黄昏に縋るは妖異の闇夜

影臣

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 酒呑童子編

 仕事はする

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「さて、小間使いも去ったことだし。慈烏、報告を頼めるか」

鬼面に頼まれた甘味類を河童面の小間使いが運び込んだ後、猿渡は集まっている配下のみで報告会をおこなうことにした。

「ふぁい」
「いいよ。また、甘味が無くなるまではここにいてあげる」

茨目と言うまとめ役口煩い鬼が所用で戻らなくなってからは、甘味を口に運びながらの少々緊迫感にかける議会となっているが、猿渡が司会進行役に回り、いつも言葉が足りない慈烏の言ったことを、犬塚が補う形で進めていくことになっている。


「今回の現場と犯行は?」
「ん、森林、同じ手口」
「今回のも含めるとこれで八件目の被害ですよね。全く、犯人は何がしたいんだか」

この西の領域で近頃、繰り広げられている凄惨な殺人事件。現場に残されているのは無惨にも切り捨てられた胴体のみ。頭部は必ずと言ってもいい程、毎回のように犯人が現場から持ち去る。

普通なら妖怪達は人の世に溶け込んで生きているのだが、襲われたとき本来の姿に戻り応戦しようとしたのか人の姿に化けてはいなかった。その為残された身体には鬼特有の特徴が見られたことから、顔がなくとも被害者を絞ることが出来た。


今回の事件、確実に狙われているのは鬼なのだと。


「だが、妖怪を滅するあの一族が動き出した訳では無いんだろ?」
「そもそも、手口、違う」
「神立一族は滅することを目的とした一族ですからね。完膚なきまでに滅するか、滅しきれなくても封じの一族に造らせたカラクリに封じ込めて御仕舞い。そもそも現場に遺体など遺しません」
「犯人、手口、杜撰ずさん
「そうか、誰だろうな……こんな馬鹿げた事を始めた奴は」

同族である鬼が、ましてや罪状もないただの鬼が狙われ続ける状況を見過ごせないと茨目は率先して人里まで調査しに下りていった。

(あちらからの手掛かりも、現状を知らせる便りすらない)

犯行が行われるのは決まって雨の日。その為、犯行が発覚したときには現場に残っていた血痕も足跡も洗い流され何一つ残っていない。手掛かりが少ないのだ……正直、行き詰まっている。

「まあ、その辺のことはこっちで詳細をまとめて上に提出しておくから、慈烏は上空から、犬塚は地上から引き続き調査を頼む」
「解散?」
「なら、余った甘味は全部食べちゃっても良いですよね。もう誰も手をつけませんよね、持ち帰っても構いませんよね、ね!」
「あー、食ってもいいから。それ終わったらこの仕事やってこい」

早々に立ち去ろうとする面々を引き止め、足元に散乱した紙の束から付箋をはって分けておいた依頼書を押し付ける。

「拠点防衛……と、情報収集?」
「えー、討伐は暴れられるから良いですけど、お偉いさんを目的地まで護衛って何。こう言うの苦手だって知ってるでしょ?」
「お前、慈烏が壊滅的な方向音痴だって知ってるだろ」
「ヤタガラスなのにね。でも、慈烏じゃなくても紅蓮とか……」
「鬼面の手作りの菓子」
「お任せください!」

ぼそりと呟き褒美をちらつかせれば、犬は容易く食い付いた。以前なら犬猿の……とまでいかないが、反発し合い口論に発展していたが、毎回こうだと扱いやすく、助かるのだが。

(本格的に残ってくれないだろうか……鬼面は)


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