【完結】恋愛小説家アリアの大好きな彼

晴 菜葉

文字の大きさ
上 下
10 / 123

真夜中のお叱り

しおりを挟む
全ての準備が整った。後は静かに眠っている役者達を起こすだけだ。
俺は二人を強引に揺する。
「......お兄ちゃん、どうしたの」
 寝ぼけた『八人目』が、俺の正体に気がついたのかと、一瞬ドキリとしたが、どうやらそうではないようだ。
「......え? なに? 私縛られてる? お兄ちゃん助けて!!」
 完全に目が覚めた『八人目』は、目の前の俺を無視し、俺を探している。その叫び声で、『七人目』も目が覚めたようだ。
『......お前は誰だ。泥棒か?』
 いつものように、冷静な『七人目』は質問してくる。
「僕は泥棒ではありません。ただ、あなたたちにショーに出演して欲しいだけです」
 ボイスチェンジャーで変えた声は、まるで他人の話を聞いている気分になる。
「......それで、何をすればいいんだ」
 俺をじっと睨み付けながら、『八人目』は聞いてきた。
「ちょっと待ってください。今ショーの内容を説明します。まず僕は、脚本家兼観客です。家族愛の美しさを題材にした、感動の物語。ああ! 素晴らしい!」
 俺は両手を広げ、拍手が起きるのを待った。しかし、『八人目』の啜り泣くような泣き声以外なにも聞こえない。残念だ。
 俺はため息をつき、説明を始める。
「とりあえず、あなた達二人以外の方には、人質として拘束させてもらってます。もし反抗するようなら、人質は殺します」
 俺はそう言うと、ボイスレコーダーのスイッチをオンにする。
『......俺と母さんは、誘拐されたらしい。見張りの男も数人いるみたいだ――』
 そこまで再生すると、俺はスイッチをオフにした。自前に俺の声を録音しておいた。もしかしたら俺も、役者としての才能があるのかもしれない。
「お兄ちゃんとお母さんは無事なんですか!」
 突然、泣いていた『八人目』が叫ぶように聞いてきた。
「大丈夫です。脚本通りに動きさえすれば、無事に解放します」
 俺がそう言うと、安心したようにため息をついた。
「それで、何をさせるつもりだ」
『七人目』が、冷静に尋ねてくる。
 いつもこうだ。俺の父はどんな時でも冷静だ。慌てず、落ち着いている。
「それでは、第一幕の始まりです」
 俺がそう言うと、二人の顔を順に見つめた。恐怖と驚きの表情が張り付いている。
「昔々あるところに、家族を人質に取られた父と妹がいました。そして家族を誘拐した犯人は言いました。人質を解放して欲しければ、家族の愛を示せと。父は、少し考え言いました。分かった。何よりも深い愛情表現をお見せしよう」
 俺は言葉を切り、無言で拳銃と包丁を取り出した。『七人目』と『八人目』が恐怖の表情のまま、固まる。
 俺は二人に近づいていき、手足を固定していたタイラップを切った。
『七人目』、いや、父は、恐怖を堪えるように唇を噛み締めていた。
『八人目』である妹のあおいはしゃくりあげながら、ぶるぶると震えている。
 二人の拘束を解き、目の前に戻ってきた俺は拳銃を構えながら命令する。
「今すぐに最高の愛情表現、つまりお前達二人で性交しろ。神ですら近親相姦しているんだ。何の問題も無い。拒否すれば人質は殺す。やれ」
 俺はそう言うと、銃口を向けた。

「............」
「............」
 二人とも、口を塞がれている訳でもないのに、一言も話さない。
 俺は、銃口を葵に向ける。縮こまっていた体がびくりと震え、心の底から恐怖が滲み出ているような表情を見せた。
「まず君が服を脱いで」
 俺は、葵が怯えないよう、できるだけ優しい声で命令した。
 しかし、葵はブルブル震えながら、胸を隠すように腕を体の前でクロスさせた。そうすることで、自分の身体からだを守っているつもりなのだろう。
 俺は、ショーを円滑に進めるため、ある提案をする。
「わかりました。服を脱がないならしょうがないですね。貴方の母と兄を殺します」
 俺は、ゆっくりと携帯電話をポケットから出すと、耳に当てた。もちろん誰かに電話をかけている訳ではない。
 葵が、自分が父から犯される屈辱と、大好きな母と兄の命を、天秤にかける時間を与えているだけだ。
「......分かりました......すぐに脱ぎますから、兄と母は殺さないでください......」
 小さな声でそう言うと、よろよろと立ち上がり、震える手でパジャマのボタンを外し始めた。しかし、震える手では上手く外すことはできない。時間をかけて、ゆっくりと五つ全てのボタンを外し終え、静かに床に脱ぎ捨てた。
 キャミソール一枚になった上半身には、成長途中のつぼみが、布越しに二つ透けて見えた。
 俺はまさか、実の妹のストリップショーを見ることになろうとは夢にも思わなかった。この背徳感は癖になりそうだ。もっとも、二回目は存在しないが。
 葵は、やはり抵抗があるのだろう。つぼみを隠しているキャミソールを脱がずに、ズボンから脱ぎ始めた。左右の足をするりと抜き取り、やはり床に脱ぎ捨てる。
 小麦色の日焼けの跡が、パンティーのすぐ下まで侵食している。健康的な足は程好い肉付きで、パンティーの下に隠されている骨盤は、まだ開ききってはいなかった。
葵の動きがここで止まる。理性では脱がなければ、母と兄が殺されてしまう事は分かっているはずだ。
 しかし、本能がこれ以上肌を他人に晒すことを、拒否しているようだった。
「あと十秒でキャミソールを脱げ。脱がなければお前の兄は死ぬ」
 俺は、助け船を出してやった。これで葵は脱ぐしかない。
 決心したようにキャミソールのすそを掴み、一気に脱ぎ捨てた。中から、つぼみがこぼれ、初めて人目に触れたかのような、ピンク色の乳首が『ピン』と立っていた。
 すると葵は突然泣き出し、しゃがみこんでしまった。
「次はパンティーを脱いでください。また十秒以内ですよ」
 俺はカウントダウンを始めた。十、九、八、七、六、五、ここまでカウントした所で、しゃがみこんだまま、器用にパンティーを脱ぎ始めた。
「よく見えません。起立してください」
 俺がそう言うと、のろのろと時間をかけ、立ち上がった。しかし、恥丘ちきゅうと乳房は頑なに見せようとせず、左右の手で必死に隠している。
「手は後ろに組んで」
 俺がそう言うと、小刻みに震え、目から大粒の涙を流し、ついに手を後ろ手に組んだ。胸のつぼみも、恥丘ちきゅうも、身体の全てをさらけ出した瞬間だった。
 そして、今だ何者も触れた事の無い恥丘ちきゅうには、一本の毛も生えていなかった。その下にあるクレバスからは、今まさに蛇を迎え入れようと涙を流していた。
 そして、涙は股を伝って落ちていく――。
 俺はその様子を観察しながら、『七人目』に命令した。
「立って」
 その簡単な命令を、父は聞き入れようとしない。その間にも、葵は涙を流し続けていた。
「立て。これが最後のチャンスだ」
 俺がそう言うと、観念したように立ち上がった。
 ――その股間には、必死に外へ出てこようとしている蛇が住んでいた。パンパンに膨れ上がり、巣穴を見つけ、今にも潜り込まんとする蛇がのたうち回っていた――。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。 そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は? *カクヨム様で先行掲載しております

廃妃の再婚

束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの 父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。 ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。 それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。 身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。 あの時助けた青年は、国王になっていたのである。 「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは 結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。 帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。 カトルはイルサナを寵愛しはじめる。 王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。 ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。 引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。 ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。 だがユリシアスは何かを隠しているようだ。 それはカトルの抱える、真実だった──。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【決してご迷惑はお掛けしません。どうか私をここに置いて頂けませんか?】 妾腹の娘として厄介者扱いを受けていたアリアドネは姉の身代わりとして暴君として名高い辺境伯に嫁がされる。結婚すれば幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱いていたのも束の間。望まぬ花嫁を押し付けられたとして夫となるべく辺境伯に初対面で冷たい言葉を投げつけらた。さらに城から追い出されそうになるものの、ある人物に救われて下働きとして置いてもらえる事になるのだった―。

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

処理中です...