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酒呑童子編
苛立ち
しおりを挟む鬼童丸の館に招かれたのは二週間前。
ふざけた遊びを提案したものだとヘドを吐きそうになったが耐えた。ようやく父親へ繋がる手掛かりが得られると狗を同伴させ参加したのに、手渡された手掛かりは紙切れ一枚。意味も分からぬ言葉の羅列。苛立ちを募らせていた時に気分転換の一貫として墓参りに赴いた際、偶然裏切りの巫女と出会ったのが一週間前。運が巡ってきた事に感謝しながら、わざと足元に紙切れを落として拾わせ、食い付いた所を利用した。
しかし、駒は突如姿を消した。首の行方や父に繋がる手掛かりも何も伝えぬまま。
「狗、あの者はどないしたん?」
「それがさぁ~、おかしいんだよ。あれから数日間くらいは匂いを嗅ぎとれたんだけど……途中、雨降っただろ。あの頃から何も分からなくなったんだ」
「家には」
「戻って無いみたい。もしかして喰われたのかもよ、妖怪に」
「なら、今こそ酒呑の妖気を辿れんの」
元になった匂いは巫女のお陰で分かった。あれと酷似したものを探せと命じたが、何度探っても巫女に辿り着き、酒呑の元には辿り着かなかった。
「だから無理なんだって。酒呑はあの一族に力をやったんだろ?本人の妖力は微弱になってるだろうし、残ってても嗅ぎとれないよ」
「何故譲ったと言えるん?奪われたのかもしれんやろ」
今日で十三日目。明日が最終日となるのに。
(手掛かりがないと、役立たずが)
「あと、調べてって言われてたけど調べないのか?」
調べるといっても所詮は口約束。社交辞令のようなものだ。あの場ではそう口にしたが、こうなってくるとあの者の足取りをつかむためにも先祖の事を調べなければならない。
そう考えたとき、不意に扉を叩く音がした。耳を傾けてみれば、か細い女の声。それは自分に付けられた小間使いであった。
「失礼します、真朱様。鬼童丸様より外出の許可がおりました」
いちいち承諾を取らねば外にも出れない。わざわざ館に来てから付けられた河童の面をした小間使い。まるで監視されている様で胸糞悪い。これではまるで鳥籠の鳥のようだ。
「ずいぶん時間がかかったなぁ」
「とある参加者様の行動を諌めるために時間をとりまして……」
「そう言えばさ、他の参加者と会わないよね」
「妨害や情報の探り合い等の過剰な干渉による混乱を防ぐために、時間帯などの調節を行っていますので」
(用意周到だこと)
「どうされますか?このまま外出されますか?それとも時間の指定が御座いましたら後程、声をかけさせていただきますが……」
「時間が惜しぃ、このままで」
「それでは御供させていただきます」
監視の目を掻い潜り、如何にして残り少ない時間をどう使うかが重要になってくる。
(とことん足掻いてやろう)
全ては悲願成就のため。
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