クトゥルフの雨

海豹ノファン

文字の大きさ
上 下
23 / 93

ある男の陰謀

しおりを挟む
トラテツ SIDEーーー

奈照さんもちょっとおかしいや言よったけどわいもおかしいと思うわ。

何かって海溝潤実ちゃんの事じょ。

アニメ見とる場合や無いや言うて訓練に最適な場所教えてくれて言うて今連れて来とんやけど…。

休み休みやらんと身が持たんと説得しても聞かんし今も潤実ちゃんはでっかいドラゴンと戦おうと槍を構えとんじょ。

ほなけど潤実ちゃんボロボロになっとって見とれんわ…。

「ハァハァ…」

潤実ちゃんはドラゴンから散々攻撃受けて体力の消耗と怪我で地に足膝ついて槍を杖代わりに体を支えとる状態じゃ。

「潤実ちゃんもう止め!その体じゃ持たへんじょ!!」

わいはこのままじゃあかん思うて潤実ちゃんに逃げるよう言うけんど

「私はいつも奈照さんやサキュラちゃんに迷惑かけてばかりだから…私だってもっと強くならないと…!」

潤実ちゃんはやっと立ち上がって槍を構え直す。
目の前は4メートルあるドラゴンが雄叫びを上げて潤実ちゃんとわいにここから去れと言わんかのように脅しをかける。

海溝潤実 SIDEーーー

私はドラゴンと戦っている。
私は自分の出せる技という技を出しきり、精一杯戦ってきたのだけれどドラゴンの堅い鱗は破れず、逆に私はドラゴンからもろに攻撃を受ける。

それと、気のせいかも知れないけどスキルが出しにくく、発動に時間がかかり、あと威力が弱くなっている気がする。

でも、こうなってるのは私のやる気が足りないからだ。

心のどこかで甘えがあってそれが私のスキルを弱めている。
こんなじゃいけない…。

私は奈照さんの負担をかけないようにしなきゃいけないしサキュラを見返さないといけない。

強くならなければ…強くなるんだ…。
でも体が動かない…こんなじゃ駄目なのに…。

「潤実ちゃん!バリア張りない!!」

トラテツ君が大声を張り上げる。
ドラゴンを見るとドラゴンは口を大きく広げ、そこから光が放たれる。

いけない!火を吹くつもりだ。

「ウォーターバリア!!」

私はバリアを張り、火を防ぐのだけれど…。

「発動しない!?」

私はバリアを張ったつもりだがバリアは発動せず私はポーズを取っていただけの状態だった。

「潤実ちゃん!!」

トラテツ君は見ていられなくなったのか、人間になり、身を乗り出して私を直撃する火から離してくれる。

ドサリと勢いよく地に滑り込む私とトラテツ。
ああ結局守られてばかりだ…。

「潤実ちゃん早よ逃げ!もうあかんて!!」

トラテツは私をおんぶしてドラゴンから逃げ去る。
ドラゴンはギエーッと吼え、私を負ぶさったトラテツを追う。

「わいの俊足について来れるか!?」

トラテツは走る速度を上げる。
しかしドラゴンはトラテツと同じ速さでどこまでも追ってくる。

そして目前には崖が。

「向こう岸まで5メートルてとこか!何とか飛べそうじゃ!」

トラテツは猫な為運動神経は抜群に良い。
私を負ぶさった状態でもかなり速い。

どこまで頼もしいんだろう。
何も出来ない自分自身が歯痒い。

「おりゃーー!!じっちゃんの名にかけて女の子は最後まで守ってみせるじょーー!!」

トラテツは助走をつけて向こう岸までジャンプする。

しかし…向こう岸まではあと1メートル足らず、トラテツと私はそのまま谷底へと落下していってしまった。

ーーー

私…死んでるかな?生きてるかな?

何ともいえない感じ…。

あれ?何かに縛られているような?
これは…縄?
何故私縛られてるの?

私は目を開けてみる。

「起きたようだね♪」

私の目の前には黒髪の爽やかな感じの青年が私に微笑みかける姿があった。

あれ?私この子に見覚えがある。

ーーー9年前

そう、あれは私が10歳の時、親子でバーベキューしてる時の事だった。

その時私はお気に入りの人形を持ち歩いてたがその人形が川に落ちてしまう。
人形は何とか取れそうな位置で木に引っかかっていた。

私は慎重に身を乗り出し、その人形を取ろうとする。

その時の事だった。

「キャアァ!!」

ドボンと言う音と共に私は人形ごと流されてしまう。

その時のこと、ある男の子が飛び込み、私を助けてくれる。

その時の彼の微笑む顔が今でも忘れられないが…。
彼はなんとその後暴力事件で捕まってしまうのだけど。

ーーー現在

もしかしてこの子はあの時私を助けてくれた人?

「大文字修羅…くん?」

「海溝潤実だね?」

フランクな感じで話しかけてくれる修羅くん。
やっぱりそうだ。

「ところでなんで私手足を縛られてるの?」

「今にわかるよ」

修羅くんは私に聞かれるや否や少し陰りのある表情をして言ってみせる。

トラテツ SIDEーーー

「い、痛た…」

あかんわいとした事が向こう岸まで届かんで落ちてしもたわ、でもドラゴンは何とか撒いたようやな。

あれ?潤実ちゃんは?
わいはキョロキョロするが潤実ちゃんの姿が見えん。

どっか行っとんかな?
わいは鼻をすんすんさせて潤実ちゃんの居場所を調べる。

わいは猫やけん遠くの人や物は匂いでわかるんよ。

鼻すんすんさせるわいやけんど潤実ちゃんの匂いは全然せぇへん。

おかしいな、わいの鼻は半径10キロくらいまでは匂い嗅ぎ分けれるんやけどな…。

何辺《なんべん》鼻すんすんさせても潤実ちゃんの匂いは嗅ぎ分けれなんだ。

あかんどないしよ…。
こんままほっとこうかな?
でもそんなんしたらKEIさんとか幻滅させられるわ…折角アレンと同じ一人称キャラとして登場したのにわい…まあメタな話題は置いといて…。

奈照さんとサキュラちゃんに協力してもらうしか無いわな!

ーーー奈照のアパート

「奈照は何処かに行ったわ…」

無機質な声で答えるサキュラ、やっぱりこの子顔は可愛いけど何考えとるんかわからへん。

あの巫女さんとは違うけんどある意味怖い子やな。
まあテレパシー能力あるけん猫のわいと意思疎通は出来るけんど…ルルイエと言う何処にあるからわからん国出身やけんか日本人とは感性が大分かけ離れとる…。

「その何処かにってどこかわからへんで?」

わいはサキュラに聞く。
するとサキュラは「これを…」と言いわいに紙みたいなもんを見せてきた。

「どれどれ?君の大事な仲間は私が預かっている、助けたくば正木ダムの東舎に来い」

正木ダム言うたら上勝にある曰く付きの湖じょ。

規模はすごい大きいけんど古いけんあちこちが草で覆われとって外観は廃墟とかお化け屋敷言う表現がよう似合う。

そこはごっつい壮大な自然がある山の中、普通に上勝とか勝浦は結構見晴らしの良い自然観光地なんやけど正木ダムは寄ったらあかん言うて鉄条網が張ってあったり木と木の間に立ち入り禁止テープ貼られとるんよ。

何故か言うたら寄ったら心霊現象があったり不吉な事がよう起こる言うて立ち入り禁止箇所に指定されとんじょ。

まあ、秘密の取引とか闇の待ち合わせ場所にはうってつけ言うたらうってつけやな。

「正木ダムか…またえらいとこに指定しとんな…」

あそこは行く必要も無い思っとったけど行かん事には始まらんでな。

旅行や無いけんど潤実ちゃん救出したいし奈照さんも心配やしほな行ってくるわ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

処理中です...