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悪役令嬢の誘惑2 ※
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ひとしきりキスを繰り返し、どちらからともなく唇が離れる。
互いの唇は明らかに腫れぼったくなってしまっていた。
「こ、この先は? 」
息も切れ切れにマチルダが問いかける。
「どうするか知っているのか? 」
「座学は一通り学んでいるわ」
上から目線のロイに、マチルダは切れることもなく答えた。
腕を組んでしばらく何やら考え込んでいたロイだが、やがて肩を大きく上下させると首を横に振った。
「駄目だ」
「どうして? 」
「意識のはっきりしない女を襲うほど、私は飢えていない」
「この場合、襲っているのは私だけど」
「尚更、悪い」
ロイはマチルダの足側のシーツに尻を乗せるなり、彼女に背を向けた。後ろを向いているので表情はわからないが、広い背中が頑なに拒んでいる。こちらを振り向こうともしない。
「私って、やっぱり魅力がないのね」
急に声のトーンを落としたマチルダは、両手で顔を覆い俯く。その肩が小刻みに震えた。
「男性は誰も私に声を掛けて来ないもの」
マチルダはいつだって壁の花に甘んじている。素敵な男性とワルツを踊る姉を遠くに。
「男なんて自尊心の塊だからな。君に無碍にされるのがわかっているから、最初から高嶺の花には手を出さないんだ」
「無碍になんてしないわ」
「凛とした氷の悪女。社交界での君の異名だ」
「悪女だなんて。あんまりだわ」
「その点に関しては異論はない」
ロイが振り返る。ニヤリと口元を吊り上げたその顔には、悪いことを企んでいるような不気味な昏さが潜んでいた。
「君は男を惑わせる悪い女だ」
何やら吹っ切れたように、チリチリと瞳の奥に火が灯っていた。
マチルダはベッド脇に佇んでいる。
ロイにより引っ張り起こされた。
真正面にロイが立つ。マチルダの目線は彼の胸元だ。この国の女性より遥かに背の高いことを気に病むマチルダだったが、彼が相手ならちょうど釣り合いが良い。
「ドレスが皺だらけだわ」
嫌そうにマチルダは呟く。
「ドレスを汚したらまずいから、脱いでしまえ」
「駄目よ。メイドがいなければ、一人でドレスを着られないから」
「私はドレスを脱がせるのも、着せるのも得意だ」
「最低」
即ち、得意になるくらい繰り返してきたということだ。
マチルダは不潔なものを見るようにロイを横目した。
ロイは憤慨して鼻息を荒くする。
「ごちゃごちゃ言わず、さっさと脱げ」
「命令しないでよ」
「君のために言ってやってるんだ。これ以上ドレスを汚すつもりか」
マチルダのドレスの裾は、濡れて生地が皮膚に張り付いてしまっている。その下のズロースも、使い物にならない。
「ああ、駄目だな、このドレスは。染みが酷過ぎる。媚薬の効果というのは恐ろしいな」
またしてもマチルダの太腿から伝う雫が床へと落ちた。
「国が禁止令を出すはずだ」
違法薬物の取り締まりは日毎に強化されているが、役人の目をかいくぐり、取り引きは未だに頻繁に行われている。
「しかし、子爵令嬢が口に出来るくらい、こうも易々と出回っているのか。厄介だな」
それまでは上級貴族のごく一部のみに知られた存在だったが、近頃は下位貴族はおろか、平民にまで渡っているようだ。
渋い顔となったロイは、ぶつぶつと売人を罵っている。
「駄目よ、こんなときに他所ごとを考えたら」
マチルダはそんなロイに注意する。
彼女は艶然とした笑みで、無自覚に彼を誘惑した。
マチルダの正面から背中に手を回したロイは、死角で手元が見えないくせに、器用にドレスのボタンを外していく。
「くすぐったいわ」
「こら。ボタンが外せないだろ。じっとしていろ」
全て外し終えると、重力によりすとんと真下に滑り落ちた。
コルセットとズロースだけの下着姿が露わになる。
いつもなら悲鳴を上げているシーンだが、媚薬に侵されているマチルダは恥ずかしがる素振りなど見せない。
「見た目以上に胸があるんだな」
ロイの喉仏が鳴った。
マチルダの大きな胸は、コルセットにぎゅうぎゅうに詰め込まれている。ただでさえ豊かだが、コルセットを外せば倍以上はある。
「お母様が、愚かな男が谷間にばかり目をやるから、あまり目立たないようにと」
「愚かな男で悪かったな」
ムッと眉をしかめたまま、ロイはコルセットの紐を解いた。
ふわり、と柔らかな白さが丸くたわむ。
「……あっ」
マチルダが目を伏せた。
ロイの手が、優しくマチルダの乳房を包んだからだ。
大きな手からはみ出た肉の感触を確かめるように、ロイはゆったりと円く描く。
だんだん中央の花芯が尖っていく。
「本当に誰にも触らせたことがないんだな」
「当たり前でしょう。婚姻前なのよ。男女の睦みは結婚初夜まで残しておかないと」
「言葉と行動が矛盾してるぞ」
「『習慣も大事だが、中には守るより破った方がいいものもある』」
「シェイクスピアか。こんなときに、お勉強か? 」
「だって。あなたを教育しろって言われたから」
「誰にだ? あのぬいぐるみ野郎にか? 」
「ええ」
「ふざけるなよ、あの野郎」
ロイはムッとして、マチルダの乳首の先端を摘んだ。
「きゃっ」
途端、びくりとマチルダが跳ねる。
「この私を躾けるだと? 馬鹿にするな」
「良い行いへ導いてあげないと」
「『物事に良いも悪いもない。考え方によって良くも悪くもなるものだ』」
シェイクスピアの名言に、名言で返す。
軟派な見た目に反して、ロイはマチルダが思った以上に博識のようだ。
互いの唇は明らかに腫れぼったくなってしまっていた。
「こ、この先は? 」
息も切れ切れにマチルダが問いかける。
「どうするか知っているのか? 」
「座学は一通り学んでいるわ」
上から目線のロイに、マチルダは切れることもなく答えた。
腕を組んでしばらく何やら考え込んでいたロイだが、やがて肩を大きく上下させると首を横に振った。
「駄目だ」
「どうして? 」
「意識のはっきりしない女を襲うほど、私は飢えていない」
「この場合、襲っているのは私だけど」
「尚更、悪い」
ロイはマチルダの足側のシーツに尻を乗せるなり、彼女に背を向けた。後ろを向いているので表情はわからないが、広い背中が頑なに拒んでいる。こちらを振り向こうともしない。
「私って、やっぱり魅力がないのね」
急に声のトーンを落としたマチルダは、両手で顔を覆い俯く。その肩が小刻みに震えた。
「男性は誰も私に声を掛けて来ないもの」
マチルダはいつだって壁の花に甘んじている。素敵な男性とワルツを踊る姉を遠くに。
「男なんて自尊心の塊だからな。君に無碍にされるのがわかっているから、最初から高嶺の花には手を出さないんだ」
「無碍になんてしないわ」
「凛とした氷の悪女。社交界での君の異名だ」
「悪女だなんて。あんまりだわ」
「その点に関しては異論はない」
ロイが振り返る。ニヤリと口元を吊り上げたその顔には、悪いことを企んでいるような不気味な昏さが潜んでいた。
「君は男を惑わせる悪い女だ」
何やら吹っ切れたように、チリチリと瞳の奥に火が灯っていた。
マチルダはベッド脇に佇んでいる。
ロイにより引っ張り起こされた。
真正面にロイが立つ。マチルダの目線は彼の胸元だ。この国の女性より遥かに背の高いことを気に病むマチルダだったが、彼が相手ならちょうど釣り合いが良い。
「ドレスが皺だらけだわ」
嫌そうにマチルダは呟く。
「ドレスを汚したらまずいから、脱いでしまえ」
「駄目よ。メイドがいなければ、一人でドレスを着られないから」
「私はドレスを脱がせるのも、着せるのも得意だ」
「最低」
即ち、得意になるくらい繰り返してきたということだ。
マチルダは不潔なものを見るようにロイを横目した。
ロイは憤慨して鼻息を荒くする。
「ごちゃごちゃ言わず、さっさと脱げ」
「命令しないでよ」
「君のために言ってやってるんだ。これ以上ドレスを汚すつもりか」
マチルダのドレスの裾は、濡れて生地が皮膚に張り付いてしまっている。その下のズロースも、使い物にならない。
「ああ、駄目だな、このドレスは。染みが酷過ぎる。媚薬の効果というのは恐ろしいな」
またしてもマチルダの太腿から伝う雫が床へと落ちた。
「国が禁止令を出すはずだ」
違法薬物の取り締まりは日毎に強化されているが、役人の目をかいくぐり、取り引きは未だに頻繁に行われている。
「しかし、子爵令嬢が口に出来るくらい、こうも易々と出回っているのか。厄介だな」
それまでは上級貴族のごく一部のみに知られた存在だったが、近頃は下位貴族はおろか、平民にまで渡っているようだ。
渋い顔となったロイは、ぶつぶつと売人を罵っている。
「駄目よ、こんなときに他所ごとを考えたら」
マチルダはそんなロイに注意する。
彼女は艶然とした笑みで、無自覚に彼を誘惑した。
マチルダの正面から背中に手を回したロイは、死角で手元が見えないくせに、器用にドレスのボタンを外していく。
「くすぐったいわ」
「こら。ボタンが外せないだろ。じっとしていろ」
全て外し終えると、重力によりすとんと真下に滑り落ちた。
コルセットとズロースだけの下着姿が露わになる。
いつもなら悲鳴を上げているシーンだが、媚薬に侵されているマチルダは恥ずかしがる素振りなど見せない。
「見た目以上に胸があるんだな」
ロイの喉仏が鳴った。
マチルダの大きな胸は、コルセットにぎゅうぎゅうに詰め込まれている。ただでさえ豊かだが、コルセットを外せば倍以上はある。
「お母様が、愚かな男が谷間にばかり目をやるから、あまり目立たないようにと」
「愚かな男で悪かったな」
ムッと眉をしかめたまま、ロイはコルセットの紐を解いた。
ふわり、と柔らかな白さが丸くたわむ。
「……あっ」
マチルダが目を伏せた。
ロイの手が、優しくマチルダの乳房を包んだからだ。
大きな手からはみ出た肉の感触を確かめるように、ロイはゆったりと円く描く。
だんだん中央の花芯が尖っていく。
「本当に誰にも触らせたことがないんだな」
「当たり前でしょう。婚姻前なのよ。男女の睦みは結婚初夜まで残しておかないと」
「言葉と行動が矛盾してるぞ」
「『習慣も大事だが、中には守るより破った方がいいものもある』」
「シェイクスピアか。こんなときに、お勉強か? 」
「だって。あなたを教育しろって言われたから」
「誰にだ? あのぬいぐるみ野郎にか? 」
「ええ」
「ふざけるなよ、あの野郎」
ロイはムッとして、マチルダの乳首の先端を摘んだ。
「きゃっ」
途端、びくりとマチルダが跳ねる。
「この私を躾けるだと? 馬鹿にするな」
「良い行いへ導いてあげないと」
「『物事に良いも悪いもない。考え方によって良くも悪くもなるものだ』」
シェイクスピアの名言に、名言で返す。
軟派な見た目に反して、ロイはマチルダが思った以上に博識のようだ。
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