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疾雷2※
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リリアーナは反転し、ザカリスに背中を見せた。
それは拒絶を示したからではない。
後ろには、均等にホックが並んでいる。
いつもならメイドがそれを外すのだが、今日は違う。
リリアーナはザカリスに要求した。
背中側に立つ彼が息を呑んだのは、気配でわかる。
蝋燭が作り出した影は、躊躇うように宙空を彷徨っていた。
「ザカリス様。お願い」
リリアーナは声のトーンを落として、最後の一押しをした。
ついにザカリスの手がドレスのホックに掛かる。
まるで抜け殻のように裾が広がり丸く形作られたドレス。
リリアーナはその生地の上を裸足で踏みつけた。
コルセットもシュミーズも脱ぎ捨て、靴下も靴も遠くへ飛ばした。
今や彼女はヴィーナスの誕生のように、素肌を晒している。
「ドレスが埃まみれになるぞ」
苦言するザカリスの声はハスキーだ。
「構わないわ」
言うなりリリアーナは座り込むと、ザカリスの袖を引っ張った。
油断していたザカリスは体を傾かせ、いともあっさりリリアーナの元へ引き寄せられる。
「ザカリス様」
「何だ」
この期に及んで彼はいつも通りを貫くことにしたらしい。返事がぶっきらぼうだ。
が、彼の本心を知ったリリアーナからすれば、そんなもので挫けたりはしない。笑みが唇を形作る。
「ザカリス様。愛しているわ」
「……俺は愛していない」
一拍置いたのを気づかないわけがない。
くすくすとリリアーナは声を揺らした。
「本当に意地悪ね」
余裕ある笑みを寄越してやれば、彼は不機嫌そうに顔を背けた。
おそらく、必死に本能と理性が闘っている最中だ。
だからリリアーナは、本能が勝つように仕向けた。
覚束ない動きながら、彼のトラウザーに手を掛ける。
「リ、リリアーナ! 」
彼の声が上擦った。
リリアーナが勢いよく彼の身につけたものを引き抜いたからだ。濃紺のトラウザーにもフロックコート同様に泥はねがあり、裾には落ち葉の屑が細かく散っている。
そのトラウザーを引き抜けば、予想通りの興奮度合いに、リリアーナの顔がこれでもかと真っ赤になる。
が、怯んでいては始まらない。
リリアーナは二度三度と息を吸っては、深く吐き、気合いを入れた。
「よし! では、いきますね! 」
リリアーナはザカリスの太腿の中央に体を潜り込ませると、そこに身を預ける。
「な、何を! 」
ザカリスが悲鳴に近い声を上げた。
彼の視線の先では、リリアーナのつむじが前後にゆっくりと動いている。
舌先を尖らせ、赤黒く膨張した彼の急所をねっとりと舐めていく。浮き立つ筋に添えば、ただでさえ膨れ上がっているというのに、さらにムクムクと形を変えていった。
堪え切れずにザカリスは「うっ」と呻いた。
「だ、誰がこんなことをお前に教え込んだんだ! 」
「ユリアンが、ザカリス様は助平だから、きっとこれがお好きなはずだから。機会があればしなさいと」
目線だけ上向ければ、リリアーナの淫猥さが倍増する。
ザカリスはますます目元を赤らめた。
「あの小娘が! 」
「違うのですか? 」
「い、いや。違わないが。いや、その」
しどろもどろで言い淀むザカリス。
ユリアンの読みに憤怒するものの、あながち間違いではないとの自覚はあるようだ。否定して行為を中断させまいとする欲が勝った。
リリアーナは目線を下げると、行為に集中する。
小さな口をめいいっぱい広げて含ませる。鼻先から懸命に息を吸い、剛直な表面に舌先を乗せ、貪りついた。じゅぽじゅぽと、卑猥な音が石壁に反響した。
未熟な口淫ながら、却ってそれがザカリスを刺激している。
奥ゆかしいリリアーナが、技量の達者な高級娼婦でも敵わないくらいの婀娜さを醸し出している。
鬼頭が上向き、ぶるぶると芯を奮わせる。
先端からの先走りがリリアーナの唾液と混じり合い、さらに水音が増した。
酸欠を起こしそう。無我夢中で咥え込んでいたために、頭がくらくらしてきた。
初めこそ拒絶していたザカリスだったが、リリアーナの後頭部を股間に押し付け、さらに密着させる。
「ぐっ……うう」
喉の奥近くまで入り込んだ剛直には、さすがに苦しくて涙が浮かぶ。それなのに彼は自ら腰を振って、猛然とした速さでリリアーナの口内を蹂躙させる。
唾液が絡みつき、口端からだらだらと溢れた。
「ああ! くそっ! 」
彼は何事か悪態をつく。
一際、リリアーナの口内にある質量が増した。
「ぐうっ! 」
喉の奥深くまで振動する。
リリアーナは獣の断末魔のように呻いた。
蒸せるような生々しい匂いが鼻に入り込んできた。
熱い液体がどんどん口内に溜まっていく。
リリアーナはユリアンから教えられた通りに、それを吐き出さず胃へと流し込んだ。苦々しい味が口から喉を通るとき、むせ返りそうになる。
「お、おい! 」
唖然とするザカリスの前で、リリアーナは喉を上下させ、飲み損ねたものが口端から垂れた。それを人差し指で拭ってから、舌先で舐めとる。
続いて、ザカリスへ流し目。
ユリアンから教え込まれた所作を、そっくりそのまま再現してみせる。
「ザカリス様は助平だから、こうすればお喜びになると、ユリアンが」
「ああ! その通りだよ! 畜生! 」
ザカリスは雄叫びを上げた。
それは拒絶を示したからではない。
後ろには、均等にホックが並んでいる。
いつもならメイドがそれを外すのだが、今日は違う。
リリアーナはザカリスに要求した。
背中側に立つ彼が息を呑んだのは、気配でわかる。
蝋燭が作り出した影は、躊躇うように宙空を彷徨っていた。
「ザカリス様。お願い」
リリアーナは声のトーンを落として、最後の一押しをした。
ついにザカリスの手がドレスのホックに掛かる。
まるで抜け殻のように裾が広がり丸く形作られたドレス。
リリアーナはその生地の上を裸足で踏みつけた。
コルセットもシュミーズも脱ぎ捨て、靴下も靴も遠くへ飛ばした。
今や彼女はヴィーナスの誕生のように、素肌を晒している。
「ドレスが埃まみれになるぞ」
苦言するザカリスの声はハスキーだ。
「構わないわ」
言うなりリリアーナは座り込むと、ザカリスの袖を引っ張った。
油断していたザカリスは体を傾かせ、いともあっさりリリアーナの元へ引き寄せられる。
「ザカリス様」
「何だ」
この期に及んで彼はいつも通りを貫くことにしたらしい。返事がぶっきらぼうだ。
が、彼の本心を知ったリリアーナからすれば、そんなもので挫けたりはしない。笑みが唇を形作る。
「ザカリス様。愛しているわ」
「……俺は愛していない」
一拍置いたのを気づかないわけがない。
くすくすとリリアーナは声を揺らした。
「本当に意地悪ね」
余裕ある笑みを寄越してやれば、彼は不機嫌そうに顔を背けた。
おそらく、必死に本能と理性が闘っている最中だ。
だからリリアーナは、本能が勝つように仕向けた。
覚束ない動きながら、彼のトラウザーに手を掛ける。
「リ、リリアーナ! 」
彼の声が上擦った。
リリアーナが勢いよく彼の身につけたものを引き抜いたからだ。濃紺のトラウザーにもフロックコート同様に泥はねがあり、裾には落ち葉の屑が細かく散っている。
そのトラウザーを引き抜けば、予想通りの興奮度合いに、リリアーナの顔がこれでもかと真っ赤になる。
が、怯んでいては始まらない。
リリアーナは二度三度と息を吸っては、深く吐き、気合いを入れた。
「よし! では、いきますね! 」
リリアーナはザカリスの太腿の中央に体を潜り込ませると、そこに身を預ける。
「な、何を! 」
ザカリスが悲鳴に近い声を上げた。
彼の視線の先では、リリアーナのつむじが前後にゆっくりと動いている。
舌先を尖らせ、赤黒く膨張した彼の急所をねっとりと舐めていく。浮き立つ筋に添えば、ただでさえ膨れ上がっているというのに、さらにムクムクと形を変えていった。
堪え切れずにザカリスは「うっ」と呻いた。
「だ、誰がこんなことをお前に教え込んだんだ! 」
「ユリアンが、ザカリス様は助平だから、きっとこれがお好きなはずだから。機会があればしなさいと」
目線だけ上向ければ、リリアーナの淫猥さが倍増する。
ザカリスはますます目元を赤らめた。
「あの小娘が! 」
「違うのですか? 」
「い、いや。違わないが。いや、その」
しどろもどろで言い淀むザカリス。
ユリアンの読みに憤怒するものの、あながち間違いではないとの自覚はあるようだ。否定して行為を中断させまいとする欲が勝った。
リリアーナは目線を下げると、行為に集中する。
小さな口をめいいっぱい広げて含ませる。鼻先から懸命に息を吸い、剛直な表面に舌先を乗せ、貪りついた。じゅぽじゅぽと、卑猥な音が石壁に反響した。
未熟な口淫ながら、却ってそれがザカリスを刺激している。
奥ゆかしいリリアーナが、技量の達者な高級娼婦でも敵わないくらいの婀娜さを醸し出している。
鬼頭が上向き、ぶるぶると芯を奮わせる。
先端からの先走りがリリアーナの唾液と混じり合い、さらに水音が増した。
酸欠を起こしそう。無我夢中で咥え込んでいたために、頭がくらくらしてきた。
初めこそ拒絶していたザカリスだったが、リリアーナの後頭部を股間に押し付け、さらに密着させる。
「ぐっ……うう」
喉の奥近くまで入り込んだ剛直には、さすがに苦しくて涙が浮かぶ。それなのに彼は自ら腰を振って、猛然とした速さでリリアーナの口内を蹂躙させる。
唾液が絡みつき、口端からだらだらと溢れた。
「ああ! くそっ! 」
彼は何事か悪態をつく。
一際、リリアーナの口内にある質量が増した。
「ぐうっ! 」
喉の奥深くまで振動する。
リリアーナは獣の断末魔のように呻いた。
蒸せるような生々しい匂いが鼻に入り込んできた。
熱い液体がどんどん口内に溜まっていく。
リリアーナはユリアンから教えられた通りに、それを吐き出さず胃へと流し込んだ。苦々しい味が口から喉を通るとき、むせ返りそうになる。
「お、おい! 」
唖然とするザカリスの前で、リリアーナは喉を上下させ、飲み損ねたものが口端から垂れた。それを人差し指で拭ってから、舌先で舐めとる。
続いて、ザカリスへ流し目。
ユリアンから教え込まれた所作を、そっくりそのまま再現してみせる。
「ザカリス様は助平だから、こうすればお喜びになると、ユリアンが」
「ああ! その通りだよ! 畜生! 」
ザカリスは雄叫びを上げた。
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