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前世の記憶2※
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戦の火はそこかしこで燃え広がっている。
主君を持たないこの里の者は、普段は農家としてのんびりと田畑を耕して過ごし、戦の時期になれば忍びとして活躍する。忍びとは、あくまで農耕の合間の片手間仕事の位置づけだった。
しかし、このところの戦続きで、忍びとしての比重が大きくなっている。
首領の片腕である修之進一派は、いっそ、忍者として主君について専属で仕事をこなすべきだと意見した。
しかし首領は、あくまで忍者は副業だと言い張る。朱音の父は、血生臭い世と一線を置くと主張した。
軋轢は日に日に大きくなり、諍う修之進は、間諜との名目で里を追い出され、元から戻ることのなかった故郷がさらに遠退いた。
そんな修之進が再び里の地を踏んだのは、さらに三年を経てのこと。
「誰だ」
深夜、静まり返った屋敷の寝所で横になっていた修之進は、忍び寄る気配にハッと息を呑んだ。
まるで気配を感じさせない。
鍛錬を積んだ修之進だからこそ、僅かな空気の乱れを察知した。
侵入者は相当な手練だ。
修之進は枕元の太刀を掴む。
ふと、その手の甲にヒヤリと冷たい感触が覆い被さった。
「修之進様」
艶めかしく女が名を口にする。
修之進は強張りを解いた。久々に聞く、馴染んだ声だ。
「朱音殿か。何だ? 」
すっと朱音は闇から顔を覗かせた。
三年の月日は朱音を急激に成長させた。微かな胸の膨らみは今はゆさゆさと重みを増して、ほっそりした面は美貌に磨きがかかっている。艶めかしく濡れた唇、白いうなじ、長い睫毛、その下にある潤んだ瞳、結い上げた髪からの一筋の後れ毛、それらがふんだんに色香を匂わせている。
修之進が生唾を呑んだことを朱音は逃さなかった。
「朱音を抱いてくださいまし」
震える唇がそう形を作った。
「何だと? 」
修之進の体が再び強張る。朱音の唐突な頼みを図りかねているのは明らかだ。
「朱音は十八。最早、子供ではございません」
躊躇うことなく、鍛え抜かれた胸元に飛び込む。
「正気か? 」
修之進が息を呑んだ。
「幾ら諍おうと、私はそなたの父の配下。父君を裏切れん」
「父に忠誠を立てると? 」
「当然だ」
「朱音に恥をかかせると? 」
朱音は今にも泣き出してしまいそうに、儚い表情で修之進を見上げた。
三年前までの朱音なら、涙で頬を濡らすばかりで挫けていた。
だが、今は違う。
「あ、朱音殿! 」
朱音のしなやかな手が、修之進の着物の裾に滑り込んだ。その手は躊躇うことなく引き締まった太腿の表面を辿り、やがて体の中央へと行き着く。
「修之進様。お身体はそうではないと仰っておりますよ」
朱音は艶然と笑う。
修之進が朱音を「子供」ではなく「女」として見ている証拠を、彼女は指を滑らせて示した。
修之進は眉根をきつく寄せた。
「や、やめろ」
「まあ。やめろと仰るわりには」
「朱音殿。今なら引き返せる。すぐに出て行け」
「出来ません」
言い終わらぬうちに朱音は屈むと、そっと修之進の着物の裾をはだけさせた。
そこは、朱音の想像した通りの状態であった。
朱音は唇を近づけると、舌先を尖らせて浮き立つ筋をなぞる。
びくり、と修之進の体が跳ねた。
修之進とて間諜を長く務める身。閨ごとも数多くこなしてきた。
それなのに彼は拙さの残る朱音の舌遣いに反応している。幼い頃から知る朱音の不埒な行為に背徳感を覚え、それが修之進を興奮させていた。
見る間に硬さを増していくそれを丹念に舐め回す。チロチロと真っ赤な舌を覗かせ、根元から先端までを行き来する。
朱音の指遣いも修之進をますます昂らせる一因だった。器用そうな細く長い指が根元をキュッと握る。
またしても、びくりと修之進が体を揺すった。
「あ、朱音殿……どこで……そのような技を……身につけた? 」
息も切れ切れに修之進が問いかける。
「里にはくノ一が何人もおりましてよ」
朱音は目だけ彼に向けた。
「女らめ。余計なことを」
三年前、男らに混じって忍術の修行に明け暮れる朱音の限界を見た。だから修之進はくノ一の技を習得するよう勧めた。
が、それは建前だ。
本音は朱音を忍者から遠ざける算段だった。
穢れを知らない少女を、血生臭い世界に置いておくのは気が引ける。だから修之進は朱音が忌み嫌う技を敢えて勧め、彼女の忍びとしての矜持をへし折ろうとした。
修之進の読みでは、早々に忍びの務めを諦め、どこぞの田舎侍の元への嫁入りを決めたかと踏んでいたが。
よもや、くノ一の技を習得していたとは。
朱音の技は、里の女らに引けを取らない。
言い出したこととはいえ、朱音を汚した里の女らへの恨みつらみを修之進は口中で唱えた。
「修之進様。他所ごとなど考えませんように」
朱音は艶めかしく腰をくねらせながら、口を半開きにする。仕草一つ一つが男の性的嗜好を刺激させる。全て計算され尽くし、無駄がない。
朱音はニタリと笑うと、興奮して赤黒く膨れたものをぱっくりと咥え込んだ。
「あ、朱音殿! 」
口内の粘膜いっぱいに押し広げ、朱音はゆっくりの呑み込んでいく。顎が外れそうなくらいに口を開き、唾が口端から垂れて糸を引いた。
朱音はどんどん形を変えていくそれに、眉を寄せて苦悶する。それでも教えられた通り、上下に顔を動かせて必死に貪りついた。
里のくノ一から教授を受けたが、実演はこれが初めて。
朱音はまだ男の何たるかを知らなかった。今宵、このときまでは。
話に聞いていたものより遥かに修之進のものは肥大しており、正直、怯んだ。
だが、ここで挫けては、三年間が無駄になってしまう。
修之進が朱音に異常なまでに興奮していることが、朱音を勇気づけた。
「あ、朱音殿」
修之進はとろんと目を蕩けさせ、朱音の名を呼ぶ。ほぼ無意識下だ。
どのようなときも冷静沈着な面を崩さない修之進の乱れる姿。
彼は朱音の頭を掴むと、さらにぐっと己に寄せた。
ぶるっと彼は身震いした。
喉奥まで生温かい感触が入り込む。どんどん溢れ返る液体は口内をいっぱいに満たし、ついに口の端からだらだら零れ落ちる。清潔な敷布に吐き出してしまい、どろりとした粘液が染みを作る。
「くそっ」
修之進は失態に本気で悔しがり、どんどんと己の胸を拳で突いた。
彼の中ではまだまだ子供だった朱音に、すっかり翻弄されてしまったのだ。間諜として経験に長けたこの自分が。
一方の朱音は、恍惚の極みで、上気する彼の息遣いに耳を澄ませた。常に冷静を保ち、経験豊富な修之進が、自分の口の中で呆気なく果てたのだ。
彼が朱音を「女」として認めている、何よりの証拠だ。
だが、これで終わらせるつもりはない。
まだ、夜は長い。
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