【完結】恋愛小説家アリアの大好きな彼

晴 菜葉

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彼女らのおしゃべり

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 妊娠五ヶ月ともなれば、お腹が膨らんでいるのが目立ち、胸も倍は大きくなってきていた。細かった手足には肉がついてきて、アリアはだんだんと「娘」から「母親」へと体が作り替えられていくことを自覚する。
 悪阻症状も治まり、医者曰く安定期に入ったとか。
「まさかアリアが一番に結婚するなんてね」
 穏やかな晴れ間、庭先でエマリーヌを始め友人ら数人がガーデンテーブルを囲んでいる。
 アリアの症状が安定したため、待ちに待った茶会が催された。
「ねえ、どうやってあんな素敵な紳士をモノにしたの? 」
「あの方、社交界で皆んな狙っていたのよ」
「かなり浮き名を流していたわよね」
「どういった経緯? 」
「あなた、全然そんな素振り見せなかったじゃない」
「いつの間に、男性とそんなに進んでいたの? 」
 待ちに待ったのは、友人達もだ。
 アリアがどうやってケイムを射止めたのか。一体いつからなのか。それから閨でのあれこれなど。知りたくてうずうずしている。
「それはアリアが献身的だからでしょう」
 訳知り顔でエマリーヌが言った。
 だが、献身的なのは、アリアよりも夫の方だ。特にベッドの中で。
「ねえ。社交界と言えば、聞いた? 」
「何かしら? 」
「ほら。ミス・メラニーよ」
「ああ。ついこの間まで年下の恋人をこれみよがしに見せつけていたのに」
「どうやらその恋人、舞台女優と今は唯ならぬ関係だとか」
「じゃあ、ミス・メラニーは振られたのね」
「らしいわよ。もう、周りに当たり散らして大変だとか」
「いい迷惑よね」
 ミス・メラニーの名前を、久々に聞いた。
 体の関係はなかっと言い張るものの、アリアは夫と恋人だった女性に対して、俄かに嫉妬心がむくむくと沸き立つ。
「ねえ。それより、今回のミス・アリスン・プティングは読んだかしら? 」 
 彼女らの話題は尽きない。
「勿論よ」
「ライバル登場でしょう? 」
「主人公とは正反対の、大人しそうな儚い未亡人よね」
「でも、この夫人。絶対、よからぬことを企んでいるわよ」
「身重の主人公が手出し出来ないからって」
 すっかり主人公に思い入れしている。
 ミス・アリスン・プティングの「愛と熱情の夜想曲」は、今や大人の女性のほぼ半数以上に読まれていると言っても過言ではない。
「今回のベッドシーンも濃厚よね」
「そうそう。特に男性のアレにキスして、その後……」
 そこで言葉が途切れて、誰ともなく忍び笑いが漏れる。
 全てアリアの実話であるとは、彼女らは知る由もない。
 アリアは笑いそうになるのを堪えながら、カップに口づけた。




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