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救出劇のあと
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「終わったな」
階段を降りる複数の足音を聞きながら、ライナードは安堵の息を吐いた。
ようやく、ロベルト公爵私設騎士団ライナード隊を悩ませていた事件が解決した。
「甘いですよ、隊長」
そのとき、こめかみにつくくらい眉を吊り上げ、口を挟んだのは、仁王立ちのケインだ。
「レイノリア。お前、少しは反省しろ。考えなしにも程があるぞ」
指を差し、憤怒の表情で続けた。
「隊長は今までお前を陰日向から守ってたんだぞ。当番明けは、お前が無事に戻ったか見届けて。退院の日だって、見舞いはいいって言われたものの、変な奴に狙われないか心配して。馬車で送ってもらっただろ。隊長、残務処理とか報告書提出で、ほぼ徹夜だったんだぞ。その気遣いを台無しにしてどうする」
「おい、ケイン。それは秘密だろ」
「あっ、つい」
鼻息荒く興奮したケインは、苦虫を噛み潰したようなライナードを前に我に返ると、握り込んだ拳を解いた。
弾丸のごとく捲し立てられ、レイノリアは口をあんぐり開ける。ただただ驚くばかりだ。
思わずライナードの方を向くと、目が合って、相手は気まずそうに口をもごもごさせて顔を背ける。心なしか頬が赤い。その赤面具合から、ケインの台詞が真実であることが証明された。
ライナードは陰からずっと守ってくれていたのだ。
それを微塵にも気付かせない。さりげない優しさ。頼れる存在。さすが隊長を努めているだけある。
「おい、ヨールガ隊が詳しく事情を教えろだと。早く行こう」
感動のあまり目に涙を溜め、ぶるぶると震えるレイノリアの肩を、セディが呆れたように叩く。
「あの模写は破り捨てておいた。キャンパスは俺が責任もって処分しておく」
擦れ違いざまの耳打ちに、ぎくっとレイノリアの筋肉が硬直する。瞳孔をめいいっぱい開いてセディを見ると、相変わらずの仏頂面で付け加えられた。
「あんなもの、デイビスの妄想で片をつけられただろ」
冷静な見解に、レイノリアは今更になって気づき、あっと声を上げた。確かにそうだ。幾らでも誤魔化しはきく。何も躍起になることもなかったかも知れない。
だけど、気分の良いものではない。
しかも、あの生々しい絵はやけに写実的だ。
果たして、妄想として片がつくだろうか。
「セディさん。もしかして、バッチリ見ましたか? 」
恐る恐る尋ねると、セディは鉄仮面に徹して首を横に振った。
「俺は何も見なかった」
おそらく、これから先、セディに頭が上がることはない。きっと一生。レイノリアは確信した。
階段を降りる複数の足音を聞きながら、ライナードは安堵の息を吐いた。
ようやく、ロベルト公爵私設騎士団ライナード隊を悩ませていた事件が解決した。
「甘いですよ、隊長」
そのとき、こめかみにつくくらい眉を吊り上げ、口を挟んだのは、仁王立ちのケインだ。
「レイノリア。お前、少しは反省しろ。考えなしにも程があるぞ」
指を差し、憤怒の表情で続けた。
「隊長は今までお前を陰日向から守ってたんだぞ。当番明けは、お前が無事に戻ったか見届けて。退院の日だって、見舞いはいいって言われたものの、変な奴に狙われないか心配して。馬車で送ってもらっただろ。隊長、残務処理とか報告書提出で、ほぼ徹夜だったんだぞ。その気遣いを台無しにしてどうする」
「おい、ケイン。それは秘密だろ」
「あっ、つい」
鼻息荒く興奮したケインは、苦虫を噛み潰したようなライナードを前に我に返ると、握り込んだ拳を解いた。
弾丸のごとく捲し立てられ、レイノリアは口をあんぐり開ける。ただただ驚くばかりだ。
思わずライナードの方を向くと、目が合って、相手は気まずそうに口をもごもごさせて顔を背ける。心なしか頬が赤い。その赤面具合から、ケインの台詞が真実であることが証明された。
ライナードは陰からずっと守ってくれていたのだ。
それを微塵にも気付かせない。さりげない優しさ。頼れる存在。さすが隊長を努めているだけある。
「おい、ヨールガ隊が詳しく事情を教えろだと。早く行こう」
感動のあまり目に涙を溜め、ぶるぶると震えるレイノリアの肩を、セディが呆れたように叩く。
「あの模写は破り捨てておいた。キャンパスは俺が責任もって処分しておく」
擦れ違いざまの耳打ちに、ぎくっとレイノリアの筋肉が硬直する。瞳孔をめいいっぱい開いてセディを見ると、相変わらずの仏頂面で付け加えられた。
「あんなもの、デイビスの妄想で片をつけられただろ」
冷静な見解に、レイノリアは今更になって気づき、あっと声を上げた。確かにそうだ。幾らでも誤魔化しはきく。何も躍起になることもなかったかも知れない。
だけど、気分の良いものではない。
しかも、あの生々しい絵はやけに写実的だ。
果たして、妄想として片がつくだろうか。
「セディさん。もしかして、バッチリ見ましたか? 」
恐る恐る尋ねると、セディは鉄仮面に徹して首を横に振った。
「俺は何も見なかった」
おそらく、これから先、セディに頭が上がることはない。きっと一生。レイノリアは確信した。
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