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友人の証言
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「情報元はロナルドという男爵でな。女達と乱交を繰り広げていた仲間内の一人なんだが……と、違うぞ。もうしていないからな! マチルダ、何だその目は! 」
マチルダは一切の感情を拒否してロイを横目する。
ロイはソファから勢いつけて立ち上がると、まさしく舞台俳優のように大袈裟な身振り手振りでマチルダに言い訳する。そのあまりにも滑稽な動作は、舞台俳優と言うよりは、どちらかと言えばゼンマイ仕掛けの人形と比喩する方が近い。
「ロイ。あなた、まだそんなことしていたのね? 」
扇で口元を隠したオリビアといえば、弟を見る目ではない。汚い物を見る目そのもの。
「だから、やめたと言ってるだろ! 」
ロイが声を張り上げる。
「最低」
マチルダはツンとそっぽ向いた。
「マチルダ! 違う! 誤解だ! 若気の至りだ! 」
「何が若気よ。つい最近のことじゃないの? 」
マチルダの冷淡な指摘に、ロイはぐっと口元を引き結んだ。
やはり図星だ。
ますますマチルダの眼差しがブリザードとなる。
プレイボーイでならした彼のことだから、疾しい傷の一つや二つ、あるに決まっている。
むしろ、こんな性欲の怪物が、三十にもなってお利口な男女の交際をしていると言う方が不自然ですらある。
しかし、やはり良い気はしない。
「夫婦喧嘩は後にしなさいな。それで? そのロナルド男爵がどうしたの? 」
オリビアはうんざりとして、先を促した。
わざとらしく咳払いし、ロイはどうにかこうにか平常心を装うと続けた。
「あ、ああ。ロナルドは、ジョナサンが拵えた生垣迷路で口説いたイメルダを、そのまま自分の屋敷に連れ帰って、早々に食った……いや、深い仲になったんだが」
口汚い言葉を咳払いで誤魔化し、ロイは言葉を選んで言い直す。
「関係はそれっきりだったんだが。最近になって、イメルダから、ある頼みを持ち掛けられたのだ」
「何を? 」
勿体ぶった言い方に、マチルダは焦れる余り、椅子から腰を浮かして前のめりになる。
「とある伯爵夫妻から自分が虐げられている。逃げ出したいが、弱味を握られてしまってそれが叶わないと」
「とある伯爵夫妻って、まさか」
どすん、とマチルダは椅子の座面に重々しく尻を乗せた。
額を手のひらで押さえて天井を仰ぐ。
こめかみがズキズキと痛んだ。
とある伯爵夫妻など、穿った見方をせずとも誰を示しているかは瞭然だ。
何かにつけて悲劇のヒロインぶるイメルダ。その出発点が父の再婚あるいはマチルダの誕生であるのは確かだ。
最近では、姉は心を病んでいるのではないかとさえ、マチルダは思い始めていた。
純真な笑顔のその裏では、どす黒い感情が大嵐の海のごとく渦を巻いている。
いつ船を転覆させてやろうかと抜け目なく。
イメルダは物事を自分に都合良く解釈して、その中に悪びれることなく嘘を混ぜる。
全ては妹を陥れるため。
またもや姉の妄言が始まった。
マチルダは一切の感情を拒否してロイを横目する。
ロイはソファから勢いつけて立ち上がると、まさしく舞台俳優のように大袈裟な身振り手振りでマチルダに言い訳する。そのあまりにも滑稽な動作は、舞台俳優と言うよりは、どちらかと言えばゼンマイ仕掛けの人形と比喩する方が近い。
「ロイ。あなた、まだそんなことしていたのね? 」
扇で口元を隠したオリビアといえば、弟を見る目ではない。汚い物を見る目そのもの。
「だから、やめたと言ってるだろ! 」
ロイが声を張り上げる。
「最低」
マチルダはツンとそっぽ向いた。
「マチルダ! 違う! 誤解だ! 若気の至りだ! 」
「何が若気よ。つい最近のことじゃないの? 」
マチルダの冷淡な指摘に、ロイはぐっと口元を引き結んだ。
やはり図星だ。
ますますマチルダの眼差しがブリザードとなる。
プレイボーイでならした彼のことだから、疾しい傷の一つや二つ、あるに決まっている。
むしろ、こんな性欲の怪物が、三十にもなってお利口な男女の交際をしていると言う方が不自然ですらある。
しかし、やはり良い気はしない。
「夫婦喧嘩は後にしなさいな。それで? そのロナルド男爵がどうしたの? 」
オリビアはうんざりとして、先を促した。
わざとらしく咳払いし、ロイはどうにかこうにか平常心を装うと続けた。
「あ、ああ。ロナルドは、ジョナサンが拵えた生垣迷路で口説いたイメルダを、そのまま自分の屋敷に連れ帰って、早々に食った……いや、深い仲になったんだが」
口汚い言葉を咳払いで誤魔化し、ロイは言葉を選んで言い直す。
「関係はそれっきりだったんだが。最近になって、イメルダから、ある頼みを持ち掛けられたのだ」
「何を? 」
勿体ぶった言い方に、マチルダは焦れる余り、椅子から腰を浮かして前のめりになる。
「とある伯爵夫妻から自分が虐げられている。逃げ出したいが、弱味を握られてしまってそれが叶わないと」
「とある伯爵夫妻って、まさか」
どすん、とマチルダは椅子の座面に重々しく尻を乗せた。
額を手のひらで押さえて天井を仰ぐ。
こめかみがズキズキと痛んだ。
とある伯爵夫妻など、穿った見方をせずとも誰を示しているかは瞭然だ。
何かにつけて悲劇のヒロインぶるイメルダ。その出発点が父の再婚あるいはマチルダの誕生であるのは確かだ。
最近では、姉は心を病んでいるのではないかとさえ、マチルダは思い始めていた。
純真な笑顔のその裏では、どす黒い感情が大嵐の海のごとく渦を巻いている。
いつ船を転覆させてやろうかと抜け目なく。
イメルダは物事を自分に都合良く解釈して、その中に悪びれることなく嘘を混ぜる。
全ては妹を陥れるため。
またもや姉の妄言が始まった。
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