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子うさぎ〜ラプロー〜
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ザカリスは呆気に取られ、伯爵は「おお」と声を高くした。
伯爵の寝室でドレスを脱いだ途端の、男らの反応だ。
「何てものをドレスの下に着込んでいるんだ! お前は! 」
たちまち憤怒するザカリス。
喉を震わせ、とにかくリリアーナを叱りつける。
「そもそも、いつ、どこでそんな布切れを手に入れたんだ! 」
「こ、これは……ユリアンが……」
あまりの剣幕に、リリアーナは怯む。
いつもは素っ気ないか、イライラとして喋ることすら鬱陶しがるザカリスが、まさかこれほど激昂するとは思いもしなかった。
「ユリアンだと!? あいつか! あの淫乱め! 」
「か、彼女は私のためを思って。だから叱らないで」
矛先がユリアンへと向かいそうになり、リリアーナは慌てて止めに入る。
ザカリスは黒く透ける生地の下にある乳房からどんどん目線を下方へとずらし、生地からはみ出した女性器で止まると、たちまち「うっ」と喉をひくつかせた。こめかみに筋が浮く。
「せめてズロースを履け! 丸見えじゃないか! 」
「だって。これはズロースを脱ぐものだと。ゴワゴワするし」
言い訳がましいリリアーナに、ザカリスは嫌そうに顔をしかめると、ぷいと背けた。
下顎を撫でながら客観的に眺めていた伯爵は、ほう、と感嘆する。
「ドレスの下にこれほど美しい体を隠し持っていたとは。いやはや」
「ジロジロ見るな! ロイ! 」
すかさずザカリスの野次が飛んだ。
覚悟を決めていたとは言え、伯爵からこうも露骨な視線を受けては、リリアーナが必死に忘れようとしていた羞恥心がむくむくと湧き、たちまち血液が沸騰した。
色素が薄いから、ほんのりと肌が染まる。
それが、控えめであるが故に、どこかエロチシズムを感じさせた。
伯爵はさらに唸った。
「やはり処女だな。胸の先は綺麗なピンク。下も誰の手垢もついてなさそうだ。腰は細くしなやかだし、尻の線は滑らかで、何とも言えない背徳的な色気がある。なあ、ザカリス。子うさぎは、思った以上に上玉だぞ」
「下品な批評はやめろ、ロイ! 」
ザカリスはムスッとしたまま、ガラス棚からウイスキーとグラスを勝手に取り出した。
「お前はしないのか? 」
「するわけないだろ! 」
どかっとソファに尻を落とすなり、顔を真っ赤にして怒鳴りつけた。
「酒だ。俺は酒を飲んでいるからな! 」
勢いつけて注いだため、グラスにウイスキーが並々と足されてしまった。
おや、と伯爵が眉をヒョイと上げる。
「おい。お前。勃ってないか? 」
「そ、そんなわけあるか! 」
「いや。しかし」
「こ、これが俺の通常だ! 」
ザカリスは唾を飛ばして声を張り上げると、脚を組んで体の向きを変えた。
リリアーナはわっと泣き出したい気持ちを堪え、奥歯を噛み締める。
大胆な夜着を身につけたからといって、ザカリスに心境の変化をもたらすなど、安直だった。
夜会で壁の花をしていたあの赤いドレスのご令嬢のように、生地がはち切れんばかりに豊満な胸を揺らして色香をぷんぷんさせれば、ザカリスも興奮したかも知れない。
ザカリスを撃ったレイラも、物凄い色気だった。
ザカリスの好みから自分は大きくはずれている。
「ザカリス様。私に魅力を感じてくれないのですか? 」
「ああ! これっぽっちもな! 」
はっきり肯定され、リリアーナはもう我慢出来なかった。
眦に溜まっていた涙が一筋、頬を伝った。
伯爵の寝室でドレスを脱いだ途端の、男らの反応だ。
「何てものをドレスの下に着込んでいるんだ! お前は! 」
たちまち憤怒するザカリス。
喉を震わせ、とにかくリリアーナを叱りつける。
「そもそも、いつ、どこでそんな布切れを手に入れたんだ! 」
「こ、これは……ユリアンが……」
あまりの剣幕に、リリアーナは怯む。
いつもは素っ気ないか、イライラとして喋ることすら鬱陶しがるザカリスが、まさかこれほど激昂するとは思いもしなかった。
「ユリアンだと!? あいつか! あの淫乱め! 」
「か、彼女は私のためを思って。だから叱らないで」
矛先がユリアンへと向かいそうになり、リリアーナは慌てて止めに入る。
ザカリスは黒く透ける生地の下にある乳房からどんどん目線を下方へとずらし、生地からはみ出した女性器で止まると、たちまち「うっ」と喉をひくつかせた。こめかみに筋が浮く。
「せめてズロースを履け! 丸見えじゃないか! 」
「だって。これはズロースを脱ぐものだと。ゴワゴワするし」
言い訳がましいリリアーナに、ザカリスは嫌そうに顔をしかめると、ぷいと背けた。
下顎を撫でながら客観的に眺めていた伯爵は、ほう、と感嘆する。
「ドレスの下にこれほど美しい体を隠し持っていたとは。いやはや」
「ジロジロ見るな! ロイ! 」
すかさずザカリスの野次が飛んだ。
覚悟を決めていたとは言え、伯爵からこうも露骨な視線を受けては、リリアーナが必死に忘れようとしていた羞恥心がむくむくと湧き、たちまち血液が沸騰した。
色素が薄いから、ほんのりと肌が染まる。
それが、控えめであるが故に、どこかエロチシズムを感じさせた。
伯爵はさらに唸った。
「やはり処女だな。胸の先は綺麗なピンク。下も誰の手垢もついてなさそうだ。腰は細くしなやかだし、尻の線は滑らかで、何とも言えない背徳的な色気がある。なあ、ザカリス。子うさぎは、思った以上に上玉だぞ」
「下品な批評はやめろ、ロイ! 」
ザカリスはムスッとしたまま、ガラス棚からウイスキーとグラスを勝手に取り出した。
「お前はしないのか? 」
「するわけないだろ! 」
どかっとソファに尻を落とすなり、顔を真っ赤にして怒鳴りつけた。
「酒だ。俺は酒を飲んでいるからな! 」
勢いつけて注いだため、グラスにウイスキーが並々と足されてしまった。
おや、と伯爵が眉をヒョイと上げる。
「おい。お前。勃ってないか? 」
「そ、そんなわけあるか! 」
「いや。しかし」
「こ、これが俺の通常だ! 」
ザカリスは唾を飛ばして声を張り上げると、脚を組んで体の向きを変えた。
リリアーナはわっと泣き出したい気持ちを堪え、奥歯を噛み締める。
大胆な夜着を身につけたからといって、ザカリスに心境の変化をもたらすなど、安直だった。
夜会で壁の花をしていたあの赤いドレスのご令嬢のように、生地がはち切れんばかりに豊満な胸を揺らして色香をぷんぷんさせれば、ザカリスも興奮したかも知れない。
ザカリスを撃ったレイラも、物凄い色気だった。
ザカリスの好みから自分は大きくはずれている。
「ザカリス様。私に魅力を感じてくれないのですか? 」
「ああ! これっぽっちもな! 」
はっきり肯定され、リリアーナはもう我慢出来なかった。
眦に溜まっていた涙が一筋、頬を伝った。
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