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日常と裏家業
二人の危機
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エリンダ様から石カブトの真実を聞かされて、俺は考えこんでいた。
その内容が、あまりにも信じがたいものだったからだ。しかし、冗談を言っているとは思えない。
……この幻想的な世界で、そんなことがありえるのだろうか。
とにかく、隊長が帰ってきたら詳しく聞いてみるしかないだろう。
エリンダ様の研究施設から帰ってきて一時間位たっただろうか。
俺はベーンと一緒に本部の傍らで、日の光を浴びていた。ベーンはひなたぼっこのつもりだろうが、俺にとって太陽熱は活動エネルギーの供給になる。
……日に日にと俺は怪獣の体に馴染んでいってるようだ。それと同時に不安にもなる。
そのうち思考まで怪獣化してしまうのではないかと……。いずれに人間の意思を保てなくなるときが来るのではないかと。
よくよく考えると、今の脳髄は俺のものではない怪獣のものだ。だからこそ、俺の意思や記憶はいずれ怪獣の意思に飲まれてしまうのではないかと思ってしまうのだ。
もし、そうなればこの世界も破壊しつくされてしまうのだろうか?
と、その時だった。いきなり頭上から羽ばたく音が聞こえた。
それは桃色の体毛に覆われた竜。
「ムラト様! 助けてください!」
トウカだ。彼女はリズリと一緒に空の散歩にいっていたはず、近隣を巡り終えて帰ってきたのだろうか。
しかし彼女一匹だけ、リズリやアドバ隊長の姿が無い。
彼等はどうしたのだろうか?
それに彼女は相当に焦っている様子だ。
あきらかに、なにか大変なことがあったようだ。
「どうしたんだ、トウカ?」
「ドラゴンハンターが! ……リズリくんとアドバ様が、私を逃がすために……」
「ドラゴンハンター?」
ドラゴンハンターが何なのか分からない俺のもとにナルミがやって来た。騒ぎを聞き付けたのだろうか。
「ドラゴンハンターは竜を強奪したり密猟したりする、ならず者だよ。そもそも野生の竜を無理矢理に人間社会に引き入れるのは、法的に違反にされているの」
つまり竜達を売り物にする犯罪集団みたいなものか。
……かく言うナルミも俺の勧誘時にわがままを言って、半場強引に俺を引き入れようとしていたと思うが。まあ、ヤケクソで俺が受け入れる形になったがな。
とは言えそのあと俺は十分に納得したし、今になってはむしろありがたいと思っている。
そして俺は彼女を見下ろし訪ねる。
「アドバ隊長でも手に負えない奴等なのか、ドラゴンハンターは?」
「ちがうよ、ドラゴンハンターは対竜用の装備を持っているはず。ムラトやベーンじゃ行っても駄目だよ。あたしが助けにいく!」
「あっ! まて、落ち着けナルミ」
冷静さを欠いて、駆け出そうとしたナルミを制止させた。
竜のみに効果的な道具を持った連中か。いずれにせよ奴等は集団だのはず、まず敵の数を把握しなければな。
「トウカ、ハンター共は何人ぐらいだ?」
「二十人はいたと思います。早くしないとリズリくん達が、連れ去られてしまいます……」
二十人か。ナルミを止めて正解だった。
けして彼女を見くびっているわけではないが、ナルミ一人では無理があるかもしれん。
やはり俺がいくべきだ。
「ナルミ。俺がいく、お前は待っていろ」
「なに言ってるの! ドラゴンハンターの前じゃ竜は……」
しゃがんでナルミを見つめた。
気持ちは分かるが、一人で二十人も相手にするにはナルミでも厳しいだろう。それに相手側の実力も未知数なのだから。
迂闊に突っ込むと、以前の盗賊と戦ったときのようになりかねない。
「大丈夫だ。俺に任せておけ、リズリとアドバ隊長は必ず連れて帰ってくる」
「ムラト……。ごめんね、あたしが弱いばっかりに……」
「落ち込むな。お前は、十分に俺達の力になっているし、弱いなどとは思ってない。お前には、お前の強みがあるからな。……こんな時で悪いかもしれんが、俺専用のたわし作ってくれて、ありがとな。改めて礼を言っておく」
ナルミは十分みんなのために役に立っている。
情報収集能力や画期的な物を作ってくれたりと、色々とやってくれている。
ナルミは凄い子だ、全員それは理解しているはずだ。
「トウカ。俺の頭に乗れ、道案内を頼む」
「わ、わかりました」
トウカは俺の頭に乗ると人化した。
俺の頭の上は不慣れなためか、彼女は触角に抱きついてきた。
二つの柔らかいものが当たってるが、気にしてる場合じゃない。
「フゲェェ」
ん? こいつ、いつの間に登ったんだ?
知らぬ間にベーンが触角にぶら下がっていたのだ。
何か言っているようだな?
「ドラゴンハンターはなぶり殺しにしないと、と言っています」
今はトウカがベーンの言葉を通訳してくれる。
なぶり殺し? 何かドラゴンハンターに恨みでもあるのだろうか。
まあいい今は時間がない。
しょうがないのでベーンをぶら下げたまま駆け出した。
八万トンを超える巨体が動き出したので、ナルミは震動でその場でしゃがみこんだ。
「気を付けてねぇー!」
「ああ! 必ず戻る!」
しゃがみこんだままのナルミの声に返事をして、全力で脚を動かす。
急がなくては! とにかくトウカから伝えられた方向に猛進する。木々も岩も、はてには魔物さえも構わず粉砕しながら突き進んだ。
その内容が、あまりにも信じがたいものだったからだ。しかし、冗談を言っているとは思えない。
……この幻想的な世界で、そんなことがありえるのだろうか。
とにかく、隊長が帰ってきたら詳しく聞いてみるしかないだろう。
エリンダ様の研究施設から帰ってきて一時間位たっただろうか。
俺はベーンと一緒に本部の傍らで、日の光を浴びていた。ベーンはひなたぼっこのつもりだろうが、俺にとって太陽熱は活動エネルギーの供給になる。
……日に日にと俺は怪獣の体に馴染んでいってるようだ。それと同時に不安にもなる。
そのうち思考まで怪獣化してしまうのではないかと……。いずれに人間の意思を保てなくなるときが来るのではないかと。
よくよく考えると、今の脳髄は俺のものではない怪獣のものだ。だからこそ、俺の意思や記憶はいずれ怪獣の意思に飲まれてしまうのではないかと思ってしまうのだ。
もし、そうなればこの世界も破壊しつくされてしまうのだろうか?
と、その時だった。いきなり頭上から羽ばたく音が聞こえた。
それは桃色の体毛に覆われた竜。
「ムラト様! 助けてください!」
トウカだ。彼女はリズリと一緒に空の散歩にいっていたはず、近隣を巡り終えて帰ってきたのだろうか。
しかし彼女一匹だけ、リズリやアドバ隊長の姿が無い。
彼等はどうしたのだろうか?
それに彼女は相当に焦っている様子だ。
あきらかに、なにか大変なことがあったようだ。
「どうしたんだ、トウカ?」
「ドラゴンハンターが! ……リズリくんとアドバ様が、私を逃がすために……」
「ドラゴンハンター?」
ドラゴンハンターが何なのか分からない俺のもとにナルミがやって来た。騒ぎを聞き付けたのだろうか。
「ドラゴンハンターは竜を強奪したり密猟したりする、ならず者だよ。そもそも野生の竜を無理矢理に人間社会に引き入れるのは、法的に違反にされているの」
つまり竜達を売り物にする犯罪集団みたいなものか。
……かく言うナルミも俺の勧誘時にわがままを言って、半場強引に俺を引き入れようとしていたと思うが。まあ、ヤケクソで俺が受け入れる形になったがな。
とは言えそのあと俺は十分に納得したし、今になってはむしろありがたいと思っている。
そして俺は彼女を見下ろし訪ねる。
「アドバ隊長でも手に負えない奴等なのか、ドラゴンハンターは?」
「ちがうよ、ドラゴンハンターは対竜用の装備を持っているはず。ムラトやベーンじゃ行っても駄目だよ。あたしが助けにいく!」
「あっ! まて、落ち着けナルミ」
冷静さを欠いて、駆け出そうとしたナルミを制止させた。
竜のみに効果的な道具を持った連中か。いずれにせよ奴等は集団だのはず、まず敵の数を把握しなければな。
「トウカ、ハンター共は何人ぐらいだ?」
「二十人はいたと思います。早くしないとリズリくん達が、連れ去られてしまいます……」
二十人か。ナルミを止めて正解だった。
けして彼女を見くびっているわけではないが、ナルミ一人では無理があるかもしれん。
やはり俺がいくべきだ。
「ナルミ。俺がいく、お前は待っていろ」
「なに言ってるの! ドラゴンハンターの前じゃ竜は……」
しゃがんでナルミを見つめた。
気持ちは分かるが、一人で二十人も相手にするにはナルミでも厳しいだろう。それに相手側の実力も未知数なのだから。
迂闊に突っ込むと、以前の盗賊と戦ったときのようになりかねない。
「大丈夫だ。俺に任せておけ、リズリとアドバ隊長は必ず連れて帰ってくる」
「ムラト……。ごめんね、あたしが弱いばっかりに……」
「落ち込むな。お前は、十分に俺達の力になっているし、弱いなどとは思ってない。お前には、お前の強みがあるからな。……こんな時で悪いかもしれんが、俺専用のたわし作ってくれて、ありがとな。改めて礼を言っておく」
ナルミは十分みんなのために役に立っている。
情報収集能力や画期的な物を作ってくれたりと、色々とやってくれている。
ナルミは凄い子だ、全員それは理解しているはずだ。
「トウカ。俺の頭に乗れ、道案内を頼む」
「わ、わかりました」
トウカは俺の頭に乗ると人化した。
俺の頭の上は不慣れなためか、彼女は触角に抱きついてきた。
二つの柔らかいものが当たってるが、気にしてる場合じゃない。
「フゲェェ」
ん? こいつ、いつの間に登ったんだ?
知らぬ間にベーンが触角にぶら下がっていたのだ。
何か言っているようだな?
「ドラゴンハンターはなぶり殺しにしないと、と言っています」
今はトウカがベーンの言葉を通訳してくれる。
なぶり殺し? 何かドラゴンハンターに恨みでもあるのだろうか。
まあいい今は時間がない。
しょうがないのでベーンをぶら下げたまま駆け出した。
八万トンを超える巨体が動き出したので、ナルミは震動でその場でしゃがみこんだ。
「気を付けてねぇー!」
「ああ! 必ず戻る!」
しゃがみこんだままのナルミの声に返事をして、全力で脚を動かす。
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