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国家動乱
決着
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ギルドマスターが従属体に殴られ地面を転げた、その事態にいち早く気づいたのはオボロであった。
「いかんっ! グンジの奴、頭に血が上ってやがる。ムラト、オレをグンジの近くにぶん投げろ」
「……グンジ? ギルドマスターのことですか。大丈夫ですか隊長、そんな無茶して」
「良いから早く投げろ! ここで、あいつに死んでもらっちゃあ困る」
彼は偽者の国王の協力者ではあったが、死んで良い人ではない。オボロもムラトもそれは分かっている。
ムラトは頭の上にいるオボロをつまみとり、加減してぶん投げた。
……それは、まさに熊ロケット。
王都の中央部である城から投擲されたオボロは、一直線に飛んでいく。そして、またたくまにグンジや冒険者達が守りについている王都の東側に到達した。
そしてオボロは凄まじい空気抵抗のなか上手く体勢を変え、勢いのままにグンジに近寄っていた従属体のデカイ頭にドロップキックをぶちかました。
運動エネルギー兵器と化したオボロの威力は凄まじく、蹴られた従属体は遠くまで吹き飛んで民家に激突した。あくまでもオボロの強靭な肉体と身体能力があってこそできる荒業だろう。
「頭を冷やせグンジ! 綺麗な奥さんと可愛い娘を残して、死ぬんじゃねえぞ!」
「……オボロ? すまない。すべて片付いたら、一緒に酒でも飲まないか?」
「そいつは良いねぇー。だったら、とっととゴミ掃除だ!」
オボロはグンジに手を差しのべ立たせると、自分達を囲む従属体に目を向ける。
オボロは丸腰だが武器など必要ない。生物史最古の武器である筋肉が従属体を襲う。
オボロは前方にいる従属体の顔面を殴り付けた。体重一トンを越える巨体からの鉄拳は強烈、従属体の頭は粉々に弾け飛び周囲に肉片や脳髄を勢いよくぶちまける。
そして別の個体が襲いかかってくると、その従属体と手四つで組み合った。
「なめるんじゃねぇ、化け物がぁ!」
手四つでの力競べに軍配が上がったのはオボロであった。彼は自慢の腕力に任せ、従属体を地面に向かって押し潰したのだ。そして胴体が二つ折りになった従属体の頭を踏み砕いて生命活動を停止させた。
その腕力は、たやすく異形共の体を破壊してしまうほどに凄まじいものだった。
「傭兵時代と変わってないな!」
「お前もギルドマスターになって楽していたと思ったが、全然衰えていない」
二人は互いに褒め合った。
少し前までは互いに敵対していたが、今はそんなことどうでもよいのだ。
今は協力して、この戦いを終わらせるのみ。ただそれだけであった。
防衛はうまくいってるらしく、ナルミがいる北のところまでに従属体は達していない。それに従属体の数も徐々に減りつつある。状況は少しづつではあるが、良くなってきているようだ。
だが本命が近づきつつあった。
× × ×
広場の地の底で巨大な何かがあがき回っている。俺は触角でそれを察知した。……おそらく成獣だ。
従属体が少なくなってきたためか、あるいは空腹のためか。成獣が地をかき分けながら地表に出ようとしているのが分かった。
「メガエラ様。変わり果てているでしょうが、王妃様が来たようです」
魔力を多く消費して疲労していた彼女は立ち上がれるまでに落ち着いたらしく、転げ回る偽者の国王を怒りと憎しみをこめて蹴りつけたり踏みつけたりしていた。可愛い見た目とは裏腹に、やってることは荒々しい。
満足するまで続けさせてやりたいが、今は母親の現状を受け入れさせる必要がある。
メガエラ様は浮遊魔術を唱えると、ふわりと自分の体を上昇させ、直接俺の頭の上に降り立った。魔力が少ないためか、足下がやや覚束ない様子だ。
凄まじい地鳴りと共に従属体達が這い出ていた穴が盛り上がった。
そして大量の土煙をまといながら、巨大かつ醜悪な生物が地下から姿を現す。異形の成獣と化した王妃様が。
「は、母上。……あれが母上?」
お姫様が、おぞましく感じるのも仕方ない。
今の王妃様の姿は、胴体が乳房のような器官で埋め尽くされた巨大な芋虫かナマコを思わせるような姿になっている。
頭部には青白く引きつった表情をした女の顔、体の天辺あたりからは無数の黒と黄色の斑模様の触手が生えており、その先端は鋭利になっていた。
全長約八十メートル、高さ約五十メートル。魔物と比較にならない程の巨体と醜悪さ。
「キイィィヤアァァ!!」
成獣は甲高い女性の悲鳴のような咆哮をあげると背中の触手を伸ばし、それを周囲に散らばる死体に突き刺し始めた。従属体に生きながら内臓を喰われて果てた人々が次々と触手に拐われていく。
ご丁寧にも触手は突き刺したあと、かえしが飛び出す機能があるらしい。死体が抜け落ちないようになっていた。
そして成獣の尻の部分に口のような器官が出現し、そこに突き刺した亡骸を次々と放り込んでいく。子供の喰い残しを親が処理しているようだ。
エネルギーを摂取したためか、女の顔部分の下顎が左右に裂け、嘔吐するように従属体を産み落とし始めた。
このまま動き回れては不味いため俺はすぐさま産み出されたばかりの従属体の頭をレーザーで穿つ。
尻から食物を摂取し、口から子供を産むなど異常な光景だ。
「メガエラ様、よろしいですね?」
俺は彼女に苦渋の決断を迫る。
今の王妃様のことを考えれば楽にしてやるのが一番だろう。
おそらく、もうどうすることもできないはずだ。
「頼む……お前なら、今の母上を止められるはずだ。殺してくれ……」
「……しっかり掴まっていてください」
お姫様が俺の頭に水滴をこぼしたのを合図に、城の一部を粉砕しながら城下に向けて駆け出した。
王都すべてが凄まじい振動に包まれた。
「グゴオォォォ!!」
成獣の注意をこちらに向かせるため、周囲の建物の窓が割れるほどの雄叫びをあげた。
ニオン副長と騎士団の活躍により、南の広場周囲には人は残っていない。従属体共だけだ。
これで存分にやれる。
「キイィガアァァ!!」
成獣も咆哮すると、俺の体に触手を突き刺そうと勢いよく伸ばしてきた。
「無駄だ!」
触手はすべて俺の表皮に弾かれた。熱核攻撃にも耐えたこの肉体にそんなものが通用するはずがない。
そしてレーザーでなぎ払い、触手すべてを焼き切る。これで奴は丸腰だ。
俺は接近し、胴体の前方にある女の顔を鷲掴みにして引き千切り投げ捨てた。絶叫が遠くに消えていく。
頭の上にメガエラ様がいるので長期戦にするつもりはない。異形獣が巨体と言っても、俺から見ればまだ小さい。
その小さい乳房まみれの胴体に右手の爪を叩き込む。一気に肘近くまで潜り込んだ。
「内臓が俺の腕に絡み付いてくるぜ。喰った人たちの亡骸返してもらうぞ」
そして左手も胴体に突き入れ、左右に無理矢理こじ開けた。
異形獣の肉体は大きく裂けて、内臓や体液や汁、そして今まで食したであろう人々の骸が勢い良く飛び出してきた。
「いかんっ! グンジの奴、頭に血が上ってやがる。ムラト、オレをグンジの近くにぶん投げろ」
「……グンジ? ギルドマスターのことですか。大丈夫ですか隊長、そんな無茶して」
「良いから早く投げろ! ここで、あいつに死んでもらっちゃあ困る」
彼は偽者の国王の協力者ではあったが、死んで良い人ではない。オボロもムラトもそれは分かっている。
ムラトは頭の上にいるオボロをつまみとり、加減してぶん投げた。
……それは、まさに熊ロケット。
王都の中央部である城から投擲されたオボロは、一直線に飛んでいく。そして、またたくまにグンジや冒険者達が守りについている王都の東側に到達した。
そしてオボロは凄まじい空気抵抗のなか上手く体勢を変え、勢いのままにグンジに近寄っていた従属体のデカイ頭にドロップキックをぶちかました。
運動エネルギー兵器と化したオボロの威力は凄まじく、蹴られた従属体は遠くまで吹き飛んで民家に激突した。あくまでもオボロの強靭な肉体と身体能力があってこそできる荒業だろう。
「頭を冷やせグンジ! 綺麗な奥さんと可愛い娘を残して、死ぬんじゃねえぞ!」
「……オボロ? すまない。すべて片付いたら、一緒に酒でも飲まないか?」
「そいつは良いねぇー。だったら、とっととゴミ掃除だ!」
オボロはグンジに手を差しのべ立たせると、自分達を囲む従属体に目を向ける。
オボロは丸腰だが武器など必要ない。生物史最古の武器である筋肉が従属体を襲う。
オボロは前方にいる従属体の顔面を殴り付けた。体重一トンを越える巨体からの鉄拳は強烈、従属体の頭は粉々に弾け飛び周囲に肉片や脳髄を勢いよくぶちまける。
そして別の個体が襲いかかってくると、その従属体と手四つで組み合った。
「なめるんじゃねぇ、化け物がぁ!」
手四つでの力競べに軍配が上がったのはオボロであった。彼は自慢の腕力に任せ、従属体を地面に向かって押し潰したのだ。そして胴体が二つ折りになった従属体の頭を踏み砕いて生命活動を停止させた。
その腕力は、たやすく異形共の体を破壊してしまうほどに凄まじいものだった。
「傭兵時代と変わってないな!」
「お前もギルドマスターになって楽していたと思ったが、全然衰えていない」
二人は互いに褒め合った。
少し前までは互いに敵対していたが、今はそんなことどうでもよいのだ。
今は協力して、この戦いを終わらせるのみ。ただそれだけであった。
防衛はうまくいってるらしく、ナルミがいる北のところまでに従属体は達していない。それに従属体の数も徐々に減りつつある。状況は少しづつではあるが、良くなってきているようだ。
だが本命が近づきつつあった。
× × ×
広場の地の底で巨大な何かがあがき回っている。俺は触角でそれを察知した。……おそらく成獣だ。
従属体が少なくなってきたためか、あるいは空腹のためか。成獣が地をかき分けながら地表に出ようとしているのが分かった。
「メガエラ様。変わり果てているでしょうが、王妃様が来たようです」
魔力を多く消費して疲労していた彼女は立ち上がれるまでに落ち着いたらしく、転げ回る偽者の国王を怒りと憎しみをこめて蹴りつけたり踏みつけたりしていた。可愛い見た目とは裏腹に、やってることは荒々しい。
満足するまで続けさせてやりたいが、今は母親の現状を受け入れさせる必要がある。
メガエラ様は浮遊魔術を唱えると、ふわりと自分の体を上昇させ、直接俺の頭の上に降り立った。魔力が少ないためか、足下がやや覚束ない様子だ。
凄まじい地鳴りと共に従属体達が這い出ていた穴が盛り上がった。
そして大量の土煙をまといながら、巨大かつ醜悪な生物が地下から姿を現す。異形の成獣と化した王妃様が。
「は、母上。……あれが母上?」
お姫様が、おぞましく感じるのも仕方ない。
今の王妃様の姿は、胴体が乳房のような器官で埋め尽くされた巨大な芋虫かナマコを思わせるような姿になっている。
頭部には青白く引きつった表情をした女の顔、体の天辺あたりからは無数の黒と黄色の斑模様の触手が生えており、その先端は鋭利になっていた。
全長約八十メートル、高さ約五十メートル。魔物と比較にならない程の巨体と醜悪さ。
「キイィィヤアァァ!!」
成獣は甲高い女性の悲鳴のような咆哮をあげると背中の触手を伸ばし、それを周囲に散らばる死体に突き刺し始めた。従属体に生きながら内臓を喰われて果てた人々が次々と触手に拐われていく。
ご丁寧にも触手は突き刺したあと、かえしが飛び出す機能があるらしい。死体が抜け落ちないようになっていた。
そして成獣の尻の部分に口のような器官が出現し、そこに突き刺した亡骸を次々と放り込んでいく。子供の喰い残しを親が処理しているようだ。
エネルギーを摂取したためか、女の顔部分の下顎が左右に裂け、嘔吐するように従属体を産み落とし始めた。
このまま動き回れては不味いため俺はすぐさま産み出されたばかりの従属体の頭をレーザーで穿つ。
尻から食物を摂取し、口から子供を産むなど異常な光景だ。
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今の王妃様のことを考えれば楽にしてやるのが一番だろう。
おそらく、もうどうすることもできないはずだ。
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お姫様が俺の頭に水滴をこぼしたのを合図に、城の一部を粉砕しながら城下に向けて駆け出した。
王都すべてが凄まじい振動に包まれた。
「グゴオォォォ!!」
成獣の注意をこちらに向かせるため、周囲の建物の窓が割れるほどの雄叫びをあげた。
ニオン副長と騎士団の活躍により、南の広場周囲には人は残っていない。従属体共だけだ。
これで存分にやれる。
「キイィガアァァ!!」
成獣も咆哮すると、俺の体に触手を突き刺そうと勢いよく伸ばしてきた。
「無駄だ!」
触手はすべて俺の表皮に弾かれた。熱核攻撃にも耐えたこの肉体にそんなものが通用するはずがない。
そしてレーザーでなぎ払い、触手すべてを焼き切る。これで奴は丸腰だ。
俺は接近し、胴体の前方にある女の顔を鷲掴みにして引き千切り投げ捨てた。絶叫が遠くに消えていく。
頭の上にメガエラ様がいるので長期戦にするつもりはない。異形獣が巨体と言っても、俺から見ればまだ小さい。
その小さい乳房まみれの胴体に右手の爪を叩き込む。一気に肘近くまで潜り込んだ。
「内臓が俺の腕に絡み付いてくるぜ。喰った人たちの亡骸返してもらうぞ」
そして左手も胴体に突き入れ、左右に無理矢理こじ開けた。
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