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第145話「少年は深淵を覗く②」
しおりを挟む六月十二日(日)十五時四十八分 埼玉県大宮市・某カラオケボックス
おいおいおいおいマジかよ?
俺に歌わせるのかよ?(当然だ。)
俺の歌声なんて放送禁止レベルだぜマジで。
ボエ‟~って効果音つくこと請け合いだぜ?
「シュウ君はちなみにいつもどんな曲歌ってるの?」
言えない。
アニソンとかインディーズバンドとか誰も知らないような曲ばっか歌ってるなんて言えない……。
しかも友達同士だともうネタにしてるけど、初めて行った人の前では「今日は喉の調子が悪い」とか言い訳かまして音痴誤魔化してる(誤魔化せてない)とか言えない……。
「あ、いや、あははー」
くそ、どうする⁉
どうするんだよ⁉
……このまま続きはウェブで的展開に出来ればこの上なく楽なのだがそうは問屋も卸さないだろうし、頼みの綱の嵐山は便所行ったきり戻ってこねぇし、うんこかあいつ?
こうなったらあいつがうんこ捻り出し切るまで時間を稼ぐしか……。
「んー?」
純朴なまりあさんと目が合った。
……出来ない。
そんなこすい真似、この人には出来ない……。
こうなったらやるしかない!
地獄のリサイタルの始まりだっ‼
力強くデンモクを握りしめ、ペンを持つ。
瞬間、視界にまりあさんの空のコップがよぎった。
瞬時に状況把握、俺のコップも空だし、なんなら嵐山の飲み物も無くなってる。
「あ、みんな飲み物無いね。」
「えっ? あ、ほんとだ。ごめんなさい、気付かなかった。」
「いやいや全然! 俺、入れてくるよ! 午●の紅茶でいいよね?」
なぜか謝るまりあさんからコップを(奪い)取り、三人分のコップを持って足早に室内を出る。
まりあさん、普段は気が利きすぎるくらいなのに……よっぽど楽しかったんだろうなぁ。
なのに俺は…俺は……。
「はぁー……」
階段を降りつつ、思わず長い溜息。
「やっちまったぁ……」
逃げちまったよ。
せっかく覚悟決めたのに……。
どうしてこうも逃げるかな。
まぁ、この隙に嵐山がうんこから戻ってきてれば……
「……いや、駄目だな。それじゃあ、駄目だ。」
俺が歌を拒否り続ければ、少なからずまりあさんに不快な思いを与えてしまう。
駄目だろそんなん。
まりあさんには今日という日を全力で楽しんでもらいたいんだ。
だから、今度こそ決めよう、覚悟。
嵐山がうんこし終わってたとしても、次こそは俺が歌うぞ。
トイレ横のドリンクバーに到着。
片方の機械からまりあさんの午●の紅茶を入れつつ、同時にもう片方の機械から俺のメロンソーダを入れる。
嵐山には神室スペシャル(コーラカルピスウーロンハイ)をプレゼントだな。
両手に三本のコップを持って階段を上がる。
しかし、そうなると何を歌うべきか。
デンモクの検索機能で人気ランキング一位の歌を歌っとけばいいかな?
多分知らない曲だろうが、音痴だから知ってようが知らなかろうが大差ないだろ。
いや、それとも解放するか?
アニソンを超えたアニソン———キャラソンを!
これは勇気がいるぞ。
なんせ、アニソンだったら有名なの歌っとけばまぁ盛り上がれるが、キャラソンなんてまず耳にすることねぇからな。
積極的にオタッキーな人でもなければまずノってこれない。
嵐山はアニメなんて見ないだろうし、まりあさんだって見てたとしてもそんな深く浸かったりはしないだろう。
普通に考えれば大怪我もんだが、しかし相手はまりあさん。
優しい女神様で、かつ、ズレてる節がある。
もしかしたら、逆にウケるかもしれないのだ。
賭けるか?
今日、まりあさんが楽しめてるのはほとんど嵐山のおかげだ。
残念ながら俺は何もできちゃいない。
一発ぐらいかまさないと。
勝負もせずに失敗しないよりは、失敗のリスクを負って成功を掴んだ方がいいだろ!
「あとは、覚悟を決めるのみ……あ、着いちゃった。」
覚悟が決まる前に部屋の前まで戻ってきてしまった。
いや、覚悟が決まんなくてもやるんだよ!
嵐山のコップを脇に抱えて空いた片手でドアのノブを捻ろうとしたその時。
「いや…ちょっと! やめてくださ…モガッ」
「っ⁉」
まりあさんの声⁉
襲われてる⁉
何の根拠もなく瞬時に思考し、コップをぶん投げドアを力任せに開ける。
「な………」
腕を足を二人の男に押さえ込まれたまりあさん。
その前に立ってる、ズボンを脱ぐ直前の男。
そして、少し離れた所からカメラを向ける男。
根拠はなかったが、現実はあった。
四人の男が、まりあさんに襲い掛かっていた。
「なにやってんだてめぇらぁ‼」
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