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第115話「他者、あるいは自己が巨大な生物によって呑み込まれる事象に覚える性的興奮の授業②」
しおりを挟む六月五日(日)九時九分 真希老獪人間心理専門学校・一年教室
先生が運んできた、台車に乗った物体を指さす。
「なんですかこれ?」
黒光りする、妙に艶っぽい布のような物。
なんだか嫌な予感がするぞ。
「たとえば胃袋とか小腸とか。」
なんともなしに答える先生。
胃袋⁉ 小腸⁉
何の生き物の⁉
「あははー。たとえばだよー。別に本物ってわけじゃない。これなんて、神室くんも見たことあるんじゃない?」
そう言って、先生は黒光りする物体を掴み上げる。
つやつやした布地に、一部分だけ小さな穴が開いてる物体。
なんだこれ?
「バキュームベッドですね。」
そう答えたのは、俺ではなくまりあ様。
麗しくも後ろ手を組んでお立ちになられている。
「そう。人を中に入れて、空気を抜いて拘束するプレイ用の袋さ。AⅤでも見かけるでしょ? 拘束した女の子に悪戯したりする。」
ああ、そういや見たことあるな。
圧縮した袋で身動き取れなくなった女の子をこちょばしたり触ったりイかせたりぶっかけたり……。
で、まりあ様はなんで知ってるの?
「これが胃袋とか小腸?」
恐る恐る、バキュームベッドを触る木梨さん。
「うん。今からねー。」
そう言って、先生はバキュームベッドを床に広げ、教卓を端に動かし始めた。
「みんなも、机とか隅っこに寄せちゃってー。」
言われて、各々訳も分からずに机を移動していく。
何をする気なんだ?
こっちの不安を他所に、先生は台車からさらに透明なビニールのようなものだったり、掃除機だったり、よくわかんない、ノズルのついた機械だったりを準備していく。
「あの、先生? 今から何する気なんですか?」
「言っただろ? 今から君たちには丸呑み捕食体験をしてもらうって。」
空間のできた教室の真ん中で道具を広げつつ先生は答える。
「これから君たちには、胃袋なんかの消化器官に見立てたこの袋の中に数分間入ってもらう。その時に抱いた感情を報告し合うっていう、非常にアカデミックな授業さ。」
あれ、なんだ。
その程度か。
嫌な予感がしたから、もっと酷い事でも起こるんじゃないかと思ってたが。
なんだか拍子抜け——
「じゃあみんな、準備してもらうの忘れちゃってたんだけど、ちょっとジャージに着替えてきてもらえるかなー。」
ジャージ。
学校指定のジャージか。
しかし、ただ布の中に入るだけなのになぜ着替える必要が?
動きやすいからか?
言われた通り、各々寮へと向かう。
男子寮と女子寮は分かれており(当然だ)、途中で男女それぞれに別れて移動する。
「後金もだけど、木梨さんもまりあ様も寮住まいなんだね。」
「ここの関係者は大体寮住まいだからなー。教職員含めて。」
歩きながらメガネを直す後金。
「高校はどう通ってんだ?」
下田先生は俺らを送り迎えしてくれてるし。
「俺は伴裂先生に送ってもらってる。」
「なんだよそれ⁉」
保健の女教師に送り迎えだと⁉
羨ましい死ね!
「そんな羨ましいこともねぇぞ?」
片眉を下げ、後金は溜息まじりに言う。
「ほら、伴裂先生、あんな感じだから……こっちの精神持ってかれそうで。」
「あー。」
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「しかし、そろそろお前がここに来て一か月近く経ちそうだってのに、知らないこと結構あるよな。気付いてたか? 俺とお前、部屋隣同士なんだぜ。」
「えっ。マジ?」
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「お前すげぇよな。めっちゃ頻繁に聞こえてくるぞ。どんだけハイペースでオナニーしてんだよ。」
「やめろよぉ! 人のプライバシーだぞ⁉」
恥ずかしいだろ!
これからその事気にしてオナニーできなくなったらどうすんだよ⁉
……多分大丈夫だけど。
「まぁ、それが俺の【変態性】だからな。
全く悪びれもしない後金。
そして、ジャージに着替え、再び教室へ向かう。
みんなはもう教室に戻ってきていて、先生はなにやら洗面器で透明な謎の液体をこねくり回していた。
……再び嫌な予感がしてきた。
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