことなく防御壁を殴り付けた。凄まじい音が響く。
「……ば、バカな」
ヨナは声を震わせた。
素手による攻撃で、三枚の防壁が粉砕されたのだ。四枚目にもクモの巣のような亀裂が入っている。
賢者の防壁を一枚砕くにしても、魔王とて安易なことではない。
しかし、それが三枚まとめて生身で破壊されたのだ。
「脆いぜ!」
オボロは拳を振り上げ、再びジュリ殴り付けようとした。これを食らえば間違いなく防壁は全て破壊され、ジュリに鉄拳がとどく。
「ジュリィィ!!」
叫びながらジュリを押し倒したのは勇者であった。防壁を粉砕したオボロの鉄拳が勇者の体を掠めた。オボロの高速の鉄拳は、そのまま地面に叩き込まれクレーターを作りあげる。
「……大丈夫、ジュリ?」
「ありがとう、ユウナ。助かった、ギリギリだったよ」
二人が会話していると、いきなり勇者ことユウナに巨大な脚が激突した。
オボロの蹴りはユウナを数十メートル先まで吹き飛ばす程に強力であった。それだけにおさまらず、彼女は樹木に激突した。
ユウナは、たまらず苦痛の声をあげた。
「があっ!」
「敵前で、お喋りしてる場合か?」
そう言って、オボロはジュリを見下ろした。
先程まで強気だったジュリは歯をカタカタとならし、身動きがとれなくなった。
剣聖候補ゆえに彼女は、かなりの修羅場を経験している。
しかし、そんな経験を忘れるほどの恐怖である。
「ジュリさん!」
彼女を正気に戻すためヨナは叫んだ。しかし時遅く。
巨大な手で掴まれたジュリは、いきおいよく地面に叩きつけられた。
オボロの投げは強烈無比。人型に大地が陥没し、ジュリは反動ではねあがり再び地に落下した。
「ぐっ……がはっ……ごほ」
体をビクビク痙攣させながら、ジュリは口腔から血を噴出させた。内臓にまでダメージが達していた。
勇者一党は、いまだに反撃ができていない。あまりにも一方的すぎる光景。
「……なによ。これじゃ戦いじゃないじゃない」
「さすがに、やりすぎだろ」
「ひでぇぜ、こりゃ」
住民達も、あまりの無惨さに小さく声をもらした。
その有り様に耐えられなくなったのか、ロランが声をあげる。
「師匠! やりすぎです! それ以上は……」
「黙っていろ、ロラン。この戦いを終わらせることができるのは勇者どもだ」
オボロは、そう吐き捨てると戦いに意識を戻す。そしてヨナに向かって歩を進めた。
「ストーン・バレット!」
するとヨナは攻撃魔術の詠唱を行い、高速の石弾をオボロに向けて放つ。
しかし、オボロは避けもせず石弾を拳で迎撃する。
ヨナの石弾もオボロの鉄拳には敵わず、粉々に砕け散った。
「……魔術をあんな風に迎撃するなんて、見たことがないよ。よくもジュリさんを……許しません!」
怒りに任せ、ヨナは魔術に集中していく。
空間中の魔粒子がオボロの頭上数十メートルの位置に凝縮されていく。
形成されたのは、質量が数千トンはありそうな巨大な岩であった。
「潰れてしまえ! タイタン・クラッシュ!」
ヨナが叫んだ瞬間、その大質量の塊がオボロに落下した。
激震が巡り、大地に亀裂が入った。
「……ぼく達を怒らせた、あなたが悪いんですよ……」
ヨナは巨大な岩を見据えた。大量の魔力を消費したらしく、息を荒げていた。
オボロは、ペシャンコになったと思われた。
ところが、目の前の巨岩が動きだしたのだ。
「……そ、そんな……ありえない」
ヨナは顔面蒼白になる。
彼だけではない、集落の人々もそれを見て顔をひきつらせた。
「……ふんぬぅ」
オボロは両腕で大質量の巨大岩を支えていたのだ。
そして、それを人がいないところへと放り投げた。それが大地に激突し、再び震動が襲った。
もはや、やっていることが人類の範疇ではなかった。
「賢者の坊っちゃんよぉ。集落の近くで、こんなあぶねぇ魔術を使うんじゃねぇよ」
そう言ってオボロは膝をつくヨナに詰め寄る。
そしてオボロは、その弱った少年の口の中に己の太い中指をねじ込んだ。
「ん゙んんん!」
口の中に丸太のような指を捩じ込まれたヨナは、言葉にならない苦痛の声をもらした。賢者の少年の口角が大きく裂けて血が流れ落ちる。
そしてオボロは曲げた指をヨナの上顎に引っ掻けて、彼を軽々持ち上げて宙吊りにした。
「ん゙! ん゙ん゙んんん!!」
上顎に全体重がかかり、ヨナはあまりの苦痛に喉から絶叫を鳴らした。
「ほれ、賢者の坊ちゃん、魔術の詠唱をしてみたらどうだ」
オボロが宙吊りのヨナにそう言っ時、無数の鋭い塊が駆け抜けた。
「痛でっ!」
いくつもの氷の槍が、オボロの背中に突き刺さった。しかし痛みだけを訴えるあたり、貫けたのは薄皮だけなようだ。
その氷の矢を放ったのは、ふらふらと佇むユウナであった。オボロの蹴りのダメージが残っているのだろう、彼女は立っているのも辛そうな様子である。
「ほう、さすがに良い拵えの鎧だな。勇者さんよぉ」
「この鎧を纏っていなかったら、あなたに蹴られたとき死んでたよ」
「……展性合金と超弾力材による複合装甲だな。対衝撃には中々の代物だ」
「随分詳しいんだね」
「まあな、むろん弱点も分かるぜ」
オボロはヨナの口から指を抜き取り、体の向きをユウナに向ける。ヨナはバタリと大地に倒れこみ、口元を押さえながらうずくまった。
オボロに目を向けられて、ユウナの背中に冷や汗が伝う。
先程放った氷の槍は強力な魔術である。
普通、生身で受けて無事でいられるようなものではない。だがオボロには、ほとんどダメージがなかった。
「アイス・ジャベリン!」
ユウナが叫ぶと彼女の周囲に多数の魔方陣が出現し、そこから氷の槍が放たれた。
かなりの速度で、間をあけず次々と鋭利な氷が放たれてゆく。
だがオボロはそんなことは気にせず、真正面から氷の槍に向かって突っ込んだ。
オボロは氷の槍に被弾しまくるが、やはりその強靭な肉体にまともなダメージが入らない。彼の皮膚を多少裂く程度の傷しか与えられてないのだ。
ユウナは氷の槍を放つことを止めると剣を構えた。マガトクロム合金の上等な代物。
「魔術がダメなら、これで!」
ユウナは跳躍して、突っ込んでくるオボロの頭目掛け剣を降り下ろした。
しかし刃の部分を鷲掴みにされ受け止められた。
「は、はなせぇ!」
どれ程の力で握っているのか、剣を引いても押してもビクともしない。
そしてオボロは一気に握力が強めた。
彼女の愛剣の刃が砕け散った。
ユウナは言葉を失った。もはや勇者の常識が通用していない。
魔王を倒すための術が効かないと言うことは、目の前にいる巨漢は魔王以上の存在であることを意味する。
「終わりだ、勇者様よぉ」
オボロは、彼女を脚払いで転倒させた。
そして起き上がってくる前に、鎧ごしにユウナの胴体を踏みつけた。
そのまま体重を乗せて彼女の体に圧力を加えていく。
「ぐっ……がぁ……」
苦しみのあまりユウナは、ひどい声を発した。
一トンを軽々越える男に踏まれているのだ。強烈な圧迫である。
「お前が纏っている鎧は瞬間的な衝撃には強い。だがな、こんなふうに圧迫してやる攻撃には弱いんだよ」
オボロは踏みつける足に体重をさらに加えた。メリッと言う音が響いた。
ユウナの胸骨と肋骨が砕けたのだ。彼女の目は充血し、毛細血管が破裂したのか口と鼻から血が流れ出てきた。
「……負け……です……許し……て」
かすかではあったがユウナが負けを宣言した。
オボロは、しっかりとそれを聞き取っていたらしく、ゆっくりと彼女から足をどかしたのであった。
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