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甘く、淫らな ※R18

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 飢えた獣が獲物を嬲り尽くすように、荒々しく舌が首筋を上下する。
 次いで、唇を塞がれる。味わうなんて生優しいものではない。喰われる、といった表現の方が正しい。
「うっ……ううっ」
 苦悶の声が喉奥で潰れ、吐く息さえままならない。
 火傷しそうなくらい熱い舌が口腔を蹂躙し、舐り、吸って、まるで生き物のように動き回る。
 今までのルパートのキスが、ヒルダを気遣ってくれていたことに、遅まきながら理解する。
「も……もう……やだ……」
 口付けの合間に抗議しても、一向に変わらない。いや、それよりも、両手をルパートの利き手で頭上に軽々と捻られ、身動きが取れなくなった分、状況は悪化している。
 ルパートの空いた手が、無尽蔵に胸の花芯を引っ張り、歯を立てた。
「痛っ」
 最早、膝蹴りしかない。この状況から逃れるには。必死で頭を回転させる。
 経験上、何が起こるか察知したルパートは、長い脚をヒルダの肢体に蛇のごとく巻きつけ、動きを封鎖しにかかる。
「ちょっ!やだ!」
 ヒルダは敏感に反応した。
「し、信じられない!はしたない!」
 太腿に触れた硬さに、顔を青ざめ、軽蔑の目を向ける。
 妹からうんざりするくらいに聞かされた、情交での男性の変化。
「至極、まともな反応だろうが」
 ルパートは心外だと苛立つ。
 まずい!
 緊張で、ヒルダの脈拍が速まった。
 これから、どのようにこの状況が進んでいくのか。容易に認知する。
「お前も、人を責められる体か?」
 言いながら、ルパートの片方の手がヒルダの太腿の間を割る。
 誰にも見せたことのない秘部が、ルパートにより暴かれ、ぬるつく液体を指で絡めとる。
「や、だ。何を」
「体は素直だな」
 ニタリと口元を曲げたその表情は、凶悪そのもの。
 ヒルダの直感は正しかった。
 節のある長い指が上下し、淫猥な音をわざと立てさせた。ぬるつきはさらに粘度を増し、最初こそ激しく抵抗していたヒルダだったが、次第にその動きに合わせて腰を揺すっていた。
 ほっそりとした彼女の腰が、一際反る。
 ルパートの中指が、強引に中へと侵入したのだ。
「ああ」
 あっさりと他人が入り込んでくることを許したヒルダは、引き攣れる痛みに目を眇める。柔らかな花弁を掻き分け、性急な動きで体内を弄られ、広げられていく。
 引き攣った痛みが、甘い痺れへと変化していく。
 ヒルダの体から緊張の糸が解かれたことを見極めたルパートは、さらに人差し指を加え、慎重に強張りをほぐしていった。
「うっ…くう…」
「ヒルダ。声を出せ」
「うぐ……絶対、嫌……」
「強情だな」
 苦笑いされ、さらに薬指が侵入する。
「あっ……ああ!」
 愉悦と名の雷に打たれ、あれほど頑なに我慢していたヒルダはあっさりと声を解放する。
「本物の夫婦になりたいと言ったな」
 ルパートの声は掠れている。
「せっかく、ゆっくり時間をかけて育てようとしたんだが」
「あ…ああ……ルパート様!」
 指での刺激に慣れてくると、何やら物足りなさでいっぱいになる。子宮が収縮し、体内の指を締め上げた。
 駄目だ。足りない。体が何かを渇望している。
「煽ったのは、お前だ!」
 忌々しくルパートが吐き捨てる。
 獣のように喉奥を鳴らした。
 次の瞬間、ヒルダの肢体が弓なりに跳ね上がる。
 めりめり、と引き裂く音は、果たして空耳か。
 指とは比べものにならない大きな異物が、まだ開ききっていなかった深淵に、性急な動きで踏み入ってきた。
 火傷する。
 炎の塊は、先へ先へと。
「まだ早かったか。すまない」
 苦悶の呻きは、互いのもの。
 内臓が抉られ、息が出来ない。呼吸のリズムを忘れてしまう。体内の血液が繋がった部分に一気に集中し、ぎりぎりと締め上げた。
 突き上げられ、引かれて。激しい律動に、魂ごと体が持っていかれる。
 初めて見るルパートの表情。
 苦痛に眉根を寄せ、目を眇め、歯を食い縛り、口端から荒い息を漏らす。
 騎士として、公爵として、いつもの眉目秀麗な姿はそこにはない。
 在るのは、ひたすら欲望剥き出しの獣。
 汗の粒が床に散る。
 敷かれたシーツはすでに意味をなさず、ヒルダは硬い石畳を背中に、ひたすら衝撃に身を任せた。
「ルパート様!ルパート様!」
 彼の名を呼ぶたびに、此処にいると言わんばかりに重なる口付けが深くなる。
 最奥の塊が、弾けた気がした。
 内部が熱さで満たされる。
 苦しそうに奥歯を噛んで獣臭を放つルパートを、ヒルダは遠退く意識の寸前に目に焼き付けた。

 目が覚めたら、風窓からは薄紫の日の光が入り込んでいた。
 昨夜とは打って変わって、ピチチと小鳥が呑気に美声を響かせている。
 肌寒さに身震いすれば、どこからともなく引き寄せられ、筋肉質な胸板と密着する。
 心なしか速い心臓の拍動が、ヒルダを安心させた。
「ルパート様、そろそろ帰らないと」
「まだだ」
「でも、公務に差し支えが」
「今日は休む」
「ルパート様」
 駄々っ子のようにヒルダの胸の谷間に顔を埋め、気だるげに息を吐くルパートに、ヒルダは、「駄目ですよ」と溜め息をつく。
 ふと、胸に吹き掛かる息の種類が変わったことを、敏感に感じ取った。
「まだ時間はたっぷりある。続きを」
「いけません」
 いやらしく腰を滑る手の甲を、思い切り抓ってやった。
 不満そうに唇を尖らせつつ、ルパートは素直に従う。
 ただ、互いに離れがたく、愚図愚図して起き上がれない。
「結局、賊の正体は分からず仕舞いか」
 ルパートは寝転がったまま、前髪を鬱陶しそうに掻き上げる。
「シュプール夫人を襲った奴等と、国王を狙う輩と、繋がりがあるか確証もない」
 暗礁に乗り上げ、ルパートはガシガシと髪を掻き乱す。
「せめて、奴らの正体さえわかれば」
「グランドマザー」
 ぽつり、とヒルダが呟く。
「確かあの男、仕事に失敗して、グランドマザーに狙われていると、酷く怯えていました……って、ルパート様?」
 話すうちに、見る間にルパートの涼やかな双眸が大きくなっていき、瞳孔が開きっぱなしになってしまった。
 呆けたように動かない。
 何か変なこと言った?
 怪訝に首を傾げたときだった。
「きゃっ」
 いきなり、ルパートに真正面から抱きしめられる。
 体が潰されまいかと心配するくらい、強い力で。
「ル、ルパート様。く、苦しい」
「ああ!ヒルダ!」
 感極まったかのように、声が震えている。
「ヒルダ!お前は最高の妻だ!」
 澄んだ空気の中、この上ない賞賛を浴びる。
 甘い空気から一転した雰囲気に、ヒルダはわけもわからず首を傾げる他なかった。



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