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「まだ終わらせへん」
陰鬱な声は低く、ぞくっと背筋に悪寒が走る。
これで終わりじゃないのか?
拘束されていた両手がようやく解放されたと、安堵したのは束の間のことだった。
何やらベルトを外す金属音がしたかと思えば、膝裏に橋本の手が入り、すぐさま抱えられ、二つに折り曲げられる。
物心ついた頃から親にさえ見せたことのない部分が橋本の目に晒される。眩暈を起こしそうだ。
「俺に抱かれといて。今更、女抱く気いか?」
ぶつぶつと口中で呟いたかと思えば、おもむろに後肛に舌先を這わせる。
「ちょっ、マジかよ。そんなとこ。ちょっと、そこは拙いから」
「うるせえ。ガタガタ言うてたら、痛い目みるぞ」
目が本気だ。まだ続けようとしていた文句を喉奥に押し止めた。
その間にも手馴れた舌遣いで舐られ、突かれ、一本一本の襞まで丁寧に濡らされていく。最早、変態としか言えない行為。
「うわっ!」
まだまだこいつの変態行為は終わらない。やっと舌が離れたと思ったら、代わって長い人差し指が第一関節まで潜り込んできた。
「痛い痛い痛いっ」
潤滑剤もなく、これはきつい。
「これくらいで根え上げてたら、続けられへんやろが」
「じゃあ、やめろ。今すぐ」
「うるさい」
指が二本に増やされる。
乾いた部分にねじ込んでも、第一関節から進まない。
幾ら前回、前々回と、破格のデカさを咥え込んだとしても、それはジェルのチカラがあったから。
今は駄目だ。
たちまちきつくなった空間に、顎を仰け反らせた。額から嫌な脂汗が浮かぶ。足先が攣ってしまいそうになるくらい、ぴんと伸びた。
「お仕置きや」
そりゃあ、橋本のあからさまな気持ちを知った上で、体の関係を持ったけど。
でも、それはあくまでベッドの上だけだ。
プライベートまであんた一色になるのは、どうしても踏み越える勇気がない。
中途半端さが招いた結果だ。
俺だって、本当は応えたい。
何かにつけて大事にしてくれているのは、肌身に感じる。
気の狂いそうな嫉妬だって、愛されてる証拠だ。
愛してるなんて、言葉になんかしなくったって、本当はちゃんと通じている。
でも、踏み越える何かが欲しい。
言葉にしたら、軽々、飛び越えられそうな気がする。
これは、俺の狡さだ。
「ご、ごめん….ごめんなさい……」
眦にどんどん涙が浮かんでくる。
「な、何、泣いてるんや」
「ごめん……橋本さん……ごめん……」
「笠置?」
ぐしゃぐしゃに泣いて、鼻まで垂れて、いい大人が情けない。でも、泣かずにはいられない。
元々、橋本はどこに行ってもお人好しの良い人だったんだ。
決して、こんな乱暴を働く男じゃない。
こんなことをさせたのは、俺のせいだ。
ごめん、ごめんと繰り返す俺の言葉を、橋本はまた違った意味で捉えたらしい。
「俺と別れたい言うんか?」
たちまち、般若の顔になる。
普段はのほほんとした、垂れ目の、穏やかな表情なのに。
もう、どこにも垂れた目は見当たらず、ただひたすら俺を睨みつける。
違う、と横に振った首さえ、彼には伝わらない。
陰鬱な声は低く、ぞくっと背筋に悪寒が走る。
これで終わりじゃないのか?
拘束されていた両手がようやく解放されたと、安堵したのは束の間のことだった。
何やらベルトを外す金属音がしたかと思えば、膝裏に橋本の手が入り、すぐさま抱えられ、二つに折り曲げられる。
物心ついた頃から親にさえ見せたことのない部分が橋本の目に晒される。眩暈を起こしそうだ。
「俺に抱かれといて。今更、女抱く気いか?」
ぶつぶつと口中で呟いたかと思えば、おもむろに後肛に舌先を這わせる。
「ちょっ、マジかよ。そんなとこ。ちょっと、そこは拙いから」
「うるせえ。ガタガタ言うてたら、痛い目みるぞ」
目が本気だ。まだ続けようとしていた文句を喉奥に押し止めた。
その間にも手馴れた舌遣いで舐られ、突かれ、一本一本の襞まで丁寧に濡らされていく。最早、変態としか言えない行為。
「うわっ!」
まだまだこいつの変態行為は終わらない。やっと舌が離れたと思ったら、代わって長い人差し指が第一関節まで潜り込んできた。
「痛い痛い痛いっ」
潤滑剤もなく、これはきつい。
「これくらいで根え上げてたら、続けられへんやろが」
「じゃあ、やめろ。今すぐ」
「うるさい」
指が二本に増やされる。
乾いた部分にねじ込んでも、第一関節から進まない。
幾ら前回、前々回と、破格のデカさを咥え込んだとしても、それはジェルのチカラがあったから。
今は駄目だ。
たちまちきつくなった空間に、顎を仰け反らせた。額から嫌な脂汗が浮かぶ。足先が攣ってしまいそうになるくらい、ぴんと伸びた。
「お仕置きや」
そりゃあ、橋本のあからさまな気持ちを知った上で、体の関係を持ったけど。
でも、それはあくまでベッドの上だけだ。
プライベートまであんた一色になるのは、どうしても踏み越える勇気がない。
中途半端さが招いた結果だ。
俺だって、本当は応えたい。
何かにつけて大事にしてくれているのは、肌身に感じる。
気の狂いそうな嫉妬だって、愛されてる証拠だ。
愛してるなんて、言葉になんかしなくったって、本当はちゃんと通じている。
でも、踏み越える何かが欲しい。
言葉にしたら、軽々、飛び越えられそうな気がする。
これは、俺の狡さだ。
「ご、ごめん….ごめんなさい……」
眦にどんどん涙が浮かんでくる。
「な、何、泣いてるんや」
「ごめん……橋本さん……ごめん……」
「笠置?」
ぐしゃぐしゃに泣いて、鼻まで垂れて、いい大人が情けない。でも、泣かずにはいられない。
元々、橋本はどこに行ってもお人好しの良い人だったんだ。
決して、こんな乱暴を働く男じゃない。
こんなことをさせたのは、俺のせいだ。
ごめん、ごめんと繰り返す俺の言葉を、橋本はまた違った意味で捉えたらしい。
「俺と別れたい言うんか?」
たちまち、般若の顔になる。
普段はのほほんとした、垂れ目の、穏やかな表情なのに。
もう、どこにも垂れた目は見当たらず、ただひたすら俺を睨みつける。
違う、と横に振った首さえ、彼には伝わらない。
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