黄昏に縋るは妖異の闇夜

影臣

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 酒呑童子編

 綻び

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今日、広間に備え付けられた時計の針は時を刻む役目を終えた。終焉の鐘を鳴らし、期限終了の時を伝え、約束の時を告げる日時を迎えた。

広間に現れたのは四名の客人。鬼の令嬢・真朱、火車の令嬢・飛燕、骨女の令嬢・陽菜、天狗の御子息・山吹。それぞれの参加者の背後には付き従った小間使いが控えていた。
そんな参加者と対面する形で、広間に待機していたのはの配下達。しかし、正面に当たる席は空席で主の姿だけは何処にもなかった。

「さて、約束の期限を迎えましたが……参加者の皆様、首の在処は分かりましたか」

「俺は狐面の彼女を口説くのに必死でさ、そっちの方まで手が回らなかったんだよね~」

白々しい言い方であったが、山吹は目的は果たせなかったと告げた。

「私、頭を使うのはどうも苦手でね。謎解きなんて途中からスッパリ諦めて家探ししてたわ。そもそも私の目的は首じゃなかったし……」

飛燕は堂々と物色していた事を告白し、謎が解けなかったと正直に答えた。

「ウチは……まだや。けど、もう少し時間をくれたら!あと少しなんや!」

真朱は結果が出せなかったことを認めたくは無いようで、必死に食って掛かり時間の延長を望んだ。

「私は、謎を解読することが出来ました」

ただ一人、陽菜だけが静かに微笑みそう申し出た。だが、その眼には他の参加者を見下すような侮蔑を含んだ光が浮かんでいた。

「証拠を御持ちしましたので、此方を御覧ください」

卓上に置かれたのは泥を纏った桐の箱。蓋を開け、取り出されたのは二つの角を生やした白い頭蓋骨。状態も美しく、欠けている箇所も見られない。

「それは偽物や!」

しかし取り出された物を見ると直ぐ様、真朱は声を張り上げ糾弾した。

「ええっ、何を根拠にそんな言い掛かりを」

「何、何?負け惜しみ?」

「遠目からだしハッキリとは……いや、作り物じゃないな……骨は本物だろ?」

「ほら、あの者もこう申しております。此方が主様が探し求めていた首で御座います」

「嘘や!身体が朽ちぬのに、頭部が朽ちるはずなかろ!」

吐き捨てるような叫び。突然出てきた言葉はあまりにも衝撃が大きくて、一気にこの場の空気は凍てつく程の冷たいモノに変わった。





「何故、知ってるんですか?そこまで情報を公開した覚えはありませんよ」



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